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第10話 休暇中! 主任と少し離れます(中)
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忙しい師走の月が過ぎていく。
まほろは社内システムで初めて年末調整の申請をしたり、所属している受注管理課の忘年会に予定通り参加したりしながら、社会人一年目の年の瀬を慌ただしく過ごしていた。
仕事の傍らで散々悩んだが、まほろは年末年始に実家に帰ることにした。聡介のように実家が飛行機の距離にあるならば帰らない、という選択肢もとれたのだろうが、若干遠いとはいえ電車で数時間もあれば帰れる距離なのだ。帰らない方が、のちのち面倒なことになる。そう思っての判断だった。
それに、実家を出て半年以上が経ち、聡介という恋人ができて彼からゆっくりと影響を受けたいま、まほろは自分の家族と自分が今後どのように付き合っていくべきなのか、それを考える材料が欲しいと思った。家族に感情をかき乱されてばかりだったが、そうではなくて、自分と家族の関係を客観的にとらえたいと思ったのだ。
一方の聡介は、仕事納めの次の日には飛行機で実家に帰省するとのことだった。実家滞在期間は年末年始休暇中すべてで、休暇最終日の一月三日にこちらに戻るそうだ。今年の年末年始休暇は短く、一日もまほろと一緒に過ごせないことを聡介はたいそう嘆いていたが、古い田舎の家なので親戚付き合いも含めてそこそこきちんと顔を出しておかないと、あれこれと言われて面倒なのだという。
聡介と会えないことは、まほろも寂しく思った。それに、心細いと。
実家の家族との関係を客観的にとらえたいと思えたのは、聡介のおかげだ。彼が惜しみなく愛情を注いでくれたおかげで、長年踏みにじられ続けていたまほろの自己肯定感は芽吹いたばかりの新芽のように、小さいながらにもようやくその形を自分で保てるようになっていた。
「ただいま……」
仕事納めの次の日、一人暮らしの部屋の大掃除をする。それが終わった翌日、まほろは実家のマンションの玄関の鍵を開けた。
「おかえりー」
奥のリビングから母の声が聞こえる。だが、姿は見せない。姉が帰ってきた時なら必ず玄関まで出迎えに行くのに、まほろにはいつも声だけの対応だ。
(お母さんは私の何が気に入らないのかなあ……)
物心ついた頃から、母の無条件の愛情は姉の唯依佳だけに向いていた。母にとってのまほろは唯依佳のおまけぐらいでしかなく、必要最低限の関わりしか持とうとはしない。
手洗いうがいを終えたまほろは、リビングに向かった。そこにいるのは母だけで、父と姉はいないようだ。
一人暮らしを始める際、唯依佳と二人で使っていた部屋は完全に唯依佳の私室にして構わないと言ったので、今のこの実家にまほろの部屋というものはない。私物もほとんどは捨てるか一人暮らしのアパートの方に運んだので、長年住んでいたはずの家なのに、いまこの室内にまほろの存在を証明する物はそう多くなかった。
「お姉ちゃんは……仕事?」
テレビを見ている母に、まほろは話しかけた。娘が帰宅したところで腰を上げやしない母をちらりと見ながら、まほろは電気ケトルでお湯を沸かす。それから、自分が使ってもいいはずのコップを取り出して紅茶のティーバックをセットした。
「さあ? 仕事じゃないはず」
「お姉ちゃん、いまどこで働いてるの」
仕事でないのなら、姉はいつものように友達とどこかで遊んでいるのだろう。男女問わず、姉の交友関係は広い。どこでどうやって知り合ったどういう友達なのかはわからないが、「友達と遊びに行く」という言葉を、唯依佳は年がら年中口にするのだ。
「岡島町の方の会社に人材派遣でしばらく行ってたんだけど、パソコンでの作業ばかりなのが合わなかったみたいでねえ」
(合わなかったって……事務職ならパソコンでの作業が当たり前なのに……)
散々母に甘やかされて育った唯依佳は短気でこらえ性がなく、何事も継続することができない。すぐに放り投げて、楽な方へと行きたがる。
小顔なのにぱっちりとした二重の目は大きく、鼻筋は細いのに口は大きくて猫のように愛くるしい笑顔を浮かべる唯依佳は、その性根を知らない人からのウケはとてもいい。かわいがってくれる友人や年上をうまく使って世渡りはしているが、果たしてそれはいつまで続けられることだろうか。
(お母さんは話しかければ会話はしてくれるけど、相変わらず私には興味なし……)
