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休暇六日目②熱のこもった視線

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「猛獣というより大型犬でしょうか」

ウィルフレッドの髪を梳くように頭を撫でながらレティシアが言う。


「大型犬か。夫人にかかれば名の知れた騎士団長殿もこのようになってしまわれるのですね」

「ふふ、かわいいでしょう?」

「シア」


しばらく大人しくレティシアに撫でられてご満悦だったウィルフレッドだったが、目の前で2人が話す様子を見て面白くないと言った様子で不貞腐れていた。


「何?」

「あまり男に優しくするな。笑いかけたらダメだ」

「それ、久しぶりに聞いたわ」

「シアは男を虜にさせすぎるんだ。シアが微笑むだけで惚れさせてしまうじゃないか・・・」

「だったらウィルが惚れ直させてくるんでしょう?」

「は?」

「ウィルの格好いいところを見たいからここに来たのよ?」

「そ、そうか!わかった。ちゃんと見ててくれよ?」


ウィルフレッドは途端に笑顔になって、近くの騎士に模擬刀を借りると騎士達の輪に入っていった。


「見事ですね。たった一言でその気にさせてしまうなんて。夫人は魔法使いかなにかかな・・・」


ソルディオはほぉ・・・と感心しながら騎士達と実践形式で稽古をするウィルフレッドを眺めていた。


「レティシア様」


不意に声をかけられ振り向くとエルサがいた。


「エルサ様。昨日はウィルのせいでお話が中断してしまってすみません」

「いえ、構いませんわ」


エルサから声をかけられた事でレティシアはソルディオの事を忘れていた事に気付き振り向くと、意外なものが目に入った。さっきまでウィルフレッドの事を面白がり、貴公子然としていたソルディオが、頬を赤らめ熱のこもった瞳でエルサの事を見ていたのだ。だが、当の本人のエルサは気付いていないのか、それとも気付かぬふりをしているのか。全くソルディオの事を気にかけてはいないようだった。


「騎士団長様、稽古に参加されているのですね。レティシア様の前ではあのような感じでも、ちゃんと騎士団長なのだと実感しますね」

「えぇ、騎士としては志も高く、一流なんです」


ちらりと視線を向けるとたまたま目があったウィルフレッドがふにゃりと笑う。隙ありと騎士が切り込むも、視線を外しながらもウィルフレッドがしっかりと剣を止める。


「さすがですわね。気が逸れながらもちゃんと相手の動きを察知していらっしゃる。騎士達にもいい刺激になりますわ」


ウィルフレッドの事を褒め讃えるエルサを、少し離れたところから見つめていたソルディオだったが、次第に寂しそうな表情に変わっていっているのにレティシアは気付いた。





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次回

アバンス団長殿、そのくらいにしといてくれませんか?騎士達が困惑してますから


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