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46、このままでごめんなさい
しおりを挟む翌日も結局、そのまま一時も離してもらえずお昼を過ぎた。使用人に頼んで、公爵の予定を聞き、午後に伺う事と、準備を頼んだ。
「ノアール、本邸に行くわよ」
「どうして?誰か来てるのか?まさか、オーロラを攫いにきたんじゃないだろうな!?」
「違うわよ・・・お父様のところに行くの」
「公爵様のところ?」
「えぇ、大事な話があるのよ」
そう言われたノアールは、オーロラに他の男を充てがうつもりかもしれないと疑心暗鬼になった。誰にも渡さないという気持ちの表れのように、オーロラをしっかりと抱きかかえて本邸に向かった。
コンコンコン。
「どうぞ」
「お父様」
「あぁ、オーロラ・・・か・・・」
持っていたペンを持ったまま公爵は固まった。執務室にノアールに抱きかかえられたままのオーロラが入ってきたからである。
「まさかの登場の仕方だな・・・まぁ、いい、座りなさい」
そしてもう一度固まった。
「そのままか・・・」
オーロラを抱きかかえたままノアールがソファに腰を下ろしたからだ。
「お父様、ごめんなさい。ちょっとね・・・あのイタズラがすぎたみたいで、反動でこうなってしまったのよ。昨日から一時も離してくれないの」
「ふっ、面白い事になったな」
「離れたら暴れるので、このままごめんなさいね」
「あはははっ!暴れるのか・・・くくっ・・・」
「お父様、笑い過ぎですわ・・・」
「すまん、すまん、話を進めよう」
公爵がそう言った瞬間、ノアールの視線が鋭くなる。
「ノアール、私に殺気を向けるな」
公爵は一枚の書類を差し出した。
「これは?」
「ノアール、君にはトワイライト家の養子に入ってもらう」
「・・・養子・・・ですか?」
「あぁ、トワイライト家には息子がいないからな、後継がおらんのだ」
「ですが・・・」
「男爵家出身だからと引け目を感じるのか?」
「それもありますが・・・私は使用人としてオーロラ様に仕える身です・・・」
「あら、ノアール、私そんな契約結んでおりませんわ」
「えっ?でも、王家からこちらにと・・・」
「こちらに来なさいとは言ったけど、使用人になりなさいとは一度も言ってないわ」
「・・・そう・・・なのか・・・」
「えぇ、だから、ノアールは公爵家に滞在する、男爵家の三男ノアール・イースブールなのよ」
「でも、だからって、養子縁組は・・・」
ノアールは不安そうな顔をしてオーロラを見つめる。オーロラはにこっとするだけで、何も言わない。それを見た公爵は察知した。
「ノアールが心配している事はわかっている。お前が公爵家の後継になった事で、嫁を迎えろとは言っておらんだろう?これにもサインしてもらうんだからな」
公爵はもう一枚の書類を差し出した。
「ノアール、養子縁組をした上で、お前にはオーロラの婚約者になってもらう」
「・・・えっ?」
「オーロラじゃ不満か?」
「不満などあるはずがありません!オーロラがいいです、オーロラの夫になるのは俺だけです!」
真っ直ぐに訴えるノアールに、オーロラはほんのり赤くなっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
仕事がデキる夫の姿なんて最高だと思うのよ!
ノアールよ、今の会話のどこに安心要素があったのだ・・・
応援ありがとうございます!
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