まほろは蒸らしたティーバックを生ゴミのゴミ箱に捨てながら、ふぅ、とため息をついた。
(お姉ちゃんも相変わらず……それどころか、この先悪くなる予感しかしない)
唯依佳は若い時分の魅力を振りかざし、嫌なことも面倒くさいことも全部避け続けながら、今はどうにかこうにか生きている。働いている父は定年までまだ数年あるし、定年退職をしてもその後少しぐらいは働くはずだろうから、唯依佳が放蕩していてもまだ大丈夫だ。
けれど、それもおそらくもって数年のことだ。父が明確な収入源を失ったあと、唯依佳がこの家の大黒柱として稼ぎ頭になるはずがない。ずっと専業主婦をしている母も今さら働く気などないのだろうし、唯依佳が自立して働かず、はっきりと金食い虫になったら、この家もいよいよ本格的に荒れるだろう。
(私は……)
まほろもリビングのソファに座り、ぼんやりとテレビ番組を見ながら紅茶を飲み、暗い気持ちで考える。
(私は誰のことも……助けたいとは思わない)
ろくにまほろに構いもしない母。真面目に働かずに遊んでばかりの姉。そして、おそらく散歩と称してどこかに外出していて家族から逃げてばかりの父。三者三様に、誰もが現実から目を背け続けている。この先きっと困ることが起きるだろうに、誰もそのことを心配せず、地に足を着けてコツコツと努力することもない。父はさすがに老後の蓄えぐらいは考えているだろうが、しかし唯依佳のことはこの先もずっと、見て見ぬふりをするに違いない。血のつながった家族でありながら、まほろは三人のことをとても遠い他人のように感じた。
(私は……私の幸せのために生きたい……)
日々の生活を成立させることは主に金銭的な面でとてもたいへんなことであると、まほろは一人暮らしを始めてから重々思い知った。人はたった一日を生きるためにも、光熱費、食費、住居費などのお金がかかる。
けれど、働いて自分で稼いだお金で生きることはとても誇らしいことであるとも知った。地味で目立たず当然のことと言えば当然のことだが、毎日続けなければならないその営みを真面目に続けることこそが、とても普通の幸せにつながるのだと。
まほろの頭の中では、「誰か知らない大勢」の声がまだまだ強く響く。「家族ならば助け合わなければいけない! 家族を見捨てるなんてとんでもない! 姉が頼りにならないのなら、老いていく両親を自分が面倒見なければ!」――そんな風に、凝り固まった価値観が強く強く叫ばれている。
けれど、まほろの頭の中の「大勢の人たち」は、不思議なことに誰一人こうは言わないのだ――「自分が幸せになろうよ」とは。
(この家に……この家の人たちに関わることは……何も幸せじゃない)
それどころか、両親も姉も、ずっとまほろの心を蔑ろにしてきた。日々の生活も進学も、子供だった自分がこの社会で生きていくのに最低限必要なことは支援してくれたが、その傍らで、まほろの心についは徹底的にぞんざいに扱ってきたのだ。
母と二人、テレビは見るものの会話のない時間が続いていく。
そしてすっかり日が沈みきった頃、ようやく父が帰ってきた。まほろの顔を見るなり、「元気か」と一言尋ねてくれたが、コミュニケーションらしいコミュニケーションはそれだけだった。姉が帰宅しないので三人で先に囲んだ夕飯の席でも、母が父に、昼間に見ていたテレビ番組の話を振る程度で心温まるような団欒はなかった。まほろ自身も、自分から気の利いた会話はあまりできなかった。
姉の唯依佳が帰らないまま夜は更けていく。唯依佳と共同で使っていた部屋にあったまほろのベッドは処分してもらったが、寝具一式はとっておいてもらったので、それをリビングに敷いてまほろは就寝した。しかし、日付が変わった頃に帰宅した唯依佳が台所の灯りをつけ、洗面所と部屋を何度も往復し、夜中だというのに配慮のない生活音を立てるので、中途半端に目が覚めてしまった。二時間ほど経ってから唯依佳はようやく部屋に行って寝ついたようだったが、まほろの方はゆっくりと熟睡できなかった。
そして、朝がくる。一年で最後の日、大晦日だ。まほろは、おせち料理の準備をする母を黙々と手伝ったが、唯依佳はリビングのソファに座ったまま一歩も動かず、手元のスマートフォンをずっとポチポチといじっていた。
台所での作業が終わり、昼ご飯のお寿司を食べて一息つくと、ふいに唯依佳がスマホから顔を上げて、まほろを睨むように見つめた。
「ねえ、まほろの会社にイイ人いないの?」
「えっ?」
