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45.マンパワーヒーローの弱点
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僕は無理をせずに、ユニコーンケンタウロスを使うことを選んだ。
先ほどと考えていることが違うじゃないかと思うかもしれないが、タケル側にリスクがあると仮定すると、こんな逆算ができる。
まず、タケルは悪魔から浚われたヒーラーたちを奪還するために、多くの分身を失っていると思われる。悪魔側も冒険者たちの襲撃を警戒して、それなりの守りを固めて捕虜を護送していただろう。
次に、捕虜を救い出した後も、悪魔の軍勢の追撃を食い止めなければならない。
恐らくタケルは、自分の分身を置き逃げしながら後退戦をしないと、追撃からヒーラーたちを守れなかったのではないかと思える。
そして、少し前にレッドトマホークは、悪魔の襲撃を食い止める戦いをしている。
レッドトマホークは規模が大きなギルドだけあり、ギルド内には様々な派閥があって協力体制もぜい弱だと聞く。タケルのことを情報共有していない可能性も高いので、この戦いでもタケルは非効率的に投入され消耗するのは確実だろう。
僕は一角獣になると、一番最初に突っ込んできたタケルを蹴飛ばしてダウンさせると、他のタケルを睨んだ。
『マンパワーヒーロー……一見すると、とても強そうに見えるけど、ダウンした自分自身は簡単には回復しない』
そう呟くと、残った3人のタケルは腰が引けた。
どうやら僕の推測は図星だったようだ。
『これ以上……自分自身が減ると、生存そのものが難しくなるんじゃないかな?』
更に揺さぶりをかけると、タケル同士がお互いを眺め合っていた。
どうやら、100いたタケルも、今この時点では3人だけになっているのかもしれない。
真ん中にいたタケルが、力なく息を吐いた。
「……わかった。俺の負けだ」
そう言うとこちらを見た。
「全く、剣の腕が凄いだけでなく頭までいいと来てやがる……10人も残っていれば勝てると思ったのによ」
「なぜ、僕に勝てると思ったんだい?」
疑問を投げかけてみると、タケルは苦々しい顔をしながら言った。
「俺の上司がよ、大のスティレット嫌いなんだよ。だからスティレットの部下に、異世界転移者っぽいヤツがいるから、叩き潰して鼻を明かして来いって言われたんだ……結果はこのざまだけどな」
「じゃあ、そのバカ上司に、文句があるならテメーが来いクソザコって伝えてくれる?」
そう伝えると、タケルはニヤッと笑っていた。
「……あんたのこと、少しだけだが好きになれそうだぜ」
チャクラムも言った。
『もし、その能力を緊急で使いたいなら相談しにきな。考えがある』
間もなくタケルが仲間たちと共に去っていくと、僕はホッとしながら横倒しになった。
ある程度は善戦できたとは言え、やはり最後にはユニコーンモードに頼らなければ、強敵に勝つのは難しいようだ。
だけど……僕は密かに確かな手ごたえも感じていた。
「お疲れ様です。お見事な勝利でしたねあなた!」
キンバリーが言うと、クロエやスカーレット、更にジェシカも頷いてくれた。
「うん、私も頑張って指導した甲斐があったよ!」
「最後がちょっとヒヤッとしたけど、危なげなく勝ったね!」
「ああ、これなら明日からも、安心して修練に励めるなアキノスケ! ……いや、隊長」
僕は首を上げると仲間たちを見た。
キンバリー、クロエ、スカーレット、ジェシカ、それにチャクラム。彼らの誰か1人でも欠けていたら、僕はここまで力を付けることはできなかったし、彼らがいればこれから困難に直面しても、きっと生き延びることができると確信できる。
「ありがとうみんな。みんなの力があったからこそ……難敵に勝つことができた」
再び立ち上がると、僕は言った。
「これに満足しないで、明日からまた……基礎体力や基礎戦闘力を高めないとね。どんな素晴らしいアビリティを持っていても、そこを疎かにしたら生き残ることはできない」
僕がギルドでゆっくりとしているとき、レッドトマホークの幹部フロアでは、先ほど演習をしたタケルが上司という人物に結果報告をしていた。
その上司は、持っていたグラスを床に投げつけて怒鳴った。
「そしておめおめと負けて戻ってきたのか、情けない奴め!」
隣にいたウェアウルフの子供は驚いて隠れていたが、タケルは凛とした表情のまま言った。
「正直、俺の完敗です。アイツに手は出さない方がいいっスよ」
「私に指図をするな、この三下が! お前たちマヌケトリオは便所掃除でもして来い!!」
「はいはい、中隊長殿の仰せの通りに」
そう言いながら「行くぞ」と伝えると、ウェアウルフの子供とヒーラーの女性は彼に付いて行った。
彼はドアノブに手をかけたところで、振り返って中隊長を見た。
「ああそうそう。忘れるところだった……パワッハラー隊長」
「……なんだ?」
「文句があるならテメーが来いクソザコ……って伝えろって言われてました」
「はあ!?」
その中隊長が立ち上がると、タケルは薄ら笑いを浮かべながら言った。
「隊長が糸を引いていたことも、見事に看破されていました……いや~ 恐ろしい人ですねアキノスケさんって!」
タケルが立ち去ると、パワッハラー中隊長は持っていたペンをへし折ってから壁に投げつけていた。
