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第4章
第13話『体育祭③-パン食い競走-』
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二人三脚後も競技が続く。
二人三脚でのあおいと愛実のように、緑チームが1位を取ることも何度かある。そのため、総合の点数も2位に浮上した。1位の青チームとは少し差があるけど、競技はまだまだ残っているので、逆転の可能性は十分にあるだろう。
『ここで招集の連絡をします。パン食い競走に出場する生徒のみなさんは、本部テント横の招集場所に集まってください』
おっ、パン食い競走に出場する生徒の招集がかかったか。愛実が出場するので、俺達の視線は自然と愛実の方に集まる。
愛実はいつもの穏やかな笑みを浮かべて、レジャーシートから立ち上がる。
「パン食い競走に出るから、私、行ってくるね」
愛実は落ち着いた口調で俺達にそう言った。そんな愛実に俺達は「頑張れ」とエールを送ったり、グータッチしたりする。
愛実はシューズを履いて、パン食い競走に参加するクラスメイトの女子と一緒に招集場所へ向かった。
「去年、愛実ちゃんが咥えたパンはクリームパンだったね。今年はどんなパンを咥えてくるかなぁ」
佐藤先生は楽しげな様子でそう呟く。去年の体育祭で、愛実がパン食い競走で咥えたパン……先生も分けてもらっていたからな。今年も分けてもらうつもりなのだろう。
「樹理先生、よく覚えていますね。あたし、先生の話を聞いて、愛実が去年はクリームパンを咥えたことを思い出しましたよ」
「俺も種目決めのときに言われて同じことを思ったよ、海老名さん」
海老名さんや俺の言葉もあってか、俺達6人は笑いに包まれる。
「クリームパンを咥える愛実ちゃんが可愛かったし、一口もらったパンも甘くて美味しかったからね。よく覚えているさ」
決め顔でそう言う佐藤先生。さすがは先生だ。きっと、これから行なわれる愛実のパン食い競走も鮮明に記憶されるのだろう。あと、既に終わった100mでの道本と海老名さんや、二人三脚でのあおいと愛実の走りもしっかりと記憶されているのだと思う。
「そういえば、パン食い競走って定番種目って言われてるけど、中学まではなかったなぁ」
俺の後ろに座っている道本がそんなことを呟く。
「俺と愛実も中学まではなかったな」
「オレも同じだ!」
パン食い競走を実施しない小中学校って結構あるのかな。パンを用意するのにお金がかかるからとか。あとは、食べ物を扱うので衛生面の問題もあったりして。
「あおいや海老名さん、佐藤先生はどうでした? 海老名さんは同じ中学だから、中学にはなかったのは分かってるけど」
「あたしは小学校のときにパン食い競走があったわね。パン食い競走用に給食室で作ったものが吊されたの。作り立てで美味しかったわ」
「それはいいですね! 私は中学のときにやりました。学校の近所にパン屋さんがありまして。そのパン屋さんが協力してくれたので、あんパンやチョココロネ、焼きそばパンなどバラエティに富んだ内容になっていましたね」
「先生は涼我君達と同じで高校が初だったなぁ。市販のパンが吊されてた」
「そうだったんですね。学校によって違うんだな、道本」
「そうだな」
パン食い競走を実施する小中学校は普通にあるようだ。
給食室での作りたてのパンや、パン屋さんで作ったパンを咥えられるのはいいな。俺が卒業した小中学校の学区内にもパン屋さんはあったけど、パン食い競走は実施されなかったので羨ましい。
次はパン食い競走だからなのか。コースの真ん中あたりに、複数のパンが吊された物干し竿が設置される。その竿をよく見てみると……市販のパンがいくつも吊されている。どのパンも美味しそうだ。
『続いての競技はパン食い競走です! この競技も男女別で実施します。まずは男子からスタートになります!』
まずは男子からのスタートか。愛実の出番はしばらく後だな。
そして、パン食い競走が実施される。
