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レイラの涙
しおりを挟む「・・・ふぁ・・・」
レイラは大きなあくびをしながら自身の部屋から出た。外はまだ薄暗く、陽は昇っていない。
「今日も晴れるといいわね・・・」
部屋を出て廊下を進んだ先の窓から空を見上げながら言う。彼女の頭には、庭で元気に遊ぶ子ども達の姿が思い出される。先の争いの影響で領地が荒れ果て、生活もままならず親を失った子ども。遠くへ出稼ぎに行くといい、面倒を見きれずに置いていかれた子ども。事情は様々だが、子ども達に非は一切ない。すくすくと育ち、何か望んだ仕事についたり、好きな相手ができたら想いを通わせあったりして、先の人生をしっかりと歩んで欲しいと願っていた。ぼーっと空を眺めていると、微かに風を切るような音が聞こえる。二階の廊下の窓から何かと下を覗いて見れば、レイバンが剣を手に素振りをしている姿が目に飛び込んできた。王都で近衛騎士をしていたレイバンにとって、何でもない日常。だがレイラにとっては、この荒れ果てた土地に騎士などがいるはずもなく、誰かが剣を握っている姿などどれぐらいぶりに見ただろうかなどと思っていた。しばらくそうしてじっと姿を見つめていたレイラ。その視線に気づいたのか、レイバンがバッと振り向いて、そのまま足早に去って行った。レイラは唖然とその姿を見ている事しかできず、せめて挨拶くらい声をかければよかったのかと後悔した。今のレイバンの態度を見る限り、何でもない女から、嫌いな女になってしまったのかもしれないと、レイラは落胆した。
「随分と嫌われてしまったわ・・・もう・・・ダメなのかしら」
レイラの瞳には、涙が滲む。だが、泣いても何も解決にはならないし、同情されるわけでもない。泣くだけ無駄だし、泣いても面倒な女などとさらに嫌われるだけだろうと思う。
「・・・レイラさん?」
後ろから躊躇いがちに声をかけられ、レイラはビクッと反応し振り向く。そこには心配だと言わんばかりの表情で、ライエルが立っていた。
「目が赤くなってますね。泣いて・・・いたのですよね?」
「・・・お見苦しいところを・・・だ、大丈夫ですから、お気になされずに」
「そういう訳にはいきませんよ。理由が何であれ、泣いている女性を放ってはおけませんから」
ライエルは安心させようとにこりと微笑む。レイラはその笑顔に安堵し、大きく息を吐く。
「お陰で少し気持ちが軽くなりました。お気遣いありがとうございます」
「いいえ、俺は何もしてません」
そんな微笑ましいささやかな二人のやり取り。それを見ている者がいた。そう・・・レイバンが目撃してしまった。
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