影は落ちました

agapē【アガペー】

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44、落ちてきなさい

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「ん・・・眩しい・・・朝か」


雲一つない快晴。どれぐらいぶりだろうか、ノアールはすっきりと朝を迎えた。外から愛おしい人の声がする。


「・・・オーロラ?外にいるのか?」


ノアールは、自室として使用している二階の客間の窓を開けて外を覗き込む。庭でメイドと談笑するオーロラの姿を見つけて見入ってた。しばらく眺めていると、こちらに気付いたオーロラと目があった。久しぶりに見る、陽の光に照らされた愛しい人の笑顔。見惚れてしまった。



そして、オーロラが二階からの視線に気付くと、ノアールに向けて静かに両手を伸ばす。



ノアールは、どうすればいいのかわからず首をかしげる。



「ノアール!」

「!!!」


ノアールは目を見開いた。愛しい人から呼ばれる自分の名前。また呼んでほしいと切に願った自身の名前を呼ぶオーロラがそこにいた。そして、久しぶりに自分の名を呼ばれ、ノアールは思考が止まってしまった。これは現実なのか、夢なのか。


「ノアール、何してるの!早く落ちてきなさい、私のノアール!」


夢じゃない、その瞬間、目の前の窓に足をかけ飛び降りた。軽い身のこなしはさすが、密偵をこなしていた元影である。我を忘れたノアールには、部屋を出て階段を降りて庭に駆け出るなどと考える余裕はなかった。自分の持つ全てで、全力でオーロラに向かっていく。


華麗に庭に着地したノアールは、そのまま無我夢中で駆け寄った、愛しい人の元へ。


オーロラを抱きとめたまではいいものの、勢いがつきすぎた。


「きゃぁっ!」


駆け寄った勢いが失われないまま、二人の身体は傾いていく。ノアールが空中で体勢をかえ、オーロラを抱きしめたまま、自身の背中から庭に倒れ込むと地面に打ち付けた。


「うぐっ・・・イタイ・・・」

「ノアール大丈夫!?」

「このぐらい大丈夫・・・痛いのに幸せなんて初めてだな・・・」

「ふふふっ、あははは・・・何それ!」


思いっきり笑っているオーロラの顔を見ていたノアールの瞳から涙が溢れ出す。


「うっ・・・うぐっ・・・ひくっ」

「ノアール、最近泣いてばかりね」

「オーロラ・・・オーロラ、オーロラ!」

「そんなに何回も呼ばなくてもわかるわよ」

「俺が・・・俺がわか、るのか?夢じゃ、ないよな・・・うっ・・・」

「わかるわよ。もう、ボロボロ泣かないでよ」

「俺の事、思い、出したのか?・・・ひくっ・・・うっ」

「思い出したも何も、忘れてなんかいないわ」

「おーろらぁぁぁぁぁ!」


ノアールはオーロラをしっかりと抱きしめ、肩に頭を押し当てるとわんわん泣いていた。ノアールの瞳はしばらく大洪水だった。





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次回

闇の夜明けになれたかしら?


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