これまでの徒競技種目と同じで、各チームから生徒1人ずつの計4人での勝負となる。生徒は紐を使って、両手を後ろで縛られている。そのため、生徒達はパンの吊されている竿まで到着したら、ジャンプしてパンを咥えてゲットする形だ。
手を使えないから、中にはパンをゲットするのに苦労する生徒もいる。そのため、二人三脚のように逆転劇が繰り広げられるレースもあって。緑チームの生徒達も、逆転して1位でゴールするレースもあれば、最下位になってしまうレースもある。
また、咥えたけど途中のコースでパンを落としてしまったり、勢いよくパンを咥えたせいで竿が危うく倒れそうになったり、パンを吊している紐が切れたりするといったハプニングもある。そのときには放送委員が大声で実況するので、見ていてかなり面白い。
『次のレースからは女子となります』
おっ、いよいよ女子のレースが始まるのか。
「女子のレースですか。愛実ちゃんが出てくるのが楽しみですね!」
あおいはワクワクとした様子でそう言った。女子のレースになっただけで、愛実の出番がだいぶ近づいた感じがする。そうだな、とあおいの目を見て首肯した。
それから程なくして、女子のパン食い競走がスタートする。
女子の方もパンを咥えるのに苦戦して、逆転劇が起こるレースがある。愛実はあまり苦戦することなくパンを咥えられるといいな。
あと、二人三脚のときと同様に、佐藤先生は女子のレースになると集中して見ている。
「あっ、愛実ちゃんが出てきましたよ!」
「本当だわ。愛実―! 頑張って!」
「頑張ってくださーい!」
あおいと海老名さんがそう言うのでスタート地点の方を見ると、そこには愛実の姿が。今は女子生徒によって、両手を紐で結んでもらっているところだ。
「愛実、頑張れ!」
「頑張れよ、香川!」
「応援してるぜ!」
「頑張ってね、愛実ちゃん!」
俺や道本達も愛実にエールを送る。
俺達の声が届いたのか、愛実はこちらに向いてニコッと笑う。両手を後ろで縛られているから、二人三脚のときのように手を振ってくることはない。
パンが吊されている竿を見ると……おっ、愛実が去年咥えた細長いクリームパンがある。あとは大きなメロンパンに、チョココロネ、ドーナッツか。
「王道のパンが吊されていますね。咥えやすさを考えると、一番いいのは細長いクリームパンでしょうか」
「そうだな。ちなみに、あれが去年咥えたクリームパンだ。あとはメロンパンが大きいから、この2つのパンのところへ行ければ、上位でのゴールが狙えそうだ」
「そうですね」
愛実が上位でゴールできるように応援しよう。
――パァン!
スターターピストルが鳴り響き、愛実のレースがスタートした。愛実、頑張れ!
みんなで愛実を応援しようとした瞬間、
『おおっ!』
赤チームの生徒が勢いよくスタートダッシュして、パンが吊されている竿に向かって走っていく。しかも、その生徒は走っている勢いを利用して高くジャンプし、吊されている細長いクリームパンを咥え取った。
『赤チーム凄い! 流れるようにしてクリームパンを取りました!』
ジャンプしてクリームパンをゲットした赤チームの生徒は勢い止まらず、かなり速いスピードでゴールまで走っていった。敵ながらあっぱれだ。陸上部にはいなかった生徒だけど、どこか運動系部活に入っているのかもしれないな。
赤チームの生徒の走りが凄くて、思わずそちらに視線を奪われてしまった。すぐに愛実の方へ視線を戻す。
愛実はパンが吊されている竿に到着し、メロンパンゲットにチャレンジしている。青チームと黄色チームの女子生徒も同様だ。
「愛実、メロンパンの下に行けたわね」
「これなら2位を狙えそうですね」
「そうだな。愛実! 膝を曲げて、思いっきりジャンプするんだ!」
俺は大きな声で愛実に向かってアドバイスする。……思わず、大きな声で言っちゃったけど、他の2人にも聞こえちゃってるな。
俺の声が届いたのだろうか。それまで愛実はメロンパンに向けてぴょんぴょんしていたけど、一旦立ち止まって膝を深く曲げる。
そして、愛実は勢いよくジャンプした!
