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あの時みたいに
しおりを挟むミリアの手を額に押し当て、返事を待ったアイオロス。一向に反応がなく、このまま振られてしまうのかもしれないと覚悟を決めようとしていた。どれくらいの時間そうしていただろう。ミリアの手がするするっと緩やかに抜けていく。あぁ、これが答えなのかと俯きかけたその時だった。
「えっ!?」
「ん?・・・なっ!?」
レティシアがあげた声につい反応し顔を上げると、ミリアがゆっくりと後ろに倒れかけていた。驚いたのも束の間、アイオロスは咄嗟に立ち上がり、ミリアの身体を支える。ミリアは・・・意識を飛ばしてしまったらしい。
「ミリア嬢!ミリア嬢!」
アイオロスが必死に声をかけるも反応がない。愛しいミリアが腕の中にいる。嬉しいはずなのに今はそれどころではない。
「ミリア、緊張のあまりキャパオーバーね」
「どこか悪いのですか!?」
「ふふっ、好きな人に好きと言われ、顔は真っ赤になって照れて震えてたわ。それに夫になりたいなんて言われたのよ?叶わない片想いのはずだったのに、告白まで受けて、両想いならなおのことね」
レティシアは笑いながらも思い出していた。あの時と同じセリフ。
「副騎士団長様、ミリアを運んでくれるかしら?」
「・・・もちろんです」
アイオロスはミリアの事を愛おしそうに見つめ、落とさないようにしっかり横抱きにすると、騎士団の応接室に向かった。ソファにそっとミリアをおろすと、ゆっくりと髪を撫で、手を握る。
「ミリア嬢・・・好きです、愛してます」
アイオロスは溢れるように想いを伝えていた。手を握って、いつ目覚めるだろうと楽しみにしつつも、寝顔はあどけないのだななどと思いながら、口元はおのずと緩んでいた。そんな様子をドアの隙間から伺うのは宰相だ。たったあれしきのことで赤面し、あまつさえ意識を飛ばしてしまうなど、どれほどこの男に惚れ込んでいるのだろうか。娘も他の男では納得しないはずだと宰相も頷いた。
「どうだった?」
そう問いかけたのは第二王子のアルバート。宰相は再び騎士団の執務室へと戻ってきた。ウィルフレッドとレティシアもいて、三人は様子を聞きたがっているようだった。
「やっと婿が迎えられますよ」
「それはよかったな」
「皆様のおかげです」
深い礼をした宰相が顔上げると、そこにはなんとも晴れやかな笑顔が咲いていた。
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