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国王が何よりも優先する事
しおりを挟む「私と茶がしたいなど、自ら訪ねてきてくれるなどとは嬉しいことだな」
「恐れ多いですが」
「何を言う。レティシアは私の茶飲み友達だろう?」
「そうなのですか?初めて知りましたわ」
普通なら、国王が事前の約束もなしに人に会う事はない。だが、国王レオナルドの中では、娘のように目に入れても痛くない存在のレティシアは、事前の約束など必要なく、執務をしていようが、忙しかろうが、訪ねて来られればそちらが優先と仕事を切り上げるほどだ。ミシェリアが自身の本当の娘ではないという事は最初から気付いていた。それでも分け隔てなく育ててきたつもりだった。だが、本能では受け入れることはできていなかったのだろうと思う。そのかわりと言ってはなんだが、第一王子のヴィンセントの妻にしたいと望んだレティシアは、またしてもアバンス公爵家に取られてしまった。自身が愛したクリスティアも恋をしていたのは現当主であるディアルドだった。いつも欲しいものは手に入らない。こうやって自ら訪ねてきてくれる事がどれだけ嬉しいことかと国王は表情を緩めていた。
「陛下、この度の二人の処罰は、温情をかけて頂いたのですね」
「温情?あぁ・・・二人の今後を考えたのはウィルフレッドだ。私はそれに賛成しただけだぞ?」
「ですが、ウィルがどう提案しようとも、陛下がひと蹴りすれば提案は却下できたはずです」
「そうだな。マクシミリオンに至っては、長年ヴィンセントの側近を務めたこともあって優秀さは近くで見てきた。あれは、ランドルスト公爵に認められたいという心を持っていたのは見えすいていた。だが、反骨精神で頑張ってくれるものだと思っていた。私としては、今回の事は非常に残念だった。緘口令を敷いたとはいえ、何もお咎めなしとはいかないからな。公爵家の嫡男が王子の側近から降り、次期当主としての道も閉ざされた。あれには、王都で生きていくには辛かろうと思っての事だ」
「そうですか。ですが、案外それでよかったのかもしれません。公爵家のしがらみから外れ、期待ばかりをされてそれに応え続けなければいけない環境は、マクシミリオン様にとって合わなかったのだと思います。彼は、誰の目も気にせず自身の考えと、意志で突き進む方がきっといいのだと思いますわ。ランドルスト公爵家の次期当主としてこれから先の事を自身の中で受け入れ切れているのなら・・・父親に認められると言う事が、もっと先にあって、その先を見つめることができていたならば、彼はあんな馬鹿な事はしなかったと思いますわ。だって、公爵様の期待を裏切る事の何物でもないのですもの。彼はまだ子どもなのです。そしてウィルもまだ子どもです」
「ウィルフレッドがか?」
国王はレティシアの言葉に目を見開いた。三十になろうとしているあの男のどこが子どもなのだろうかと。何を言っているんだとわからないとばかりの表情を見せていた。
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