愛実は結構高くジャンプし、メロンパンの入っている袋を咥え、取り付けている紐から外すことができた。
愛実がメロンパンを咥えた瞬間、俺達6人は『おっ!』と声を漏らす。
「愛実、メロンパンをゲットできたわね!」
「そうだな!」
「取れましたね! ……あと、勢い良くジャンプしたので、愛実ちゃんのメロンがかなり揺れましたね……」
「ここからでもはっきり分かるほどだったね、あおいちゃん」
あおいと佐藤先生は愛実の何てところに注目しているんだ。まあ、あおいは愛実の大きな胸を羨ましがっているし、体操着越しでも主張が激しい愛実の胸に視線が向いてしまうのだろう。先生は……変態な一面があるからな。教師としてどうかしているかもしれないけど。そんな2人に海老名さんは苦笑い。
愛実はメロンパンを咥えたまま、2位でゴールすることができた。そのことに、嬉しさと同時にほっと一安心。
『2位は緑チームです!』
実況でも愛実の2位が伝えられる。
あおいは嬉しかったようで、アナウンスの直後に俺達5人にハイタッチしていた。
ゴールの近くで、愛実は女子生徒から両手を縛っている紐を解いてもらった。ゴール後の生徒が集まる場所へ行く中、笑顔でこちらに手を振ってきた。
「2位凄いわ、愛実! おめでとう!」
「おめでとうございます、愛実ちゃん!」
「愛実、おめでとう!」
「香川、2位おめでとう!」
「凄くいいジャンプだったぜ、香川!」
「立派な走りだったよ、愛実ちゃん!」
俺達は愛実に祝福の言葉を贈る。
愛実はとても嬉しそうな笑顔を浮かべ、大きな声で「ありがとうございまーす!」と言った。2位の生徒が並んでいる場所に向かっていった。
走り終わった場所にいる生徒達の中には、既にパンを食べている生徒がちらほらと。今は午前10時半過ぎだし、走ったからお腹が空いているのかも。
やがて、女子のパン食い競走も終わり、愛実は俺達のいるレジャーシートに戻ってきた。2位に入ったのもあり、俺達からはもちろん、女子生徒中心に「2位おめでとう!」と言葉をかけられている。愛実は笑顔で「ありがとう!」と言っていた。
「1位の人が物凄く早かったから焦ったけど、2位でゴールできたよ。それも、リョウ君が『思いっきりジャンプしろ』ってアドバイスしてくれたおかげだよ。ありがとう」
「いえいえ。2位おめでとう。あと、大きな声で言ったから、他の生徒にもヒントになっちゃったかなって」
「ふふっ、確かに。でも、この大きなメロンパンだったから、2位でゴールできたよ。リョウ君にはちょっと大きめに分けてあげるね」
「ありがとう」
その後、俺達7人は愛実がゲットしたメロンパンを食べることに。あおいや海老名さん達は一口サイズほど分けてもらっていたけど、俺は二、三口で食べられるほどの大きさを分けてもらった。
愛実が頑張ってゲットしたもので、俺もアドバイスしたからかな。愛実がくれたメロンパンはとても甘くて美味しく感じられた。まだ少し先だけど、これで借り物競走を頑張れそうだ。
二人三脚でのあおいと愛実のように、緑チームが1位を取ることも何度かある。そのため、総合の点数も2位に浮上した。1位の青チームとは少し差があるけど、競技はまだまだ残っているので、逆転の可能性は十分にあるだろう。
『ここで招集の連絡をします。パン食い競走に出場する生徒のみなさんは、本部テント横の招集場所に集まってください』
おっ、パン食い競走に出場する生徒の招集がかかったか。愛実が出場するので、俺達の視線は自然と愛実の方に集まる。
愛実はいつもの穏やかな笑みを浮かべて、レジャーシートから立ち上がる。
「パン食い競走に出るから、私、行ってくるね」
愛実は落ち着いた口調で俺達にそう言った。そんな愛実に俺達は「頑張れ」とエールを送ったり、グータッチしたりする。
愛実はシューズを履いて、パン食い競走に参加するクラスメイトの女子と一緒に招集場所へ向かった。
「去年、愛実ちゃんが咥えたパンはクリームパンだったね。今年はどんなパンを咥えてくるかなぁ」
佐藤先生は楽しげな様子でそう呟く。去年の体育祭で、愛実がパン食い競走で咥えたパン……先生も分けてもらっていたからな。今年も分けてもらうつもりなのだろう。
「樹理先生、よく覚えていますね。あたし、先生の話を聞いて、愛実が去年はクリームパンを咥えたことを思い出しましたよ」
「俺も種目決めのときに言われて同じことを思ったよ、海老名さん」
海老名さんや俺の言葉もあってか、俺達6人は笑いに包まれる。
「クリームパンを咥える愛実ちゃんが可愛かったし、一口もらったパンも甘くて美味しかったからね。よく覚えているさ」