「イケメンの若手社長とか、本命には優しいコワモテ絶倫部長とか、愛されることに飢えてそうな出世頭の課長とかさ、そういうイイ人いないの?」
「い、いないよ……」
まるで女性向け漫画のタイトルや登場人物のような例を持ち出す唯依佳に、まほろは困惑しつつも恥ずかしさを覚えた。
まほろは社内システムで初めて年末調整の申請をしたり、所属している受注管理課の忘年会に予定通り参加したりしながら、社会人一年目の年の瀬を慌ただしく過ごしていた。
仕事の傍らで散々悩んだが、まほろは年末年始に実家に帰ることにした。聡介のように実家が飛行機の距離にあるならば帰らない、という選択肢もとれたのだろうが、若干遠いとはいえ電車で数時間もあれば帰れる距離なのだ。帰らない方が、のちのち面倒なことになる。そう思っての判断だった。
それに、実家を出て半年以上が経ち、聡介という恋人ができて彼からゆっくりと影響を受けたいま、まほろは自分の家族と自分が今後どのように付き合っていくべきなのか、それを考える材料が欲しいと思った。家族に感情をかき乱されてばかりだったが、そうではなくて、自分と家族の関係を客観的にとらえたいと思ったのだ。
一方の聡介は、仕事納めの次の日には飛行機で実家に帰省するとのことだった。実家滞在期間は年末年始休暇中すべてで、休暇最終日の一月三日にこちらに戻るそうだ。今年の年末年始休暇は短く、一日もまほろと一緒に過ごせないことを聡介はたいそう嘆いていたが、古い田舎の家なので親戚付き合いも含めてそこそこきちんと顔を出しておかないと、あれこれと言われて面倒なのだという。
聡介と会えないことは、まほろも寂しく思った。それに、心細いと。
実家の家族との関係を客観的にとらえたいと思えたのは、聡介のおかげだ。彼が惜しみなく愛情を注いでくれたおかげで、長年踏みにじられ続けていたまほろの自己肯定感は芽吹いたばかりの新芽のように、小さいながらにもようやくその形を自分で保てるようになっていた。
「ただいま……」
仕事納めの次の日、一人暮らしの部屋の大掃除をする。それが終わった翌日、まほろは実家のマンションの玄関の鍵を開けた。
「おかえりー」
奥のリビングから母の声が聞こえる。だが、姿は見せない。姉が帰ってきた時なら必ず玄関まで出迎えに行くのに、まほろにはいつも声だけの対応だ。
(お母さんは私の何が気に入らないのかなあ……)
物心ついた頃から、母の無条件の愛情は姉の唯依佳だけに向いていた。母にとってのまほろは唯依佳のおまけぐらいでしかなく、必要最低限の関わりしか持とうとはしない。
手洗いうがいを終えたまほろは、リビングに向かった。そこにいるのは母だけで、父と姉はいないようだ。
一人暮らしを始める際、唯依佳と二人で使っていた部屋は完全に唯依佳の私室にして構わないと言ったので、今のこの実家にまほろの部屋というものはない。私物もほとんどは捨てるか一人暮らしのアパートの方に運んだので、長年住んでいたはずの家なのに、いまこの室内にまほろの存在を証明する物はそう多くなかった。
「お姉ちゃんは……仕事?」
テレビを見ている母に、まほろは話しかけた。娘が帰宅したところで腰を上げやしない母をちらりと見ながら、まほろは電気ケトルでお湯を沸かす。それから、自分が使ってもいいはずのコップを取り出して紅茶のティーバックをセットした。
「さあ? 仕事じゃないはず」
「お姉ちゃん、いまどこで働いてるの」
仕事でないのなら、姉はいつものように友達とどこかで遊んでいるのだろう。男女問わず、姉の交友関係は広い。どこでどうやって知り合ったどういう友達なのかはわからないが、「友達と遊びに行く」という言葉を、唯依佳は年がら年中口にするのだ。
「岡島町の方の会社に人材派遣でしばらく行ってたんだけど、パソコンでの作業ばかりなのが合わなかったみたいでねえ」
(合わなかったって……事務職ならパソコンでの作業が当たり前なのに……)
散々母に甘やかされて育った唯依佳は短気でこらえ性がなく、何事も継続することができない。すぐに放り投げて、楽な方へと行きたがる。
小顔なのにぱっちりとした二重の目は大きく、鼻筋は細いのに口は大きくて猫のように愛くるしい笑顔を浮かべる唯依佳は、その性根を知らない人からのウケはとてもいい。かわいがってくれる友人や年上をうまく使って世渡りはしているが、果たしてそれはいつまで続けられることだろうか。
(お母さんは話しかければ会話はしてくれるけど、相変わらず私には興味なし……)
まほろは蒸らしたティーバックを生ゴミのゴミ箱に捨てながら、ふぅ、とため息をついた。
