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第3章

第25話『あおいと愛実でお風呂-前編-』

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『ごちそうさまでした!』

 あおいちゃんと私それぞれが、リョウ君の家にお泊まりに来たときの思い出話で盛り上がったのもあり、夕食が終わったのは午後7時半過ぎだった。
 私はリョウ君とあおいちゃんと一緒に、自分の使った食器とコップをキッチンのシンクまで運ぶ。

「2人が作ってくれたカレー、凄く美味しかった。バイトしてお腹も空いていたし、おかわりしたカレーも余裕で食べられたよ。ありがとう」

 リョウ君は素敵な笑顔でそう言ってくれる。そのことにちょっとキュンとなった。
 夕食に何を作るかあおいちゃんと相談したとき、リョウ君の大好物のカレーがいいんじゃないかって提案してみて良かったよ。リョウ君の笑顔をたくさん見られたし、みんなで楽しく食べられたから。

「いえいえ。涼我君がいっぱい食べてくれて嬉しかったです! ね、愛実ちゃん」
「そうだねっ。美味しそうに食べてくれて嬉しかったよ。あおいちゃんと一緒にいっぱい作った甲斐があったな」

 チキンカレーはまだまだ残っている。だから、残りのカレーは明日の朝食で食べることになった。一晩経ったカレーはより美味しくなるから、明日の朝食も楽しみだな。

「食事の後片付けは俺がやるから。2人はゆっくりしたり、お風呂に入ったりしてくれ」
「ありがとう。だけど、リョウ君大丈夫? バイトの後だけど」
「疲れていませんか?」

 先日、リョウ君は疲労が溜まって体調を崩したから、つい心配になってしまう。あおいちゃんも同じ思いなのか、心配そうな様子でリョウ君に問いかけていた。

「2人の作ったカレーとサラダを食べて、みんなで楽しく話したら疲れが取れてきたよ。後片付けくらいなら全然平気さ」

 リョウ君はいつもの落ち着いた笑顔でそう言ってくれる。この笑顔を見る限り、疲れを隠しているようには見えない。きっと大丈夫だと思う。10年間一緒にいるからそう思える。

「分かった。じゃあ、お言葉に甘えて後片付けはリョウ君に任せるね」
「よろしくお願いします」
「ああ、任せろ。……父さん、母さん。お風呂はあおいと愛実が先に入っていいよな?」
「いいよ」
「ゆっくり入っていいからね~」

 リビングから、智子さんと竜也さんがそう言ってくださった。そんなお二人は今、食後のアイスコーヒーを楽しんでいる。

「とのことだ。だから、お風呂に入っていいよ」
「分かったよ、リョウ君。あおいちゃん、入る順番はどうする? それとも一緒に入る?」

 これまで、女の子とお泊まりしたときは、一緒にお風呂に入ることが多かった。だから、今のような訊き方になったのだ。
 一緒に入るって訊いたからかな。あおいちゃんの目が見る見るうちに輝きを増していく。

「是非、一緒に入りましょう! お泊まりすると決まったときから、愛実ちゃんと一緒にお風呂に入りたいと思っていたんですっ!」

 あおいちゃんはとても嬉しそうにそう言うと、両手で私の右手をぎゅっと握ってきた。私と一緒に入りたいと思っていたんだ。それを知って嬉しくなる。

「分かった。じゃあ、一緒に入ろうか」
「はいっ!」

 あおいちゃんは元気良く返事する。楽しいお風呂の時間になりそう。
 その後、あおいちゃんが10年ぶりに泊まりに来たからという理由で、リョウ君が私達をお風呂場に連れて行って、シャワーや水道の使い方、浴室にあるシャンプーやボディーソープの種類などを教えてくれた。
 ボディーソープはうちで使っているシリーズと同じで香りだけが違うから、ここのを使わせてもらおうかな。
 リョウ君とは脱衣所の前で別れて、私はあおいちゃんと一緒にリョウ君の部屋に戻る。
 バッグから入浴中に必要なものや着替えを取り出し、それらを持ってあおいちゃんと一緒に1階の脱衣所に向かった。