決め顔でそう言う佐藤先生。さすがは先生だ。きっと、これから行なわれる愛実のパン食い競走も鮮明に記憶されるのだろう。あと、既に終わった100mでの道本と海老名さんや、二人三脚でのあおいと愛実の走りもしっかりと記憶されているのだと思う。
「そういえば、パン食い競走って定番種目って言われてるけど、中学まではなかったなぁ」
俺の後ろに座っている道本がそんなことを呟く。
「俺と愛実も中学まではなかったな」
「オレも同じだ!」
パン食い競走を実施しない小中学校って結構あるのかな。パンを用意するのにお金がかかるからとか。あとは、食べ物を扱うので衛生面の問題もあったりして。
「あおいや海老名さん、佐藤先生はどうでした? 海老名さんは同じ中学だから、中学にはなかったのは分かってるけど」
「あたしは小学校のときにパン食い競走があったわね。パン食い競走用に給食室で作ったものが吊されたの。作り立てで美味しかったわ」
「それはいいですね! 私は中学のときにやりました。学校の近所にパン屋さんがありまして。そのパン屋さんが協力してくれたので、あんパンやチョココロネ、焼きそばパンなどバラエティに富んだ内容になっていましたね」
「先生は涼我君達と同じで高校が初だったなぁ。市販のパンが吊されてた」
「そうだったんですね。学校によって違うんだな、道本」
「そうだな」
パン食い競走を実施する小中学校は普通にあるようだ。
給食室での作りたてのパンや、パン屋さんで作ったパンを咥えられるのはいいな。俺が卒業した小中学校の学区内にもパン屋さんはあったけど、パン食い競走は実施されなかったので羨ましい。
次はパン食い競走だからなのか。コースの真ん中あたりに、複数のパンが吊された物干し竿が設置される。その竿をよく見てみると……市販のパンがいくつも吊されている。どのパンも美味しそうだ。
『続いての競技はパン食い競走です! この競技も男女別で実施します。まずは男子からスタートになります!』
まずは男子からのスタートか。愛実の出番はしばらく後だな。
そして、パン食い競走が実施される。
これまでの徒競技種目と同じで、各チームから生徒1人ずつの計4人での勝負となる。生徒は紐を使って、両手を後ろで縛られている。そのため、生徒達はパンの吊されている竿まで到着したら、ジャンプしてパンを咥えてゲットする形だ。
手を使えないから、中にはパンをゲットするのに苦労する生徒もいる。そのため、二人三脚のように逆転劇が繰り広げられるレースもあって。緑チームの生徒達も、逆転して1位でゴールするレースもあれば、最下位になってしまうレースもある。
また、咥えたけど途中のコースでパンを落としてしまったり、勢いよくパンを咥えたせいで竿が危うく倒れそうになったり、パンを吊している紐が切れたりするといったハプニングもある。そのときには放送委員が大声で実況するので、見ていてかなり面白い。
『次のレースからは女子となります』
おっ、いよいよ女子のレースが始まるのか。
「女子のレースですか。愛実ちゃんが出てくるのが楽しみですね!」
あおいはワクワクとした様子でそう言った。女子のレースになっただけで、愛実の出番がだいぶ近づいた感じがする。そうだな、とあおいの目を見て首肯した。
それから程なくして、女子のパン食い競走がスタートする。
女子の方もパンを咥えるのに苦戦して、逆転劇が起こるレースがある。愛実はあまり苦戦することなくパンを咥えられるといいな。
あと、二人三脚のときと同様に、佐藤先生は女子のレースになると集中して見ている。
「あっ、愛実ちゃんが出てきましたよ!」
「本当だわ。愛実―! 頑張って!」
「頑張ってくださーい!」
あおいと海老名さんがそう言うのでスタート地点の方を見ると、そこには愛実の姿が。今は女子生徒によって、両手を紐で結んでもらっているところだ。
「愛実、頑張れ!」
「頑張れよ、香川!」
「応援してるぜ!」
「頑張ってね、愛実ちゃん!」
俺や道本達も愛実にエールを送る。
俺達の声が届いたのか、愛実はこちらに向いてニコッと笑う。両手を後ろで縛られているから、二人三脚のときのように手を振ってくることはない。
パンが吊されている竿を見ると……おっ、愛実が去年咥えた細長いクリームパンがある。あとは大きなメロンパンに、チョココロネ、ドーナッツか。
「王道のパンが吊されていますね。咥えやすさを考えると、一番いいのは細長いクリームパンでしょうか」
「そうだな。ちなみに、あれが去年咥えたクリームパンだ。あとはメロンパンが大きいから、この2つのパンのところへ行ければ、上位でのゴールが狙えそうだ」
「そうですね」
愛実が上位でゴールできるように応援しよう。
――パァン!
スターターピストルが鳴り響き、愛実のレースがスタートした。愛実、頑張れ!
