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拗らせすぎた片想い

そしてバージルの所へ

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翌年、ジャンク侯爵家に小さな命が誕生した。テオドールのミルクティのような茶色の髪に、シルビアと同じ色の緑の瞳を持つ可愛い女の子。リシェルと名付けられた少女は、数年後、お茶会である少年に助けられる。そして、あの姿を目撃することになる。


「あぁ、彼女は大丈夫だろうか。怖かっただろうな・・・腕も痣が残らないといいが。彼女の細腕を掴みやがって、折れてくれたらどうしてくれる・・・まったく・・・彼女は今日は夜ちゃんと眠れるだろうか・・・震えてはいないだろうか・・・抱きしめてあげたいな・・・大丈夫だ僕がいる、と慰めてあげる役がしたいなぁ・・・そしたら彼女は僕に身を委ねてくれるんだろうか?この腕で抱きしめたい・・・僕の腕にすっぽりとおさまる彼女に見上げられて・・・絶対可愛いじゃないか!!」


両腕で抱き締める格好をして悶える黒髪の少年の姿を。最後に大きな声を上げて勢いよく立ち上がった事に驚き、一歩後ずさった事で葉っぱを踏んでしまった。その音に気付いて振り向いた少年は、プルプル震えながら冷や汗を流した。聞いていた内容にリシェルは真っ赤になって俯いている。そのまま二人とも固まった。


「えっと・・・その・・・あ・・・聞こえちゃった?見苦しいものを見せてしまったな。本音がそのまま口から出てしまったようだ。助けたところまでだったら格好いい僕だったのになぁ・・・最後で格好つかないなんて・・・1時間、いや、せめて5分でいいから、時を戻せる魔法が使えたらよかったなぁ・・・」


少年はガシガシ頭を掻いている。


「ふふっ、面白い方なのですね」

「な、名前聞いてもいいか?」

「あ、私ったら、ご挨拶もせずに失礼しました。ジャンク侯爵家長女、リシェルと申します」

「・・・リシェル、可愛い名だな」

「ありがとうございます」

「・・・ん?ジャンク?」

「はい、父は、第二騎士団の騎士団長を務めております、テオドール・ジャンクです」

「ジャンク騎士団長の娘なのか!?あの騎士団長からこんなに可憐な娘が・・・いや、奥方が綺麗どころであったな・・・リシェル嬢は母上に似たのだな・・・うん、騎士団長とは似ていないな・・・ブツブツ・・・リシェル嬢、すまない、一緒に来てくれ!」

「あ、あの、どちらへ?」


少年はリシェルの手を引いたまま、バージルの執務室へ入っていく。


「ん?レグルス、どうしたんだそんなに急いで」

「リシェル?」

「お、お父様!?」


足早に急ぐように入ってきたレグルスに、手を取られまま連れてこられたリシェルを見て、バージルとテオドールは何事かと様子を伺っていた。


「ジャンク騎士団長!ちょうどよかった、父上、お話があります!」

「な、なんだ?」

「リシェル嬢と結婚したいです!」

「で、殿下!?」

「え!?」「はぁ!?」


三人はあまりにも唐突なレグルスの言葉に目を見開いて驚いていた。



テオドールとシルビアの娘リシェルは、思い立ったら猪突猛進なバージルの息子レグルスの婚約者となった。二人の娘はしっかりと溺愛される道を歩むことになった。

テオドールとシルビアにはもう一人息子が産まれた。数年後・・・。


「見つけましたわ!」


どこかで聞いた事があるようなセリフが。ジャンク侯爵家も将来は安泰のようです。




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ワルシャワ公爵家の双子のお話でした!お付き合い頂きありがとうございます。

エミリアは長年の片想いと思っていた相手に失恋したと思えば、セシルからの想いを聞き、本当の恋を知って幸せを手に入れました。

シルビアは片想いを告げられず人生を諦め、家が決めた嫁ぎ先に行くも、離縁となります。しかし、長年の想い人であったテオドールと両想いだとわかり幸せを掴みます。

この二人の令嬢のお話は当初さらっとどこかで出すくらいに考えていたのですが、セシルの真面目で純情な性格や、テオドールの意外と甘さを出してくるなどキャラ作りをしていると、どうしても二人を幸せな未来へと導きたくなりました。

テオドールとシルビアの子供がいずれバージルとミーティアの子どもと出会うという部分も、レグルスの話の時に出していたので、どういう経緯で二人が夫婦になって、いつリシェルが産まれたのかなどを明確にする事になりました。そこに繋がるのかくらいな感じで読んでいただけたかなと思います。



番外編まだ続きます!


次は、本編にはほとんど関係のなかった人物のお話。第一王女マーガレットに恋をした公爵令息サイラスのお話。本編でマーガレットは他国に嫁ぐ事が明らかになっています。そんなマーガレットを忘れきれないサイラスの胸中の変化を描いた話です。このお話がまた別の恋模様に影響を与える事になります。



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次回

あの花が欲しい





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