「愛実ちゃんとのお風呂、楽しみですっ!」
「私も楽しみだよ」

 あおいちゃんと一緒にお風呂に入るのは初めてだし。それに、これぞお泊まりって感じの時間だから。
 あおいちゃんと隣同士に立って、服を脱ぎ始める。体育の授業のとき一緒に着替えたことは何度もあるけど、裸になるのはこれが初めて。だから、ちょっと緊張もあって。
 布の擦れる音と共に、あおいちゃんの甘い匂いがふんわり香ってくる。なので、あおいちゃんの方をチラッと見ると……あおいちゃんは下着姿になっていた。下着の色が濃い青だから大人っぽい雰囲気が感じられてドキッとする。
 あと、あおいちゃんはやっぱりスタイルがいいな。胸はDカップでそれなりにありつつも、くびれがしっかりしていて。全身に程良く筋肉が付いていて。とても美しい体だと思う。私とは……違うなぁ。

「ふふっ、どうしたんですか? 私の体をじっと見て」

 あおいちゃんは明るく笑いながら問いかけてくる。いつの間にか、あおいちゃんのことをじっと見てしまっていたようだ。

「スタイルのいい綺麗な体だなぁと思って。見入っちゃった」
「そうでしたか。そんな私も……愛実ちゃんの大きな胸がとても良くてじっと見ていました」
「そうだったんだ。全然気付かなかった」
「これがFカップの胸なのかって思いました。友人達の中でも最大級ですね」
「そ、そうなんだ」

 そういえば、これまでもお泊まりで友達と一緒にお風呂に入ったときに「友達の中では一番大きい」って言われたことがあったな。
 あと、最近……持っている下着の中で、ちょっとキツいと思うものがいくつかある。だから、Gカップに近いFカップだと思う。ただ、このことを言ったら、あおいちゃんがどんな反応をするのか分からない。以前、胸のことで羨ましがっていたし。だから、胸の内に秘めておこう。胸だけに。
 あと、あおいちゃんはこの大きな胸がいいって言ってくれたけど……リョ、リョウ君はどうなのかなぁ。男の子だし、大きい方が好きなのかな。これまで、リョウ君が好きだって言った女性キャラクターの胸の大きさは大小様々――。

「頬が赤くなっていますが、大丈夫ですか?」
「えっ?」

 あおいちゃんにそう言われてようやく、顔を中心に全身が熱くなっていることに気付いた。

「あ、あおいちゃんのその青い下着がよく似合っているなって思って。大人っぽい雰囲気だから、ちょっとドキッとしちゃったの」

 さすがに、リョウ君好みの胸の大きさについて考えていたなんて言えない。あと、今の言葉は嘘ではなくて本心だ。

「ふふっ、そうでしたか。ありがとうございますっ」

 爽やかな笑顔でお礼を言うあおいちゃん。

「あおいって名前ですから、青系の色が好きで。愛実ちゃんもそのピンクの下着がよく似合っていますよ。可愛いですっ」
「ありがとう」

 あおいちゃんに褒めてもらえて嬉しいな。次に下着を買うときもピンクの下着にしようかな。
 私達は下着も全て脱いで、必要なものを持って浴室の中に入った。
 リョウ君の家のお風呂に入るのは小学6年生以来だから懐かしいな。でも、あおいちゃんと一緒に入るのは初めてだから新鮮さもあって。

「浴室の雰囲気、昔と変わってませんね。凄く懐かしいですっ」
「あおいちゃんは幼稚園のとき以来だもんね。私も小6以来だから懐かしいよ」
「そうですか」
「……あおいちゃん。髪と背中を洗いっこする? お泊まりで一緒にお風呂に入るとき、お互いの髪や背中を洗うことが多くて。洗ってみたい気持ちもあって。どうかな?」
「いいですね! 私も友達とお泊まりしたときに、髪とか背中を洗うことがありました」
「ふふっ、決まりだね。じゃあ、まずは提案した私があおいちゃんの髪と背中を洗ってあげるよ」
「はいっ、お願いしますっ」