みんなで愛実を応援しようとした瞬間、
『おおっ!』
赤チームの生徒が勢いよくスタートダッシュして、パンが吊されている竿に向かって走っていく。しかも、その生徒は走っている勢いを利用して高くジャンプし、吊されている細長いクリームパンを咥え取った。
『赤チーム凄い! 流れるようにしてクリームパンを取りました!』
ジャンプしてクリームパンをゲットした赤チームの生徒は勢い止まらず、かなり速いスピードでゴールまで走っていった。敵ながらあっぱれだ。陸上部にはいなかった生徒だけど、どこか運動系部活に入っているのかもしれないな。
赤チームの生徒の走りが凄くて、思わずそちらに視線を奪われてしまった。すぐに愛実の方へ視線を戻す。
愛実はパンが吊されている竿に到着し、メロンパンゲットにチャレンジしている。青チームと黄色チームの女子生徒も同様だ。
「愛実、メロンパンの下に行けたわね」
「これなら2位を狙えそうですね」
「そうだな。愛実! 膝を曲げて、思いっきりジャンプするんだ!」
俺は大きな声で愛実に向かってアドバイスする。……思わず、大きな声で言っちゃったけど、他の2人にも聞こえちゃってるな。
俺の声が届いたのだろうか。それまで愛実はメロンパンに向けてぴょんぴょんしていたけど、一旦立ち止まって膝を深く曲げる。
そして、愛実は勢いよくジャンプした!
愛実は結構高くジャンプし、メロンパンの入っている袋を咥え、取り付けている紐から外すことができた。
愛実がメロンパンを咥えた瞬間、俺達6人は『おっ!』と声を漏らす。
「愛実、メロンパンをゲットできたわね!」
「そうだな!」
「取れましたね! ……あと、勢い良くジャンプしたので、愛実ちゃんのメロンがかなり揺れましたね……」
「ここからでもはっきり分かるほどだったね、あおいちゃん」
あおいと佐藤先生は愛実の何てところに注目しているんだ。まあ、あおいは愛実の大きな胸を羨ましがっているし、体操着越しでも主張が激しい愛実の胸に視線が向いてしまうのだろう。先生は……変態な一面があるからな。教師としてどうかしているかもしれないけど。そんな2人に海老名さんは苦笑い。
愛実はメロンパンを咥えたまま、2位でゴールすることができた。そのことに、嬉しさと同時にほっと一安心。
『2位は緑チームです!』
実況でも愛実の2位が伝えられる。
あおいは嬉しかったようで、アナウンスの直後に俺達5人にハイタッチしていた。
ゴールの近くで、愛実は女子生徒から両手を縛っている紐を解いてもらった。ゴール後の生徒が集まる場所へ行く中、笑顔でこちらに手を振ってきた。
「2位凄いわ、愛実! おめでとう!」
「おめでとうございます、愛実ちゃん!」
「愛実、おめでとう!」
「香川、2位おめでとう!」
「凄くいいジャンプだったぜ、香川!」
「立派な走りだったよ、愛実ちゃん!」
俺達は愛実に祝福の言葉を贈る。
愛実はとても嬉しそうな笑顔を浮かべ、大きな声で「ありがとうございまーす!」と言った。2位の生徒が並んでいる場所に向かっていった。
走り終わった場所にいる生徒達の中には、既にパンを食べている生徒がちらほらと。今は午前10時半過ぎだし、走ったからお腹が空いているのかも。
やがて、女子のパン食い競走も終わり、愛実は俺達のいるレジャーシートに戻ってきた。2位に入ったのもあり、俺達からはもちろん、女子生徒中心に「2位おめでとう!」と言葉をかけられている。愛実は笑顔で「ありがとう!」と言っていた。
「1位の人が物凄く早かったから焦ったけど、2位でゴールできたよ。それも、リョウ君が『思いっきりジャンプしろ』ってアドバイスしてくれたおかげだよ。ありがとう」
「いえいえ。2位おめでとう。あと、大きな声で言ったから、他の生徒にもヒントになっちゃったかなって」
「ふふっ、確かに。でも、この大きなメロンパンだったから、2位でゴールできたよ。リョウ君にはちょっと大きめに分けてあげるね」
「ありがとう」
その後、俺達7人は愛実がゲットしたメロンパンを食べることに。あおいや海老名さん達は一口サイズほど分けてもらっていたけど、俺は二、三口で食べられるほどの大きさを分けてもらった。
愛実が頑張ってゲットしたもので、俺もアドバイスしたからかな。愛実がくれたメロンパンはとても甘くて美味しく感じられた。まだ少し先だけど、これで借り物競走を頑張れそうだ。
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