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王都からの手紙
しおりを挟む「はぁ・・・」
曇りひとつない晴天の空。辺境伯領の騎士団の副団長であるソルディオは深くため息をついた。いつもなら目の前にいる騎士達に稽古をつけ、檄をとばす。だがここ数日そんな気さえ起きず、ただただ騎士達の様子を呆然と眺めては深いため息をついていた。そこへ一人の従者が。
「レガリー副団長」
「・・・ジークさん」
ソルディオの元に現れたのは当主であり、団長でもあるクレイドルの従者であるジークだ。
「この後少々お時間よろしいですか?」
「えぇ、構いませんが」
「ご主人様がお呼びです」
「団長が?」
「はい、王都より知らせが入り、レガリー副団長にお話があると」
「王都?俺には王都に知り合いなんて・・・アバンス団長ぐらいですかね」
「そのアバンス団長からです」
「・・・そうか。わかった、部下に指示をしてから向かうと伝えていただけますか?」
「はい、そのように」
ジークは一礼をして去っていった。ソルディオは部下である騎士達に指示をし、急ぎクレイドルの執務室へと向かった。
コンコンコン
「失礼します」
執務室に入ると、デスクで書類仕事をしていたらしいクレイドルが顔をあげる。
「呼び出してすまなかったな」
「いえ」
側に控えていたジークはお茶の準備をし始める。クレイドルはソルディオをソファに促す。クレイドルも向かいに座ると、ジークが二人にお茶を差し出した。
「呼び出したのはアバンス団長から手紙が届いたからだ」
「はい、ジークさんから伺いました」
「率直に言う。ソルディオ。王都へ行かないか?」
「・・・」
自分は不要と見なされたのだろうか。愛しいエルサも手に入らず、努力で勝ち取ったこの地位さえ失う。ソルディオは絶句して何も言えなかった。
「何も聞かないのか?」
「・・・あ・・・いえ・・・」
「ふっ、お前を不要だと見なしたとでも思ったか?」
「っ!?」
「そんなはずはないだろう。お前を副団長にしたのは俺だ。お前の実力は俺が一番知っている。王都へはアバンス団長からの誘いだ」
「アバンス団長からの・・・誘い?」
「あぁ、お前を近衛騎士団に迎え入れたいのだという申し出の手紙だ」
「・・・俺を・・・ですか?」
クレイドルは静かに頷く。
「しかし辺境は・・・」
「心配せずともよい。後継はしっかりと育っている。それにお前が育ててきたんだろう?あいつらを認めてやれ」
クレイドルの言葉通り、部下を育ててきたのは紛れもなく自分自身。部下の成長を喜ぶべきだろう。そして、自分も更なる高みを目指すべきなのだろう。返事をなかなかしないソルディオに、クレイドルは声をかけた。
「まぁ、急ぐことはない。よく考えろ」
「はい・・・」
ソルディオは上の空で執務室を後にした。
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