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【ノアールside】月夜の女神
しおりを挟む「辛い・・・思いをされているのですね・・・」
「あぁ、辛い」
辛いよ・・・またノアールって呼んでくれよ・・・
「あなたは、そんなに私の事がお好きだったのですか・・・」
「あぁ、大好きだ」
もう、この気持ちに嘘はつけない。隠したって良い事なんてない。
「他の女性では無理なのですか?」
「オーロラじゃなきゃダメだ」
オーロラ以外いらない。オーロラじゃなきゃ、自分の気持ちを素直に言う事なんて一生なかったはずだ。
「あなたは、このままの私でも愛せると言うの?」
「オーロラはオーロラだ」
どんなオーロラもオーロラだ。オーロラは一人しかいない。
「・・・このままずっと、あなたの事がわからなくても?」
「・・・辛いが・・・我慢する。思い出してもらえるように・・・いや、好きになってもらえるように頑張る!」
それは辛い・・・でも、もし向き合ってもらえるなら、これから好きになってもらえるように頑張るだけだ。
「あなたは、覚悟があるのですか?私を手にする意味を、その結果、あなたの未来がどうなるのかを」
「・・・オーロラが好きだ・・・でも、その先は俺が望んでいいかわからない。でも、オーロラと一緒にいれるなら、何だって頑張る。努力する。試練を乗り越えれば、その先にオーロラがいるなら、先の見えない道だって進み続ける。進んでお前の元に辿り着いてみせる。オーロラが待っていてくれるなら、棘の道だって潜り抜ける!望んでいいなら・・・いいのなら・・・オーロラが欲しい」
オーロラが欲しい。でも、おれは男爵家の三男だ。なんの権利があってオーロラを望めると言うのだ・・・許されるならオーロラが欲しい。オーロラの唯一の男になりたい。俺以外いらないと言って欲しい。叶うなら、オーロラを独り占めしたい。その為にはどんなことだって耐える。教育が必要ならなんでも覚えるし、剣だって、影のスキルだってもっと身につけてやる。
「夜明けはやってきますわ。毎日、毎日・・・変わらず夜は明けますの」
オーロラの手が・・・俺の頭を撫でている・・・嬉しい・・・あっ・・・頬に・・・あたたかい・・・このぬくもりをもう、逃したくない。今だけは許してくれ。この手に口づけを・・・いつかは唇に。もう、離れたくない。もう、失いたくない。この手をとれるのは俺だけであって欲しい。俺だけを必要として欲しい・・・子どもっぽかっただろうか・・・手に頬を擦り付けてしまった・・・
「じゃあ、そろそろ失礼するよ。おやすみ、オーロラ」
「えぇ、おやすみなさい」
たくさん話をしたな・・・たくさん本音を言って、たくさん泣いた。以前のオーロラはいない。俺だけに甘えるオーロラはもう、いないんだな・・・
でも、それでも、オーロラを失うのはもうごめんだ。オーロラなしじゃ、もう、生きてる意味すらない。俺はとことん弱くなってしまった。自分自身が、こんなにも感情を露わにするようになるなんて
思ってもみなかった。オーロラが好きだ。愛してるんだ。
夜明けは毎日やってくる。そうオーロラは言った。毎日、毎日、一歩一歩。道のりは遠いかもしれない。オーロラの瞳に映るのが、俺じゃなくなるかもしれない。手を伸ばしても手に入れられないかもしれない。それでも・・・諦める事なんてできない。
あの時、セシル殿下から取り戻したオーロラのぬくもりに心底ほっとした。もう戻らないかもしれなかったぬくもりが、自分の腕の中にある事に泣きたくなった。平気なふりをして、感情を隠して素直じゃないことも言った。普通の令嬢は喜ぶぞなんて・・・
王子から手を差し出されて喜んで欲しいわけじゃなかった。そんなはずがない。もし、あの時、オーロラが迷わずレオン殿下の手を取っていたら・・・今頃はこんなに素直に言葉に出して、感情を露わにすることもなかったと思う。
俺の過去はずっと闇だった。暗闇だった。公爵家に来て、オーロラという光が差し込んだ。俺だけの・・・俺だけの愛しいオーロラ・・・
明日、何を話そうかな・・・笑ってくれるだろうか・・・手を握ってもいいかな・・・また、頭撫でてほしいな・・・
早く、明日にならないかな・・・
ノアールは、オーロラが触れていた頬を、宝物に触れるように、大事に両手で包んで眠りについた。しばらくして、すぅ、すぅ、と寝息が聞こえてくる。ノアールは、ここ数日で久しぶりに、深い眠りについた。安心して穏やかな眠りだった。
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次回
早く落ちてきなさい!
痛いのに幸せって初めてだ
応援ありがとうございます!
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