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【レガルドside】一筋の光
しおりを挟む昨日の私に教えてやりたい
諦めるなと
なんの希望も見えずただ悩んでいただけだった昨日までとは打って変わって
今の状況は大きな進展と言えよう
昨晩、会話が気になって覗き込んだ2人の姿
目を疑った
行方知れずとなったまま二十年以上の時が経ったと言うのに、目の前に我が国の王女だったレイリア様が現れたのだ
二十年前に見たあの時のまま
正体はレイリア王女殿下が逃げ匿われた先の辺境伯との娘だという
後に知ったが彼女には姉もいるが、姉は辺境伯である父親の色を継いでいるらしく、レイリア殿下には似てはいないらしい
しかし彼女の慈悲が私に一筋の光を与えた
私がソハナスの人間だと言った際、夫である騎士団長は険しい表情を見せたが
彼女は一切動じなかった
レイリア王女殿下の血筋を引いているからだろうか
いや、彼女の性質そのものなのだろう
彼女達に誘われるままに今、私はソハナスに隣接する辺境伯の屋敷にいる
普通に考えれば国境を挟んで睨み合っている相手の懐に入っているなどと考えられない事だ
しかも、今、目の前でソハナスをどうするかと話し合いまで持たれている
もしかすると本当に未来は変わるかも知れない
現王の呪縛から解き放たれるかも知れない
期待するなという方が無理だろう
「レガルド殿、ソハナスの現王を排除したとして、次に上に立つものはいるのか?」
「国王には唯一のお子である王子殿下がいらっしゃいます。しかし、王子殿下は統率者の器ではありません。王がレイリア王女殿下に執着を続けている事で、使用人達に甘やかされ奔放に育ってしまったのです」
「それでは次世代にとは期待は持てないと言うことか・・・騎士団長殿はどう思う?攻め入って大将首を取ってその後の国がうまくいくと思うか?」
「正直、無理でしょう。これまで王によって悪政を敷かれ、押さえつけられてきたのだから、解放されれば自分勝手な行動に出る者も多いだろう。王に苦しめられてきたからこそ、皆で力を合わせという風に団結できるような雰囲気であれば希望もあるかも知れないな・・・」
「レガルド殿、その点どうだ?どのような変化が起きると思う?」
「・・・未知数ですな・・・だが、民は今のままではいいとは思ってはいないはずです。リーダーが変われば自ずと変化も起きるであろうと思います。未来を明るく照らしてくれる指導者であれば民はきっとついてくる。私はそう思います」
「そうか・・・俺は無駄な犠牲は出したくないと言うのが本音だな。何かうまく誘導して失脚させれればと思うが」
「王は・・・子爵家の出で、政には明るくありませんでした。それは今でもです。城にいる文官や騎士達の娘は王の愛妾や王子の愛妾として無理矢理召し上げられている状況です。愛妾などと言えば待遇はいいように聞こえますが、実際は人質みたいなものです。家族を人質にとられ、文官や騎士達も下手な動きはできないのです。そうせざるを得ない状況を作っている・・・だから王が何もせずとも国は回ってきたのです。ただ、それも限界を迎えつつある。娘や人質に取られている家族が無事に戻ってくる保証もない。もう、諦めの境地に入っているのです。このまま時が経っても、国の現状がよくなることはないでしょう」
「そうか・・・自分にその才がないからと、他人を縛り付けて自分は王の椅子に座っているだけという事か・・・」
他国の事なのにこんなにも親身になって話を聞いてくれるなど・・・
ソハナスにとっては私は裏切り者となるのだろう
だが、これからの未来、これ以上民に無理強いをする必要はない
私が悪者になろうが、裏切り者だと言われようがかまわない
ん?騎士団長殿は先ほどから随分とソワソワしているな・・・
あぁ、そういう事か
愛しい者の姿が見えないから落ち着かないのだな
レイリア王女殿下・・・
あなたの娘は愛されておられる
それも、一途に、執着と言っていいほどに
どうやらあなたがた親子は男をダメにしてしまう力でも持ち合わせているのでしょう
それを上手く使いこなせるかどうか・・・
腕の見せどころという事でしょうな
レイリア王女殿下・・・
見守っていてくだされ
これから何かが変わろうとしている
あなたが見たかった笑顔溢れる国に
もしや彼らが導いてくれるかもしれません
私も随分と歳をとりましたよ
爺になってしまいましたがね、もう少しだけ鞭打って頑張ってみようと思います
一筋の光はとても眩しい
そして美しいですよ
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次回
休暇六日目
かっこいい騎士団長をもう一度
応援ありがとうございます!
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