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お嫁さんが来ると思ったら逆に抱かれた話。

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「結婚、ですか」

「そうだ。お前ももうすぐ成獣なのだから」

「はい、兄さま」
ぼくはキツネ獣人の神楽かぐら。キツネ獣人には珍しい、母譲りの銀色の毛並みに、神秘的な紫色の瞳を持っている。
だが、このかわいらしい(個人的には不本意)顔立ちと、小柄な体型。
他の獣人たちのキツネ獣人のイメージは、やっぱり神秘的で大人びた美人ーーらしい。瞳は紫色で神秘的なのだが、もうちょっと大人びていたら、と言われること多数。

ぼくの実家は名家で、15歳の時に家同士の契約で決まった婚約者がいるのだけど、きっとこの外見じゃぁ、がっくりされてしまうだろう。だからなかなか、会う度胸も持てなくて、今までだらだらと来てしまった。まぁ、家同士の決め事だから、会って残念がられても結婚しないわけにはいかない。だけど、どうせなら愛し合った夫婦生活を送りたいし。がっかりされるのは嫌だなぁ。

でも、会ってみたいという気持ちはあるのだ。
金色のふわふわ毛並み。
兄さまからはかわいらしいと言われてしまったのだが。
まぁ、金や銀の毛並みは人気なんだけどね。ぼくも銀色だけど、外見がキツネ獣人っぽくないと言われてしまうのだ。
兄さまは灰色の毛並みだが、大人びており妖艶な外見だから、とてもモテる。妻であり、義姉さんともラブラブ。お見合い結婚だったけど、2人の相性はぴったり。
政略結婚であっても、ぼくも兄さまたちみたいなラブラブな夫婦になりたい。
義姉さんは金茶の毛並みのキツネ獣人。大人びたクールな美女という感じ。
義姉さんからは、妹ができたみたいと言われているのだけど、でも、一応男の子だもん!
ぼくはお嫁さんが欲しいの。そしてそれは獣人の本能でもある。
獣人はオスでも孕むことができる者がいる。ぼくもそうなのだが、メスと番うこともできる。

そんな中ーー

「いいから、婚約者と会ってきなさい。ずっと引き籠っているわけにはいかんだろう?それに、相手方もお前と是非と仰っている」
「はぁい、兄さま」
そう言われれば、行かざるを得ないだろう。
まぁ、こんなぼくでも是非と言ってくれるなら、会ってみるだけ会ってみようかな。

***

金色のふわふわ。
それは、幼い頃に見た、とても幸せで、ふわふわなキツネ獣人との出会いを発端としている。
とてもやさしそうなキツネ獣人で、金色のふわふわしっぽを持っていた。
普通、獣人と言うのは親しい間柄ーー家族、夫婦とか恋人じゃないかぎりはしっぽや耳を触り合ったりはしないのだ。
だが、子どもだった当時のぼくは、その魅惑のふわふわに思いっきりもふっと身体を埋めてしまったのだ。そのふわふわの持ち主は、ぼくより2~3歳年上だったと思う。ぼくのもふりに驚いたようではあったが、優しく俺の頭を撫でてくれた。

多分それは、初恋だったのだろう。
だから、そんな魅惑のふわふわを持っているお嫁さんが欲しいなと常々思っているわけである。

会う約束をしている料亭の一室。恐る恐る入ると、そこにはーー

「初めまして。私はくぬぎ。神楽くんだよね。よろしく」
そこにいたのは、美しいキツネ獣人の青年だった。
とてもきれいな金色の毛並みに、蜂蜜のような甘く妖艶な瞳。ふわっとした1本のしっぽは通常のキツネ獣人のしっぽよりも大きく、もっふりしている。

「あ、はい。神楽、です」
まぁ、恐る恐るテーブルを挟んだ正面に腰掛ける。決してそのもっふりしっぽにつられたわけではない。断じて。

「ずっと君にアプローチをしていたんだけど、なかなか承諾が得られなくてね」

「承諾、ですか?」
ぼくは断ったことなんてないけど。アプローチ?されたっけ?それとも兄さんが気を利かせたのかなぁ。ぼく、出不精だから。

「けど、私は君とつがいたいと思って」

「つがっ!?」
は、初めてで番いたいって、そこまで言うっ!?

