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休暇五日目⑥亡きベルモンド辺境伯夫人

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「母は、ソハナスの第一王女だった。と言っても、私はお父様から話を聞いただけでお母様の記憶はないの。私が1歳にも満たない頃に病気で儚くなってしまったらしいわ」

「そうなのですか・・・レイリア王女殿下はもうすでに・・・」

「はい・・・ですから、母が生きているかもと期待をさせてしまったのならごめんささい」

「いえ、あれから会うことも叶わず、どうされているものかと案じてはおりましたが、お子を授かって・・・幸せに暮らしておいでだったと知ることが出来ましたので、何よりです」

「お父様はお母様を愛していらっしゃるの。たった1人だけ、それは今でも」

「そうですか・・・しかし、先ほどアンバー辺境伯様がベルモンド辺境伯令嬢と申されましたが?」

「えぇ、私の家は、この国の東の辺境伯、ベルモンドよ」

「レイリア王女殿下は、なぜ東の辺境に・・・」


それまで静観していたクレイドルが口を開く。


「それは、俺が話そう。レイリア王女殿下を保護したのは俺だ」

「なんと!そうだったのですか」

「あぁ、当時俺はこの北の辺境に異動してきた一騎士にすぎなかった。警備に当たっていたある日だ、国境の戦線に突如女性があわられてな。どう見ても平民の女性ではなかった。だが、何日も休んでないのが伺えた。碌になにも口にしていなかったのだろう、フラフラしていてな。随分とやつれていた。王女殿下だとは知らなかったが、何か事情があり、命からがら逃げてきたのだろうと予想はついた」

「逃げて・・・そうでしょうな。当時、王女殿下は戦利品として扱われ、戦って勝った者に差し出されるような事を国王陛下がおっしゃった・・・始まりは・・・この国の王、当時の王太子殿下がレイリア王女殿下との婚姻を受け入れられなかった事なのです」

「陛下が?そもそも、陛下とお母様に縁談が持ち上がっていたという事なのかしら?」

「はい、そうなのです。婚約者がいない王太子殿下に、我が国の王女を娶ってもらえれば縁続きになれると目論んだ陛下の考えでした。それなのに、相手の国から婚姻を拒否され、王女殿下は駒としても使えないのかと陛下は大変ご立腹で・・・役にたたない姫はいらぬと戦利品扱いをなさったのです」

「そんな事が・・・だが、レイリア様は、数年だったが幸せだったと聞いている。保護して体力が戻った頃に、ソハナスの王女だと知った俺は、北の辺境にいるままでは、いずれどこかで情報が漏れてしまうだろう事を危惧した。そんな時だった、ソハナス側から侵攻ありとの情報が入った。このままでは見つかってしまうと思った俺は、王都とは遠く、少しでも北の辺境から離れた場所を考えた結果、東のベルモンド伯へと預けることにしたんだ。まぁ、すぐにギルベルト殿と恋仲になるなどと思いもしなかったがな」


ふふっと笑いをこぼし、クレイドルはレティシアを見やった。




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次回

お父様、外まで笑い声が聞こえておりますわ



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