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第10話 休暇中! 主任と少し離れます(上)
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「はー、はーっ」
「は、ぁ……」
二人はそれぞれ、浅く乱れた息を吐く。
まほろは指一本も動かせないほどに全身が脱力していたが、聡介はある程度呼吸が整うと避妊具を外して縛り、ティッシュにくるんでゴミ箱へ投げ捨てる。それからボクサータイプのパンツを履き、自分とまほろに掛布団をかけてベッドに横になった。
「寝る……んですか」
「眠かったら寝てもいいですよ。夕飯はまあ……今日は出前でもとりますか」
ひとつの枕を分け合う二人は横向きで向き合った。
「駄目ですね、俺は」
「何がですか?」
「ん? 頭の中ではもっと君を気持ちよくさせられるはず、と思っているのですが……ついつい、自分の快感が勝ってしまいます」
「そんなこと……ないと思うんですが」
事前の宣言通り、まほろとしては今日もたっぷりと気持ちよくしてもらったと思う。
付き合ってすぐに身体を重ねることはなく、性交に向けて前戯からゆっくりと慣れさせてくれたことといい、聡介のセックスは十分に、いつだってまほろを気持ちよくしてくれる。元カレとのセックスなど、「あれはセックスとは呼べないものだったのだ」と思うほどだ。
「いえ、まだまだ自分の理想通りにできません」
(怖い……聡介さんのその理想通りにされたら、私は意識を失うんじゃ……)
聡介の中には確固たる崇高な理想があるようで、その理想に近付くための努力に余念がない。しかし、これ以上甘く激しく溺愛されては自分の意識や自我というものが消えてしまいそうな気がして、まほろは若干恐怖を覚えた。
(どうしたら聡介さんを止められるの)
まほろは聡介の喉仏をぼんやりと見つめながら考える。
夏のあの日の告白といい、その後の付き合い方といい、聡介の言動はとにかくまほろ限定で普通ではない。「十でいい」と言っているのに百も二百も与えてくるような感じだ。愛されるのは嬉しいことではあるのだが、いかんせん御しがたい。
(〝十でいい〟じゃなくて……〝十がいい〟って言えば……いいのかな)
まほろは黙っている聡介の瞳を見つめた。さすがに事後で少し疲れたのか、聡介は黙ってまほろを見つめ返してくる。
「あの、聡介さん……」
「何ですか」
「お詫び、とかは要らないので……その……」
まほろは勇気を出した。こんな風に恋人に願うのは、甘え下手なまほろにとって簡単なことではないなのだ。
「お詫びはもういいので……合コンとか、ほかの女性と二人で出かけるとか……そういうのはしないで……ほしいです」
まほろがそう言うと聡介の瞼はぐわっと持ち上がり、黒い瞳がこれでもかとまん丸に開いた。
「ああ、まほろ……ええ、もちろんです。友人や同僚としての付き合いがあるとしても、もう二度と不誠実なことはしません。俺が大事なのはまほろだけ……まほろだけを愛していますからね」
聡介はそう言うと、裸体のままのまほろをぎゅっと抱きしめた。
この日まほろはほんの少しだけ、聡介の手綱の握り方を学べた気がしたのだった。
◆◇◆◇◆
「は、ぁ……」
二人はそれぞれ、浅く乱れた息を吐く。
まほろは指一本も動かせないほどに全身が脱力していたが、聡介はある程度呼吸が整うと避妊具を外して縛り、ティッシュにくるんでゴミ箱へ投げ捨てる。それからボクサータイプのパンツを履き、自分とまほろに掛布団をかけてベッドに横になった。
「寝る……んですか」
「眠かったら寝てもいいですよ。夕飯はまあ……今日は出前でもとりますか」
ひとつの枕を分け合う二人は横向きで向き合った。
「駄目ですね、俺は」
「何がですか?」
「ん? 頭の中ではもっと君を気持ちよくさせられるはず、と思っているのですが……ついつい、自分の快感が勝ってしまいます」
「そんなこと……ないと思うんですが」
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付き合ってすぐに身体を重ねることはなく、性交に向けて前戯からゆっくりと慣れさせてくれたことといい、聡介のセックスは十分に、いつだってまほろを気持ちよくしてくれる。元カレとのセックスなど、「あれはセックスとは呼べないものだったのだ」と思うほどだ。
「いえ、まだまだ自分の理想通りにできません」
(怖い……聡介さんのその理想通りにされたら、私は意識を失うんじゃ……)
聡介の中には確固たる崇高な理想があるようで、その理想に近付くための努力に余念がない。しかし、これ以上甘く激しく溺愛されては自分の意識や自我というものが消えてしまいそうな気がして、まほろは若干恐怖を覚えた。
(どうしたら聡介さんを止められるの)
まほろは聡介の喉仏をぼんやりと見つめながら考える。
夏のあの日の告白といい、その後の付き合い方といい、聡介の言動はとにかくまほろ限定で普通ではない。「十でいい」と言っているのに百も二百も与えてくるような感じだ。愛されるのは嬉しいことではあるのだが、いかんせん御しがたい。
(〝十でいい〟じゃなくて……〝十がいい〟って言えば……いいのかな)
まほろは黙っている聡介の瞳を見つめた。さすがに事後で少し疲れたのか、聡介は黙ってまほろを見つめ返してくる。
「あの、聡介さん……」
「何ですか」
「お詫び、とかは要らないので……その……」
まほろは勇気を出した。こんな風に恋人に願うのは、甘え下手なまほろにとって簡単なことではないなのだ。
「お詫びはもういいので……合コンとか、ほかの女性と二人で出かけるとか……そういうのはしないで……ほしいです」
まほろがそう言うと聡介の瞼はぐわっと持ち上がり、黒い瞳がこれでもかとまん丸に開いた。
「ああ、まほろ……ええ、もちろんです。友人や同僚としての付き合いがあるとしても、もう二度と不誠実なことはしません。俺が大事なのはまほろだけ……まほろだけを愛していますからね」
聡介はそう言うと、裸体のままのまほろをぎゅっと抱きしめた。
この日まほろはほんの少しだけ、聡介の手綱の握り方を学べた気がしたのだった。
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