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第3章

第22話『間の月曜日』

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 5月2日、月曜日。
 3連休明けの月曜日だ。こういう日はいつもの週明け以上に気持ちが重くなりがちだけど、今日はそんなことは全くない。なぜなら、明日から木曜まで再び3連休になるからだ。なので、連休明けというよりはゴールデンウィーク中の登校日という感覚になっている。
 あと、昨日はあおいと愛実、佐藤先生と一緒にオリティアに一般参加したのもある。イベント中はもちろんのこと、オリティアで購入した同人誌を家で読むのも楽しかった。それもあり、今日はいつもよりも目覚めが良かった。

「以前は今年のゴールデンウィークは最大3連休かぁ……とちょっと残念に思っていました。でも、実際に月曜日になると、これはこれでいいなって思えます」
「明日からまた3連休だもんね。いい気分だよね。月曜日じゃない感じ」
「それ言えてますねっ」

 あおいと愛実は楽しそうに笑い合っている。明日から再び3連休だからか、あおいも愛実もいつもの登校中よりも元気そうだ。あと、月曜日じゃない感じという愛実の言葉には同感だ。

「今日学校に行ったら、明日から木曜日まで3連休。それで、金曜日に学校に行ったら、週末の連休になるのか。今年みたいなゴールデンウィークの方が好きだっていう人はいそうだな」
「そうですね。1日学校に行けば3連休を迎えられるのは魅力的ですよね。そう考えたら、今日の学校生活をより頑張れそうです!」
「ふふっ、そうだね」

 今日はいつもとは違う月曜だから、あっという間に一日が過ぎていくかもしれない。そうであってほしい。
 それ以降は昨日行ったオリティアと、会場で買った同人誌のことで持ちきりだった。2人も買った同人誌を昨日のうちに全て読んだそうだ。どれも面白かったとのこと。あおいと愛実はお互いに買った同人誌がどんな感じが気になるとのことで、明日はあおいの家に集まる約束をした。
 オリティアの話が楽しくて、気付けば調津高校に到着していた。
 自分の靴入れを開けると、中には陸上部のマネージャーの手伝いから帰る際に入れた、外用シューズの入った袋があった。……そういえば、連休前ラストはお手伝いだったな。連休中は色々とあったから、随分と前のように感じる。
 上履きに履き替え、シューズの入った袋を持って俺達は2年2組の教室がある4階へ向かった。
 廊下にあるロッカーにシューズの袋を入れ、俺達は教室の中に入った。
 いつもの月曜日と違って、教室の雰囲気が明るいな。明日からまた3連休が始まるからかな。
 また、5月になったので、ジャケットを着ている生徒もいれば、ワイシャツやブラウス姿、ベストやカーディガンを着た生徒もいる。ちなみに、俺はワイシャツに黒のベスト姿、あおいと愛実はジャケットまで着ている。

「麻丘達が来たぜ! おはよう!」
「おはよう、麻丘、香川、桐山」
「みんなおはよう」

 道本、鈴木、海老名さんはいつも通りに鈴木の席に集まっていて、いつも通りに元気良く挨拶してくれた。道本はベスト姿、海老名さんはジャケットを着ていて、鈴木はワイシャツ姿だ。鈴木はワイシャツの袖を肘近くまで捲っていた。そんな彼らに、俺達も元気良く朝の挨拶をした。
 俺達は荷物を机の上に置き、道本達のところに行く。その際、愛実はレモンブックスの黒い袋を持っていた。おそらく、あの袋の中には海老名さんのために買った同人誌が入っているのだろう。

「理沙ちゃん。これ、頼んでいた同人誌だよ。会場限定のクリアファイル付きね」
「特典がつくのね。得した気分だわ。ありがとう、愛実。500円だったよね」
「うんっ、そうだよ」

 海老名さんはジャケットのポケットから財布を取り出し、愛実に500円を渡した。それと引換える形で、愛実は同人誌の入った黒いレジ袋を手渡した。
 海老名さんは袋から同人誌と特典のクリアファイルを取り出す。BLの同人誌だけあって、同人誌もクリアファイルにも2人の男子の仲睦まじそうなイラストが描かれている。綺麗なイラストだ。
 海老名さんは同人誌をペラペラとめくっている。そんな海老名さんの目は輝いていて。また、海老名さんの後ろから、あおいと愛実が覗いている。

