影は落ちました

agapē【アガペー】

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62、ノアールは婚約者で次期公爵

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レオンを王太子とする立太子の儀と式典が行われ、夜会が開かれる。


「オーロラ、気をつけて」

「ありがとう、ノアール」


ノアールにエスコートされ、夜会の会場に入る。本日のオーロラは、赤から黒のグラデーションのマーメイドラインのドレスだ。体のラインがはっきりと出るドレス。このドレスで行くと見せた時、ノアールが異常に嫌がったが、抱きしめやすいでしょう?と言ったところ、それならと言って納得した。ノアールはブラックスーツに若草色のタイ、襟には金の刺繍を入れた、オーロラの色だ。



会場に入るなり、二人は注目を集める。一カ月ほど前に、突如夜会に現れたトワイライト家の次女オーロラ。それをエスコートする見慣れない令息。二人は以前の夜会でも目立っていて、人目を引いていた。


オーロラには山のような釣書が届くようになった。ノアールは、得体の知れない令息扱いではあったが、夜会に現れるのを待っていた令嬢達もいた。




「オーロラ嬢、ノアール、久しぶりだね」


声がした方向を向こうとしたが、いつものごとくノアールが抱きしめて隠してしまう。


「その声はノエル殿下でしょうか?ご無沙汰してます」

「あぁ、ノアールのこれは健在なわけね・・・前より酷くなってない?」

「いろいろありましたのよ」


ふふふっとオーロラが笑う。


「オーロラ嬢にかかると、狼も子犬になってしまうんだな」

「えぇ、うまく手懐けてますの。ちゃんと待てもできますのよ」

「待て?」

「はい、利口なもので」

「なんかよくわからないけど、オーロラ嬢の言う事には忠実だという事ね」

「えぇ、そうなんです。ノエル殿下、後で少しお時間いただけます?」

「ん?構わないが」

「では、また後ほど」

「あぁ、最後まで顔が見れなかったな、くくっ、では、後で」


ノエルは笑いながら去っていった。


「ノアール、抱きしめるのはいいけど、隠すのはやめてね?」

「・・・わかった・・・」


そこへ女性が近付いてくる。


「オーロラ!」

「あら、マルティナ」

「相変わらず忠犬ね」

「えぇ・・・マルティナ、レオン殿下とはうまくいったのね?」

「オーロラのおかげよ」

「レオン殿下が惚気てましたわ」

「何を?」

「手紙で会いたい、素敵ですってストレートに伝えてくるって、顔を真っ赤にして言ってたもの」

「ナニソレカワイイ・・・見たかったわ・・・私の前ではいつも余裕な顔をして、いかにも王子様って感じで・・・格好いいんだけど、二人を見ているとその関係性が羨ましくなるのよね・・・」

「レオン殿下も素質はあるわよ?」

「素質?」

「えぇ、ライオンを手懐けて、猫にしてしまえばよろしいわ」

「え・・・ちょっと、それ・・・いいわね」





「ここにいたのだな」


マルティナを探していたのか、レオンがやってくる。ノアールは隠しはしないものの、抱く力が強まり、レオンを鋭く睨んだ。


「ノアール、睨むな・・・もう、オーロラ嬢を狙ったりはせん。俺にはマルティナがいる」

「うわぁ・・・威嚇してる・・・本当に吠えないだけで、番犬みたいじゃない」

「マルティナ、これでもいい方だ。酷い時は、オーロラ嬢の姿が見えなくなるように抱きしめて、視界から消すんだからな」

「さっき、ノエル殿下にはそのようにしっかりと牽制してましたわ。隠すと挨拶できないからやめてって言ったら、今、かなり必死に耐えて威嚇するにとどまっているのですよ」

「これで必死に耐えているというのか・・・」

「そうでした!レオン殿下、立太子おめでとうございます」

「あぁ、ありがとう、オーロラ嬢とノアールも婚約したのだろう?」

「えぇ、先日エリサ王女と王宮でお会いした時には、もう書類も交わして婚約者になっておりましたけれどね」

「そうだったのか、言ってくれればよかったのに」

「あの時は、私の記憶喪失事件直後で、話に花が咲いてそこまで話ができなかったのですわ」

「あぁ、あれは強烈だったな」

「えっ?何の話?オーロラ記憶喪失だったの!?」

「それはまた詳しく話すわ。そのせいでノアールがこうなってしまったのですから」

「ショック療法的な?」

「そういう事ですわ。あっ、それと、この度ノアールは、イースブール男爵家より、トワイライト公爵家の養子になりましたの」

「養子?婚約者なら普通に結婚すればいいのではないか?」

「ノアールの地盤を固めるためですわ」

「どういう事だ?」

「男爵家の三男という立場で引け目を感じて縁談が進まないのであれば、公爵家子息の立場になれば同等でしょう?ノアールは元城の侍従だった人材です。優秀なのは間違いないですわ。それに父が申しておりましたの」

「何をだ?」

「王家は惜しい人材を逃したなって。レオン殿下の側近でも十分活躍できただろうと。まぁ、もう返しませんけれどね」

「あぁ、確かに勿体無いことをしたな。まぁ、ノアールが今幸せならそれでいいさ、こっちにはノエルもいるからな」


自信満々で言ってのけるレオンだが、そこは俺が優秀とは言えないところがレオンの人の良さである。





ーーーーーーーーーーーーーーー

次回

いつまでもとは保証はないのですよ?

早速実践あるのみですわ!

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