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39、姿を消したオーロラ
しおりを挟む昨晩の夜会では、一気に事が動き、取り巻く憂いを全て排除する事になった。
夜会を終え、セシルに襲われた恐怖から眠れないと、ノアールの部屋を訪れたオーロラ。翌朝、ノアールが目を覚ますと、昨晩一緒に寝台に入ったオーロラが姿を消していた。
ノアールは飛び起きて部屋を飛び出した。昨日の今日で、また何かに巻き込まれたのではないかと不安に駆られた。廊下でメイドのアンナを見かけ声をかけた。
「アンナ、オーロラ様は無事か!?」
「無事?お部屋で休まれておりますが?」
「あぁ・・・そうか・・・ならいい」
自分が寝ている間に部屋に戻っただけだと安心すると、着替えや食事などを済ませ、いつものように屋根にのぼる。ここにいればまたオーロラの声が聞こえてくるだろうと思っての事だった。
しかし、昼を過ぎても声は聞こえてこない。この時はまだ、昨晩の夜会の疲れで眠っているのだろうと思っていた。
しかし、その日から丸三日、ノアールはオーロラの姿を見る事も、声を聞く事さえもなかった。日に日に会わない事に違和感を覚え始める。
「アンナ、オーロラ様は体調を崩しておられるのか?」
「体調といいますか・・・原因不明で・・・」
「原因不明?何があった!?」
「夜会から戻られた翌日から目を覚まされないのです」
「なんだって・・・もう三日も経ってるんだぞ!?」
「えぇ、医者を呼んで診てもらいましたが、外傷もなく、病気の症状も見られないと・・・」
「どうして・・・」
「今は絶対安静との事で、公爵様より、誰も部屋に入れるなと仰せつかっております」
ノアールは信じられない気持ちでいっぱいだった。あの晩を境に、オーロラは目を覚ましていないというのだ。ふらふらと自室に戻ったが、じっとしていることはできず、本邸の公爵の元へと向かった。
コンコンコン。
「どうぞ」
「失礼します」
「ノアールか・・・」
「公爵様・・・オーロラ様のご容態は・・・」
「まだ何もわかっておらん。夜会の騒動の疲れかと思っておったが、流石に三日も目を覚まさないなど・・・」
「わ、私が・・・私が!もっと早くセシル殿下から救っていればっ!!」
ノアールは俯いて拳を強く握りしめた。
「ノアール・・・お前のせいじゃない。そう自分を責めるな」
「しかしっ!」
「とにかく、今は私とて何もできんのだ・・・君が娘に良くしてくれている事は知っている。目が覚めたら必ず報告させよう」
力なく言う公爵に、ノアールも何もできない事を悟り、公爵の執務室を出て行った。
「はぁ、全くオーロラよ・・・早く目を覚ませ」
公爵は一人呟いた。しかし、ため息まじりのその声は、心配しているようには感じられなかった。公爵は娘よりも、振り回されているノアールの方を心配していた。
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次回
イースブール男爵様、失礼をしてしまって申し訳ありませんでしたわ
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