「好きな感じの内容の同人誌ね」
「自分の分も買ったけど結構面白かったよ」
「海老名。香川に同人誌を買ってきてもらったんだな。表紙の雰囲気からして……BLか?」
「そうよ、道本君。樹理先生の代理購入のついでに、あたしの分も買ってきてもらったの。スマホで表紙のイラストを見たら好みの雰囲気だったから」
「そうだったのか」
「いいものを買ってきてもらえて良かったな、海老名!」
「ええ!」

 海老名さんは可愛い笑顔で返事する。愛実に代理購入してもらえたり、同人誌の中身も好みの内容だったりして嬉しいのだろう。

「家に帰ったらゆっくり読むわ。これを読めば、明日からの合宿をより頑張れそう」
「今年もゴールデンウィークに陸上部の合宿があるんだな」
「ああ。2泊3日でな。今月は都大会もあるしな。普段と違った環境で練習を頑張るよ」
「あと、1日目の夜は1年生の歓迎会を兼ねて、みんなでバーベキューするぜ! 今年は先輩として盛り上げるつもりだ! 気合いが入るぜ!」

 ニッコニコでそう言う鈴木。鈴木の場合、特に気合いを入れなくても普段通りに振る舞っていれば、自然と雰囲気が明るくなりそうだけど。
 鈴木はもちろん、道本や海老名さん、颯田部長といった面倒見のいい先輩がいっぱいいるから、1年生は陸上部に早く馴染めるんじゃないかと思う。俺がサポートしているとき、短距離走の1年生部員は伸び伸びと走っていたし。

「明日からも合宿、頑張れよ」
「頑張ってね」
「頑張ってくださいね!」
「ありがとう、みんな」
「おう! ありがとな!」
「マネージャーとして、一生懸命サポートしていくわ」

 道本達は爽やかな笑顔でそう言った。怪我や病気には注意して、3日間の合宿を頑張ってほしい。

「やあやあやあ。みんなおはよう。チャイムが鳴るまでは自由にしていていいよ」

 デニムパンツにブラウス。ジャケットを羽織った佐藤先生が教室にやってきた。いつも通りの落ち着いた笑顔を見せているけど、どこか元気そうにも見えて。心なしか肌ツヤも良さそうな。昨日、オリティアに行ったからかな。
 佐藤先生は俺達のことを見つけると、口角を上げてこちらにやってきた。そんな先生に俺達6人は「おはようございます」と挨拶した。

「みんなおはよう。あと、涼我君、愛実ちゃん、あおいちゃん、昨日はありがとう。オリティアも楽しかったし、君達が代理購入してくれたものも含めて、買ってきた同人誌を全部読んだから今日は凄く気分がいいよ」

 全部読んだのか。代理購入したものを含めたら10冊以上あるのに。凄いな。ただ、物理的に薄い本ばかりだから、読もうと思えば読めるのかな。

「良かったですね、佐藤先生。俺も昨日は楽しかったです」
「私も楽しかったです! 樹理先生の代理購入もした同人誌はとても良かったです!」
「私も楽しい一日でした。買った同人誌も面白い作品ばかりで満足です」
「それは良かった。……おやおやおや。理沙ちゃんが持っているのはレモンブックスのレジ袋だね」
「私が代理購入した『深紅庭園』というサークルの新刊同人誌が入っているんです」
「なるほどね。そういえば、昨日のお昼ご飯のときに、理沙ちゃんの代理購入もしたと言っていたね。深紅庭園の同人誌もとても良かったよ」
「良かったですよね」
「2人の話を聞いて、帰って読むのがより楽しみになりました」
「期待していいよ。近いうちに、その同人誌について語り合おうじゃないか」
「はいっ」

 海老名さんが元気良く返事をすると、佐藤先生はニコッと笑って頷いた。
 春休みのお花見でも、海老名さん佐藤先生が買ってきた同人誌を一緒に楽しく読んでいたし、きっと同人誌の語り合いも盛り上がるんじゃないだろうか。オリティアでは、あおいと愛実も先生と同じ同人誌を購入していたので、4人で語る機会があるかもしれない。
 それから程なくして、朝礼の時間を知らせるチャイムが鳴り、今日も学校生活が始まる。
 ただ、今日は3連休と3連休に挟まれた月曜日。いつもと違う一日なのもあって、普段よりも速く学校での時間が過ぎていくのであった。
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