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純情令息とお転婆公爵令嬢
二人の攻防
しおりを挟む縛られていたロープを解かれ、エミリアは解放されたが、今度はセシルの腕に捉えられた。セシルはエミリアの肩に頭を乗せて、震える体で静かに抱きしめていた。
「・・・すまない・・・」
「・・・」
「・・・もっと早くに気付けばこんな事には・・・くそっ」
「・・・セシル様」
「・・・」
「セシル様、この事を招いたのは私の責任ですわ」
「君は悪くないだろう?」
「いえ、私の危機感のなさです」
「俺が悪い・・・」
「いいえ、こういう事も想定していなくてはダメでした」
「こんな想定、普通はしない・・・」
「いいえ、セシル様のお心を乱す事で隙を狙う者もいるでしょう・・・」
「・・・」
「私は失格ですね・・・」
「失格・・・?」
セシルは心配そうな表情でゆっくりと顔を上げる。
「えぇ、辺境伯夫人になるには失格ですわ・・・セシル様、婚約者になる前でよかったです。短い間でしたが、お側にいれて幸せでしたわ」
「何を言うんだ!婚約は絶対だ!」
「こんな、他の男に穢された女ですよ?」
「エミリア嬢は綺麗だ!」
「騎士達にも穢れるっておっしゃってましたわ」
「俺が綺麗にする」
「こんなはしたない姿をみせましたわ・・・」
「これからいくらでも見る事になる」
「淫乱だと言われてしまいましたわ」
「なっ!?・・・俺が、満足させれる、ように、がっ、頑張る・・・努力する」
「そこは否定してくださいな・・・」
「い、いや、君を淫乱だとは思ってない!」
「お嫁に行けませんわ」
「君はもう、俺の嫁だ!!」
「ん?」
「あぁ、少し間違った・・・未来の嫁だ」
「セシル様」
「なんだ?」
「私を抱いてくださいませ」
「なっ、何を言っているんだ!」
「他の男に触れられた私は抱けませんか?」
「そんな事あるわけないだろう!」
「では、抱いてください」
「婚前交渉はよくない・・・」
「・・・そうですか。では、・・・公爵家へ帰ります」
「っ!!な、なぜ、帰るのだ!?」
「・・・」
「エミリア嬢・・・?」
「・・・」
何も答えないエミリアを、セシルは覗き込んで様子を伺っていたが、耐えきれず抱きかかえると、そのまま部屋を出ていった。
「セ、セシル様!?」
セシルは足早にどこかに向かうも、何か考え事をしているようで、こちらの問いかけには何も答えなかった。
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次回
なんで帰るなんて言うんだ・・・
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