影は落ちました

agapē【アガペー】

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63、実践あるのみ!

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「あっ、レオン様、ちょっと外しますね」

「あぁ、わかった」


マルティナが関係者への挨拶に席を外す。


「レオン殿下、この後お時間ありまして?」

「あぁ、あるが?」

「では、お話できる場所に」


レオン、オーロラ、ノアールの三人は、休憩するために用意されている個室へと場所を移した。ノアールは、いつものように膝の上に乗せようとするが、オーロラがそれを静止する。


「オーロラ?・・・なんで・・・」

「座って?」

「・・・うん」


拒否された事が悲しくて落ち込んだが、ソファに腰をかけたノアールの視界に、オーロラの背中と金の髪がふわっと広がった。


「抱きしめてくれる?」

「・・・うんっ!」


触れさせてくれないのかと寂しく思っていたノアールだったが、オーロラが自身の足の間に座ったことで、後ろから包み込むような体勢になり、後ろからしっかりと抱きしめ、肩に顎を乗せオーロラの首に顔を埋めて甘えた。


「ふふっ、くすぐったいわよ」

「オーロラ、好き・・・」

「見せつけてくれるな・・・」

「あら、失礼しましたわ・・・でも、レオン殿下はマルティナにちゃんと甘えてますの?」

「はぁっ!?なんで男が甘えるのだ!?・・・って、目の前にいたか・・・」

「ふふっ、甘えてもいいじゃないですか」


オーロラは、首に擦り寄っているノアールの頭を撫でる。ノアールは気持ちよさそうに目を細めている。


「ちゃんと繋ぎ止めておかないと、他の殿方に持っていかれますわよ?」

「もう、婚約者になったのだ。これからは遠慮せず接するつもりだ」

「あら、人の心は縛れませんわよ?私でさえ、ノアールがいつ他の女性に惹かれるか不安に思っていますのに」

「オーロラ以外女じゃない」

「なんか、すごい事言ったな・・・今」


レオンは唖然としている。


「ふふっ・・・殿下、マルティナも今は一途ですが、いつまでもとは保証はないのですよ?」

「う・・・そう・・・なのか」

「えぇ、先ほども私達二人が羨ましいと言っていましたわ。まだ物足りなさを感じているという事なのでしょう」

「・・・王子としては女性とそれなりに接してきたつもりだったが・・・婚約者がいるのも初めてだし。相手からこんなに好意を向けられるのも初めてだ。どうしていいのか・・・わからないのだ」

「それでしたら、ノアールだってそうですわ。城にいて見ていたからお分かりでしょう?」

「確かに、以前のノアールなら、淡々と受け答えするだけだったから、もし結婚んなんて事になっても、妻と仲睦まじくなんて想像できなかっただろうな」

「レオン殿下は、マルティナの言う事に誠心誠意お応えしてくれていると思うのです」

「あぁ、求められるならきちんと応えたい」

「女は違うのですよ。ねだらずとも相手から求められたいのです」


その言葉を聞いたノアールが、オーロラの肩や首にキスをしていく。

「まぁ、こういう事ですわ。何をとは言いませんけれど、言わずとも求められるのは嬉しいものです」

「・・・言われてみれば・・・自分から彼女に触れたことはないな・・・」

「じゃあ、マルティナが来たら、まずはお膝に乗せましょうね?」

「ふぇっ!?い、いきなりか?嫌がられないだろうか?」

「好きな男にそうされて恥ずかしがっても、嫌がる女性はおりませんよ。内心嬉しいとは思いますけど?」

「そう・・・なのか・・・」




コンコンコン




「レオン殿下、マルティナ王女がいらっしゃいました」

「まぁ、ちょうどよかったわ、レオン殿下、早速実践あるのみですわ!」

「えっ、あっ、入ってくれ!」

「失礼します」


マルティナが部屋に入ってくるなり、レオンは立ち上がり歩み寄る。


「失礼する」


次の瞬間、マルティナの身体が中に浮いた。


「えっ!?レオン様!?」


レオンはそのまま無言でソファまで歩き、マルティナを膝に乗せて座る。


「レ、レオン様・・・こ、これは・・・」

「い、嫌だっただろうか・・・」

「いえ、嫌ではないのですが・・・」


マルティナの顔は真っ赤に染まっていく。


「は、恥ずかしいのです・・・」

「マルティナ、その内慣れますわ。私なんか、屋敷でお父様の前でまでその状態ですもの。最近はそれが当たり前で何も言われなくなりましたわ」

「そ、そうなのね・・・中々にハードルが高いのね・・・」

「レオン殿下、片手で支えれますでしょう?あいた手でマルティナの手をとってください」

「こ、こうか?」

「ひゃぅっ・・・」

「あ・・・すまない・・・」

「回数をこなせば慣れますわ。次は頭を撫でて髪を手で梳いてみてください」

「マルティナ、嫌だったら言ってくれ」


レオンは恐る恐るマルティナの髪に触れ、手櫛で髪を梳いていく。


マルティナは、恥ずかしさのあまり両手で顔を隠してしまった。


「なんだか手触りがいいな・・・女性の髪というのは柔らかいのだな」

「そうやって、マルティナを常にドキドキさせてあげてくださいませね」

「あ、あぁ、頑張るよ」

「さぁ、荒療治です!殿下、マルティナの手をどかして口づけを!」

「はぁっ!?」

「早く!」

「あ、あぁ!」


言われるがまま、マルティナの手を掴み、そのまま口を塞いだ。


「んんっ・・・」


すぐ唇は離れたが、マルティナは恥ずかしさに耐えきれず、両手で顔を覆い、レオンの胸に隠れるようにしなだれかかる。


「ぎゅって・・・抱きしめてあげましょう?」


満足気にオーロラが最後の一言を言う。


事のほか、嬉しそうなレオンがいた。自身の手で女性をドキドキさせるという事で自信がついたのだろう。



コンコンコン。



「失礼します。オーロラ嬢がこちらだと聞い・・・僕お邪魔みたいですね?」


二組のカップルが仲睦まじい様子に居た堪れなくなり、ため息をついたノエルだった。




ーーーーーーーーーーーーーーー


次回

僕は兄上のスペアでしかない

それらは最低条件だと思いますの

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