「あぁ、ごめんね。急すぎて。でも、君がかわいすぎるから」

「あぅっ」
また、かわいいって。

「このしっぽ、もふりたくないの?」
そう言って、椚さんがもっふりしっぽを両手でよそって、ぼくのまえでゆらゆら揺らしてくる。

「はぅあっ!!」

「うん、かわいい」

「うぅっ」
あんまり、かわいいと言われてもっ。

そして椚さんがゆっくりと立ち上がり、もっふりしっぽを持って、ぼくの隣に優雅に腰掛けてくれる。

「あ、うっ」
目の前にあの至極のふわふわしっぽに勝るとも劣らないつやつやふかふか毛並みがぁっ!!

「触って、いいですよ。私たちは夫夫になるのですから」

「う、うん」
椚さんがお嫁さん。何だかあんまりイメージできないけど、でもふわふわしっぽのお嫁さんは魅力的かも。

恐る恐る手を伸ばして、ふわふわしっぽに触れる。

もふぁさぁっ!!

「はうううぅぅぅっっ!!」

「どう?」

「ひゃああぁぁぁっっ、ふ、ふわふわ、あうぅっ」

「気に入ってもらえて良かった。なかなか会ってくれないから、もしかしたら嫌われているのかもって、不安だったんだ」

「い、いえ!ぼくは、その、ご覧の通りの外見なので、がっかりされるのかと、不安でっ」

「君は、かわいいよ」

「でも、どうせならかっこいい旦那さまにっ」
そう、言おうと思った時だった。

突然押し倒されたのだ。
すぐ上には、椚さんの顔がある。そしてもっふりしっぽが揺れながら、分離した。

「いや―――――っっ!ふわふわしっぽが割れたあああぁぁぁぁぁぁ――――――っっ!!!」
まさに、絶望の悲鳴。

「そこなの?」
ふわふわしっぽが割れたというのに、椚さんはケロっとしている。

「だ、だって、だってぇ、も、もっふ、しっぽぉ~~っ」

「大丈夫だよ。私のしっぽはご覧のとおり、元々9本だから」
9、本?―――って、まさかっ!

「椚さん、獣人じゃなくて、妖人っ!?」

「ふふ、そうなんだ」

「な、なんで、何でっ!?」
獣人が多く住む区画に、妖人がいるなんて、聞いたことがないっ!
妖人はひっそりと暮らしているとは聞いているけれど、ほぼ幻の種族でもあるのだ。
見られたらラッキー、みたいな?
いや、違う。妖人は時に妖術という不思議な術を使うともされていて、一部では信仰も集めるのだとか聞いたことがある。
まさか、自分の婚約者が妖人だったなんてっ!

「その、兄さんたちは、そのことっ」

「知らないよ。私たちはね、先ほどのように獣人や人間の姿に擬態して、隠れて暮らしているんだ。私たちの持つ力は強大だ。だからこそ、隠れて、ひっそりと、身を寄せ合って暮らしている」

「そんな、椚さんが、何で普通の獣人の、ぼくと?」

「それはーー君が、私を恐れなかったから」

「え、あのっ」
確かにそのもっふりしっぽには釘付けになったけども。

「覚えていない?君は昔、私のしっぽに顔を、身を埋めてとても幸せそうにしていた。だからね、私は君をお嫁さんにしようと、固く誓ったんだ」
「え、嫁?椚さんがお嫁さんですよね。ぼくは男の子ですよ?」

「お嫁さんは、君の方だよ。妖人のオスは個体にもよるけど、私の種族はオスは孕めない。獣人はオスでも孕めるだろう?―――君も」

「だ、だからって、ぼくはお嫁さんがっ」

「ふわふわしっぽの旦那さんは、嫌?」

「ふぇぇっ」
そんな、縋るような目で見つめられたらああぁぁぁっっ!!
泣きそうな顔しないでよぉっ!ふわふわしっぽも泣いちゃうよぉっ!

