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仕組まれた事件
しおりを挟む過去を語りながら、当時の事を痛みと共に思い出すコルテオ。
「・・・振り返って目にしたのは彼女のニヤリとした笑みでした」
「笑っていた・・・と言う事?」
「えぇ、その時理解しました。これは彼女が計画したことなのだと。そこまでして僕の婚約者から解放されたかったのかと絶望しました。肩を深く刺された僕は、流血の量が多かったのか、次第に意識が遠退いて来てしまって・・・彼女が男達に報酬を渡す所までは確認しましたが・・・その後無事だったのかも確認はできませんでした。意識が戻ったのは・・・自邸の自身の部屋でした。見慣れた天井・・・ぼーっと眺めていると、はっと気付きました。彼女はどうなったのか・・・慌てて寝台から出ようとしたものの、身体が言うことを聞きません。たまたま身の回りの世話で来ていたメイドが部屋に入ってくると、目が覚めた僕を見るなり、部屋から飛び出して行きました。そして両親を連れて戻って来たんです」
「ご両親はさぞかし心配なさって・・・」
「だとよかったんですけどね・・・最初にかけられた一言で、やはり両親が大事なのは兄だけなのだと改めて気付かされたんです」
「なんとおっしゃったんです?」
「・・・と」
「コルテオ様?」
「この愚図め・・・と」
「何ですって・・・」
「放心している僕に、両親は淡々と説明していきました。昨日の夕方に僕が第二騎士団の騎士達によって屋敷に担ぎ込まれた事。騎士達から見つけた時の状況の報告を受けた両親。一緒に婚約者の令嬢がいたはずだと騎士達に聞いたが、姿は見かけなかったと。ほどなくして屋敷に来訪者がありました。婚約者の父であある伯爵です。娘がそちらの次男坊と街に出掛けて危ない目にあった。腕に怪我をして帰ってきた。騎士だというのに、彼は娘を守らなかったのか?と問い詰められたと。僕が知る限り、彼女は怪我なんてしていませんでした。ですが、僕が気を失っている間の事は確証がもてません。最後に見た彼女の笑み。それだけがこびりついたように、脳裏から離れないことだけは確かです。両親は相手の伯爵家に平謝りしたらしいです。相手の伯爵は、傷を追った令嬢にまともな縁談が見つかるとは思えない、傷を追ったのが賊に襲われたからだと知られれば、もっての他。純潔を失ったのでは、それは誰の子だなどと、回りに疑念を抱かれない。だったら責任をもって、そちらの伯爵家で娘を貰ってもらうしかない。だが、娘が次男坊の彼とはもう一緒にはなれないと言っている。恐怖を植え付けられて、夫婦として生活できると思うか?これ以上娘を傷つけれくれるなと」
コルテオの過去を知れば知るほど、エルサの心は締め付けられるように痛みだす。医師のドーランも静かに話を聞いていた。
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『好きなのは貴方じゃない』
「お前の嫁ぎ先が決まった」
侯爵である父がそう言った。
スティファニアは、その時絶望で崩れ落ちそうになる。
想い描いていた未来はもう来ない。
諦めを抱いて辺境に来ると、使用人みんなが親切でとっても居心地がいい。だが、夫になった男爵にはひと目もかからないまま時間だけが過ぎていく。
「見ない顔だな、新入りか?」
夫は私ではない女を愛している。だから必死に心を保とうとした。
私が好きなのは貴方じゃない。
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