「レア能力を持っているからって調子に乗りおって……どいつもこいつも! このままでは済まさんぞ!!」
【タケルから見たアキノスケ】
先ほどと考えていることが違うじゃないかと思うかもしれないが、タケル側にリスクがあると仮定すると、こんな逆算ができる。
まず、タケルは悪魔から浚われたヒーラーたちを奪還するために、多くの分身を失っていると思われる。悪魔側も冒険者たちの襲撃を警戒して、それなりの守りを固めて捕虜を護送していただろう。
次に、捕虜を救い出した後も、悪魔の軍勢の追撃を食い止めなければならない。
恐らくタケルは、自分の分身を置き逃げしながら後退戦をしないと、追撃からヒーラーたちを守れなかったのではないかと思える。
そして、少し前にレッドトマホークは、悪魔の襲撃を食い止める戦いをしている。
レッドトマホークは規模が大きなギルドだけあり、ギルド内には様々な派閥があって協力体制もぜい弱だと聞く。タケルのことを情報共有していない可能性も高いので、この戦いでもタケルは非効率的に投入され消耗するのは確実だろう。
僕は一角獣になると、一番最初に突っ込んできたタケルを蹴飛ばしてダウンさせると、他のタケルを睨んだ。
『マンパワーヒーロー……一見すると、とても強そうに見えるけど、ダウンした自分自身は簡単には回復しない』
そう呟くと、残った3人のタケルは腰が引けた。
どうやら僕の推測は図星だったようだ。
『これ以上……自分自身が減ると、生存そのものが難しくなるんじゃないかな?』
更に揺さぶりをかけると、タケル同士がお互いを眺め合っていた。
どうやら、100いたタケルも、今この時点では3人だけになっているのかもしれない。
真ん中にいたタケルが、力なく息を吐いた。
「……わかった。俺の負けだ」
そう言うとこちらを見た。
「全く、剣の腕が凄いだけでなく頭までいいと来てやがる……10人も残っていれば勝てると思ったのによ」
「なぜ、僕に勝てると思ったんだい?」
疑問を投げかけてみると、タケルは苦々しい顔をしながら言った。
「俺の上司がよ、大のスティレット嫌いなんだよ。だからスティレットの部下に、異世界転移者っぽいヤツがいるから、叩き潰して鼻を明かして来いって言われたんだ……結果はこのざまだけどな」
「じゃあ、そのバカ上司に、文句があるならテメーが来いクソザコって伝えてくれる?」
そう伝えると、タケルはニヤッと笑っていた。
「……あんたのこと、少しだけだが好きになれそうだぜ」
チャクラムも言った。
『もし、その能力を緊急で使いたいなら相談しにきな。考えがある』
間もなくタケルが仲間たちと共に去っていくと、僕はホッとしながら横倒しになった。
ある程度は善戦できたとは言え、やはり最後にはユニコーンモードに頼らなければ、強敵に勝つのは難しいようだ。
だけど……僕は密かに確かな手ごたえも感じていた。
「お疲れ様です。お見事な勝利でしたねあなた!」
キンバリーが言うと、クロエやスカーレット、更にジェシカも頷いてくれた。
「うん、私も頑張って指導した甲斐があったよ!」
「最後がちょっとヒヤッとしたけど、危なげなく勝ったね!」
「ああ、これなら明日からも、安心して修練に励めるなアキノスケ! ……いや、隊長」
僕は首を上げると仲間たちを見た。
キンバリー、クロエ、スカーレット、ジェシカ、それにチャクラム。彼らの誰か1人でも欠けていたら、僕はここまで力を付けることはできなかったし、彼らがいればこれから困難に直面しても、きっと生き延びることができると確信できる。
「ありがとうみんな。みんなの力があったからこそ……難敵に勝つことができた」
再び立ち上がると、僕は言った。
「これに満足しないで、明日からまた……基礎体力や基礎戦闘力を高めないとね。どんな素晴らしいアビリティを持っていても、そこを疎かにしたら生き残ることはできない」
僕がギルドでゆっくりとしているとき、レッドトマホークの幹部フロアでは、先ほど演習をしたタケルが上司という人物に結果報告をしていた。
その上司は、持っていたグラスを床に投げつけて怒鳴った。
「そしておめおめと負けて戻ってきたのか、情けない奴め!」
隣にいたウェアウルフの子供は驚いて隠れていたが、タケルは凛とした表情のまま言った。
「正直、俺の完敗です。アイツに手は出さない方がいいっスよ」
「私に指図をするな、この三下が! お前たちマヌケトリオは便所掃除でもして来い!!」
「はいはい、中隊長殿の仰せの通りに」
そう言いながら「行くぞ」と伝えると、ウェアウルフの子供とヒーラーの女性は彼に付いて行った。
彼はドアノブに手をかけたところで、振り返って中隊長を見た。
「ああそうそう。忘れるところだった……パワッハラー隊長」
「……なんだ?」
「文句があるならテメーが来いクソザコ……って伝えろって言われてました」
「はあ!?」
その中隊長が立ち上がると、タケルは薄ら笑いを浮かべながら言った。
「隊長が糸を引いていたことも、見事に看破されていました……いや~ 恐ろしい人ですねアキノスケさんって!」
タケルが立ち去ると、パワッハラー中隊長は持っていたペンをへし折ってから壁に投げつけていた。
「レア能力を持っているからって調子に乗りおって……どいつもこいつも! このままでは済まさんぞ!!」
【タケルから見たアキノスケ】
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