「嫌じゃ、ない」

「じゃ、お嫁さんになってね」

「ふぁい」
決して、ふわふわしっぽにつられたわけじゃない。わけじゃないんだ。椚さんのふわふわしっぽ、大好きだけど。しかも、9本もあるんだよ?素晴らしすぎる。
そして、昔出会ったあのふわふわしっぽの持ち主が、椚さんで、お嫁さんをもらうつもりが、ぼくのほうがお嫁さんになっていただなんて。

***


椚さんに、奥の部屋に連れて来られたぼくは、椚さんがくちゅくちゅと掻き混ぜる指の動きに、身をよじらせる。蕾のナカを掻き混ぜられる快感に思わず喘ぎ声が溢れてしまうが、それを止めることができないほどに、椚さんの指使いが気持ち良すぎるのだ。

「ほぅら、だいぶ濡れてきたし、とろとろだね。そろそろ、挿れようか」

「あぅっ、椚さぁんっ」
ぼくはとろっとろな甘い声で椚さんを呼ぶと、椚さんも妖艶に微笑み、ぢゅるりと舌なめずりをする。

そして、ぼくの目に映るように、股間から聳える立派な雄根を掲げた。

「あ、ぅ、椚さんの、おっきぃ」

「ふふ、そうだね。でも大丈夫。とろとろに解したから」

ごっ

蕾の入口に押し当てられる、カチコチの亀頭。その亀頭が、ぼくの蕾の入口を押し拡げながら、ぐんぐんとナカにびちびちに収まっていく。


ぼくのナカに、椚さんの雄々しい巨根がおさまっていく。あんなにおっきいのが、ぼくのナカにっ!!

「あっ、んああぁぁぁあぁぁっっ、くぬ、ぎ、さぁん」
初めての快感で、もうどうにかなってしまいそうなほど、嬌声が鳴りやまない。

「あぁ、私の神楽。神楽、とってもかわいいよ」
そしてぼくの最奥を椚さんの硬い亀頭が辿り着き、まるで最奥を押し上げるかの如く貫いた。

そして椚さんの巨根が、ぐぷぅっとぼくのナカで膨らみを帯びる。そして、我慢できないと言わんばかりに熱々の白濁汁が、ぼくのナカに勢いよく溢れ出した。


「あっ、ああああぁぁぁぁ―――――っっ」
大量に押し寄せる快楽に、頭がぼうっとしてくる。
それでもなお、椚さんの雄根は満足できないとばかりに、再び膨らみを帯びて、ぼくのナカをこれでもかというほどに満たしていく。

恍惚とした笑みを浮かべながら椚さんが再び腰を振り始め、振り乱す。

椚さんに何度も何度も愛を注がれながら、ぼくは恍惚とした表情を浮かべながら身を任せる。

―――キツネ獣人の交尾は1日30分ほど続く。そして、一度発情してしまえば1週間くらいやりっぱなしというのもあり得る。それはどうやらキツネ妖人でも同じらしい。

ぼくは椚さんに1週間目一杯抱かれた。溺愛され、甘やかされて、蕩けそうになるくらい。

***

こうして、ぼくはお嫁さんをもらうつもりが、椚さんにお嫁さんとしてもらわれてしまった。その後は、椚さんのお屋敷で夫夫ふうふ生活を送っている。毎日ラッブラブふっわふわである。

後から知ったのだが、椚さんの一族はとても古くから伝わる名家で、妖人という種族を隠しながら、獣人界においてもとても地位のある家柄だった。それを知ったぼくは、ぼくがお嫁さんで本当に良かったのかと驚愕した。

だが、椚さんは、自分を何より愛してくれるぼくがいいと甘く囁いてくる。ぼくも、まぁ、椚さんは優しいし、それにふわふわしっぽを好きなだけふわふわさせてくれるので、今の生活はとても好きだ。

普段はしっぽを1本にしている椚さんだが、夜の夫夫の寝室では9本のふわふわしっぽをぼくにたくさんふわふわさせてくれるのだ。

「ふっわふわぁ。あぁ、幸せ」
しかも、大ボリューム。

「あぁ、椚さん、大好き」
何てことを、ふわふわしっぽの前では恥ずかし気もなくついつい言ってしまうものだからーー

「んんっ。また、ムクムクしてきた。神楽、今夜も抱くよ?」
「ひえぇ―――っ!!?」
椚さんの性欲は、とどまることを知らない。



めでたし、めでたし。

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