 あおいちゃんは明るい笑顔で快諾してくれた。あおいちゃんが気持ちいいと思えるように頑張ろう。
 あおいちゃんはバスチェアに座り、私はそんな彼女の後ろに膝立ちする形に。
 あおいちゃんの後ろ姿……とても綺麗だな。また、彼女の今の髪型は普段のハーフアップではなく、ストレートのロングヘア。ちゃんとケアをしているのか、髪を洗う直前の今でも艶やかさが感じられる。丁寧に洗わないと。

「じゃあ、髪を洗い始めるね」
「はい。シャンプーは私が持ってきたこのリンスインシャンプーでお願いします」
「うん、分かった」

 シャワーのお湯であおいちゃんの髪を濡らしていく。お湯で濡れた髪も綺麗だ。
 髪を濡らした後、あおいちゃんが持参したリンスインシャンプーを使って、髪を洗い始める。そのことで、普段、あおいちゃんの髪から香ってくる甘い匂いを感じる。このシャンプーの匂いだったんだ。

「あおいちゃん。髪を洗う強さはこのくらいで大丈夫かな」
「はい。とても気持ちいいです」
「良かった。じゃあ、こんな感じで洗っていくね」
「はーい」

 鏡越しであおいちゃんと目が合うと、あおいちゃんは柔らかな笑みを浮かべてくれる。本当に気持ち良さそう。
 引き続き、あおいちゃんの髪を洗っていく。私の髪よりもだいぶ長いから、結構なボリュームを感じる。普段からこの量の髪を洗うのは大変そう。

「あおいちゃん、かゆいところはありませんか?」
「特にありません。……あぁっ、気持ちいいです。この浴室で髪を洗ってもらうと、昔、お泊まりしたときに涼我君や智子さんに髪を洗ってもらったことを思い出しますね」
「……リョ、リョウ君とこのお風呂に入ったことがあるの?」
「はい、あります。私の家に泊まったときにも。髪を洗ったり、背中を洗ったりしました。まあ……幼稚園の頃ですからね」

 そう言って微笑むあおいちゃんの顔は頬を中心にほんのり赤らんでいた。
 あおいちゃんはリョウ君とお泊まりのときに、一緒にお風呂に入ったことがあるんだ。そういえば、昔、リョウ君があおいちゃんのことを話してくれたときにそんなことを言っていたような気がする。まあ、幼稚園の頃だもんね。子供の頃だもんね。それでも……あおいちゃんが羨ましい。
 ただ、この前……体調を崩したリョウ君の汗を拭くとき、あおいちゃんは上半身裸のリョウ君を見て恥ずかしそうにしていたな。小さい頃に比べたら体つきも違うから、恥ずかしくなるのも無理はないか。

「愛実ちゃんは涼我君と一緒にお風呂に入ったことってありますか?」
「お泊まりのときは一度もないな。ただ、小学1年の夏休みに家族ぐるみで一緒に温泉旅行に行ったとき、一度だけ混浴したことがあるよ。泊まったホテルの大浴場に、智子さんがリョウ君を連れてきて」

 私やお母さんが一緒にいるからか、リョウ君はちょっと恥ずかしそうにしていたっけ。今振り返ると可愛く思える。私もドキドキしたけど、リョウ君と一緒に大浴場の広い湯船に入れて嬉しかったことを覚えている。

「そうだったんですか。そのくらいの年齢までなら、混浴してもOKなホテルってありますもんね」

 あおいちゃんは納得した様子でそう言った。
 あれ以降の旅行では、智子さんやお母さんが誘ってもリョウ君が断ったり、学年が上がるとホテルの決まりでそもそも入れなかったりして、リョウ君と一緒に大浴場に入ることはなかった。

「あおいちゃん。そろそろ泡を洗い流すよ。目をしっかり瞑ってね」
「はーい!」

 いいお返事をして、あおいちゃんは目をしっかり瞑る。大変よろしい。
 シャワーのお湯であおいちゃんの髪に付いたシャンプーの泡を洗い流す。髪が長いので流れる泡の量がかなり多い。
 あおいちゃん持参の水色のフェイスタオルで、あおいちゃんの髪を優しく拭いていく。そのことで洗う前以上に艶やかな髪となった。

