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純情令息とお転婆公爵令嬢
衝撃は突然に
しおりを挟む夜会の日から二週間が経ち、辺境領に戻っていたセシルは、今日も騎士達に稽古をつけていた。
「おい、そこ!剣が乱れている、しっかり構えろ!」
「はい!!」
「集中力を切らすな!怪我をするぞ!戦場ではいつも死と隣り合わせだ、忘れるな!」
「はい!!」
セシルの檄が飛んでいた。
ドンッ!!
「ぬぉっ・・・」
後ろから何かが突撃してきた。見下ろすと、自分の胴体に白い細腕が見える。何が起きたのかわからず、セシルは思考が止まってしまった。騎士達も、稽古の手を止め、何かと食い入るように見ている。
「セシル様?」
「・・・」
「痛かったですか?ごめんなさい!!」
女性の声がするが、混乱でまだ理解が追いつかないでいた。するりと腕が離れていくと、声の主がセシルの目の前に回り込んできた。
「エ、エミリア嬢!?」
「へへっ、来ちゃいました」
驚きで目を見開いているセシル。ニコニコとセシルを見上げるエミリア。何事かと様子を伺う騎士達。沈黙が流れていく。
「やっぱり、痛かったですよね・・・」
「いっ、いやっ、辺境の騎士は鍛えている!これくらいどうってことない!!」
変な緊張で無駄に大声が出た。セシルの顔は真っ赤に染まっている。
「セシル」
「父上!?」
「あぁ、エミリア嬢、もう着いておられましたか」
「辺境伯様、ご挨拶に伺わず、すみません!」
「いや、かまいませんよ、代わりにいいものを見せて貰いました」
「?」
「息子がこんなに照れる姿は初めてだ。はははっ!」
「父上!?・・・父上はエミリア嬢が来られることをご存知だったのですか?」
「あぁ、数日前に連絡をもらってな」
「なぜ教えてくださらなかったのです!」
「面白くないだろう?たまには息子へイタズラをしたくなったのだ」
「父上・・・」
「それとエミリア嬢は、本日から我が屋敷に滞在される。セシル、案内など頼んだぞ」
「へっ・・・」
「返事は?」
「は・・・はい!!!」
「セシル様、お世話になります、よろしくお願いします」
「あ、あぁ、こちらこそ・・・」
純情男を追いかけて、お転婆娘が辺境の地まで追いかけてきた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
そうか・・・断るのは胸が痛むな・・・
私が選んだご令嬢より、すばらしいご令嬢だと?
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