(お姉ちゃんも相変わらず……それどころか、この先悪くなる予感しかしない)
唯依佳は若い時分の魅力を振りかざし、嫌なことも面倒くさいことも全部避け続けながら、今はどうにかこうにか生きている。働いている父は定年までまだ数年あるし、定年退職をしてもその後少しぐらいは働くはずだろうから、唯依佳が放蕩していてもまだ大丈夫だ。
けれど、それもおそらくもって数年のことだ。父が明確な収入源を失ったあと、唯依佳がこの家の大黒柱として稼ぎ頭になるはずがない。ずっと専業主婦をしている母も今さら働く気などないのだろうし、唯依佳が自立して働かず、はっきりと金食い虫になったら、この家もいよいよ本格的に荒れるだろう。
(私は……)
まほろもリビングのソファに座り、ぼんやりとテレビ番組を見ながら紅茶を飲み、暗い気持ちで考える。
(私は誰のことも……助けたいとは思わない)
ろくにまほろに構いもしない母。真面目に働かずに遊んでばかりの姉。そして、おそらく散歩と称してどこかに外出していて家族から逃げてばかりの父。三者三様に、誰もが現実から目を背け続けている。この先きっと困ることが起きるだろうに、誰もそのことを心配せず、地に足を着けてコツコツと努力することもない。父はさすがに老後の蓄えぐらいは考えているだろうが、しかし唯依佳のことはこの先もずっと、見て見ぬふりをするに違いない。血のつながった家族でありながら、まほろは三人のことをとても遠い他人のように感じた。
(私は……私の幸せのために生きたい……)
日々の生活を成立させることは主に金銭的な面でとてもたいへんなことであると、まほろは一人暮らしを始めてから重々思い知った。人はたった一日を生きるためにも、光熱費、食費、住居費などのお金がかかる。
けれど、働いて自分で稼いだお金で生きることはとても誇らしいことであるとも知った。地味で目立たず当然のことと言えば当然のことだが、毎日続けなければならないその営みを真面目に続けることこそが、とても普通の幸せにつながるのだと。
まほろの頭の中では、「誰か知らない大勢」の声がまだまだ強く響く。「家族ならば助け合わなければいけない! 家族を見捨てるなんてとんでもない! 姉が頼りにならないのなら、老いていく両親を自分が面倒見なければ!」――そんな風に、凝り固まった価値観が強く強く叫ばれている。
けれど、まほろの頭の中の「大勢の人たち」は、不思議なことに誰一人こうは言わないのだ――「自分が幸せになろうよ」とは。
(この家に……この家の人たちに関わることは……何も幸せじゃない)
それどころか、両親も姉も、ずっとまほろの心を蔑ろにしてきた。日々の生活も進学も、子供だった自分がこの社会で生きていくのに最低限必要なことは支援してくれたが、その傍らで、まほろの心についは徹底的にぞんざいに扱ってきたのだ。
母と二人、テレビは見るものの会話のない時間が続いていく。
そしてすっかり日が沈みきった頃、ようやく父が帰ってきた。まほろの顔を見るなり、「元気か」と一言尋ねてくれたが、コミュニケーションらしいコミュニケーションはそれだけだった。姉が帰宅しないので三人で先に囲んだ夕飯の席でも、母が父に、昼間に見ていたテレビ番組の話を振る程度で心温まるような団欒はなかった。まほろ自身も、自分から気の利いた会話はあまりできなかった。
姉の唯依佳が帰らないまま夜は更けていく。唯依佳と共同で使っていた部屋にあったまほろのベッドは処分してもらったが、寝具一式はとっておいてもらったので、それをリビングに敷いてまほろは就寝した。しかし、日付が変わった頃に帰宅した唯依佳が台所の灯りをつけ、洗面所と部屋を何度も往復し、夜中だというのに配慮のない生活音を立てるので、中途半端に目が覚めてしまった。二時間ほど経ってから唯依佳はようやく部屋に行って寝ついたようだったが、まほろの方はゆっくりと熟睡できなかった。
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台所での作業が終わり、昼ご飯のお寿司を食べて一息つくと、ふいに唯依佳がスマホから顔を上げて、まほろを睨むように見つめた。
「ねえ、まほろの会社にイイ人いないの?」
「えっ?」
「イケメンの若手社長とか、本命には優しいコワモテ絶倫部長とか、愛されることに飢えてそうな出世頭の課長とかさ、そういうイイ人いないの?」
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