「こんな感じでいいかな」
「ありがとうございます、愛実ちゃん。髪を纏めますのでちょっと待っていてくださいね」

 そう言うと、あおいちゃんは洗った髪を纏めていく。慣れているようで、長くて綺麗な髪がお団子の形に纏めていく手つきはとても鮮やかだった。
 また、髪を纏めることで、あおいちゃんの背中が露わになる。小さなホクロが2つあるくらいで、全体的に白くて綺麗だ。ムダ毛も全然ないし。中学で3年間テニスをしていたこともあってか、背中にも程良く筋肉がついていて。くびれもしっかりあって。女性の私が見ても惚れ惚れする。

「はいっ、完成です」
「おおっ」

 スムーズに髪を纏めたから、思わず声が漏れてしまった。そんな私に対して、あおいちゃんは「ふふっ」と上品そうに笑った。

「お団子ヘアーも可愛いね。似合ってる」
「ありがとうございます。次は背中ですね」
「そうだね」
「ボディータオルは私が持参したもので。ボディーソープはここにあるものを使いましょうか。うちも同じシリーズを使っているんです」
「うちも使ってる」
「そうなんですね。うちではローズの香りを使っていて」
「ローズいいよね。うちではピーチを使うことが多いよ。今もピーチ」
「ピーチは甘くていい香りですよね。愛実ちゃんが甘くていい匂いがする理由が分かりました。ただ、ここにあるシトラスの香りは爽やかでいいですよね」
「分かる。うちでは夏に使うことが多いかな」
「夏にピッタリかもしれませんね。では、このシトラスの香りでお願いします」
「うんっ」

 あおいちゃんは持参した青いボディータオルを濡らし、ボディーソープを泡立てる。そのことでシトラスの爽やかな香りが広がっていく。それはリョウ君のすぐ近くにいると、彼からほのかに香ってくる匂いでもあって。そう考えると、ドキッとして体が少し熱くなった。

「はいっ、愛実ちゃん。背中をお願いします」
「う、うん。分かったよ。洗っている途中で背中を触るかもしれない」
「分かりました」

 あおいちゃんからボディータオルを受け取る。結構柔らかな手触りだ。
 私はあおいちゃんの背中を洗い始める。
 あおいちゃんは「あぁっ……」と可愛い声を漏らす。気持ちいいのかな。鏡であおいちゃんを見ると、あおいちゃんは柔和な笑みを浮かべていた。

「あおいちゃん。洗い方はどう?」
「とても気持ちいいです。髪もそうですが、愛実ちゃんは洗うのがとても上手ですね」
「小さい頃、お母さんと一緒に入ったときに髪や背中を洗うことが何度もあったからね。あとは、お泊まりで友達と入ったときにも洗うことがあったし」
「そうなんですね。それなら、これだけ上手なのも納得です。友達と……ということは、理沙ちゃんともお泊まりして、一緒にお風呂に入ったこともありますか?」
「何度もあるよ。理沙ちゃんは部活があるから、夏休みとか冬休みとか長期休暇のときを中心にね。もちろん、髪と背中を洗いっこして」
「そうですか。これを何度も経験している理沙ちゃんが羨ましいです」

 可愛らしい声色でそう言ってくれるあおいちゃん。凄く嬉しいな。今後、一緒にお泊まりするときには、あおいちゃんと一緒にお風呂に入って、髪と背中を洗うことをお決まりにしようかな。
 そういえば、理沙ちゃんも「愛実は髪と背中を洗うのが上手ね」って言ってくれたっけ。「洗ってくれる?」ってお願いするときもあって。そういうときの理沙ちゃんって本当に可愛いんだよね。
 今の力加減を心がけて、私はあおいちゃんの背中と腰を洗っていった。

「あおいちゃん。背中と腰を洗い終わったよ」
「ありがとうございます。気持ち良かったです。あとは自分で洗いますね」
「うんっ」

 あおいちゃんにボディータオルを返す。
 まだ体を洗っていないので、少し離れたところに立って、体を洗うあおいちゃんの後ろ姿を見ることに。裸を見るのは初めてだし、あおいちゃんが微笑みを絶やさずに体を洗っているので、彼女がいつもよりも艶やかに見えるのであった。
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