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3 第三王子
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「ここにルーナスト・メディスタム・ブラクルト辺境伯令嬢が来ていると聞いたが!!」
会場の入り口で叫んだのは、スカイブルーの髪を肩まで伸ばし夕陽のようなオレンジの瞳をした男性だった。
「私ですが」
手を少しだけ上げてそう答えると、その男性はズンズンとルーナストの元まで歩いて来た。ベビーピンクの髪と瞳の、小柄な女性の腰を抱きながら。
ルーナストはそこではたと気がついた。目の前に迫る男性の見た目の特徴は、この国の第三王子と酷似している。つまり、ルーナストの婚約者と同じ色を持った男性がルーナストの名を呼びルーナストの方に向かって来ているということだ。
ルーナストは急いで立ち上がり膝を折った。
ルーナストに釣られ、呆けていた周りのご婦人やご令嬢も膝を降り頭を下げる。
「顔を上げろ」
「はじめまして。モルガン・ノエル・カンドルニア第三王子殿下」
顔を上げ挨拶をすると、モルガンはルーナストの美しさを見て目を見開いた。けれどすぐに持ち直したようにキッとルーナストを睨みつけた。
「……ふん。俺の顔くらいは知っていたか。俺と結婚したいと思っている奴の顔を見ておこうと思ってな」
ルーナストはモルガンと結婚したいなどと言った覚えはなかったが、静かに微笑むに留めた。
「いつまで膝をついている。もう立ち上がっていいぞ」
「はい。ありがとうございます」
ルーナストが立ち上がり、目の前のモルガンを見下ろす形になると、モルガンは顔を歪めた。
「おい。なんだその身長は……女のくせに可愛げのない。なんとかできないのか。見苦しいぞ」
吐き捨てるようにそう言ったモルガンに、ルーナストは首を傾げた。
身長など現状存在するどの魔術を使っても伸びたり縮めたりはできない。
「そうですか。ですが、申し訳けありませんが身長は縮めることができません」
「俺と結婚したいと言っている奴が、こんな化物なんて恥ずかしいと思わないのか」
「まぁ……はい」
身長が高いことが恥ずかしいと思ったことはない。
身長が高いなら高いなりに、低いなら低いなりに戦う方法があるからだ。
ルーナストには、戦闘を中心で物事を考える癖があった。
それにそもそもルーナストはモルガンと結婚したいなどと思ったことはない。
ルーナストの歯牙にも掛けない態度にモルガンは顔を真っ赤にした。
「お前っ、お前のような田舎者で野蛮族のブラクルトとなぜ俺が結婚しなければならないのだと思っていたが、やっぱり可愛げもくそもない! お前とは婚約破棄だ!! 俺はリンローズと結婚する! どうしても俺と結婚したかったら土下座でもするんだな!!」
「殿下……」
「はっ、できないだろ!? ざまぁみやがれっ」
その時、シュンと矢が飛んできてモルガンの頬をかすめ、ズザッと地面に突き刺さった。
「ひっ……」
モルガンは情けない声を上げその場に倒れ込んだ。
その後も何発か矢が飛んでくる。
さっと周りを確認すると敵が4、5人はいるようだった。
(こんな状況だというのに、なんで護衛の1人もいないんだ)
ルーナストもその時になって初めてそう気がついた。
お茶会に参加すること自体が初めてだったというのもあるが、こう言う場所で令嬢やご夫人もいる場所に1人の護衛も待機していないと言うのは不自然なことだろう。
ルーナストはとっさにモルガンに覆いかぶさった。
「なっ、おい」
「おとなしくしていてください。大体、このような場所に護衛の1人もつけずに来てはいけませんよ」
「お、俺に指図するな!! ひっ……」
ちょうどモルガンの顔の横に矢が突き刺さり、またもや情けない声を上げたモルガンに、ルーナストは小さくため息をついた。
「どいてもらおうか。お嬢さん」
「いっ……」
背後に現れた敵と思われる男に、髪の毛を掴まれモルガンから引き離そうとされ、頭皮に痛みが走る。
(今の私の知ってる魔術じゃ周りを巻き込まない方法がない……っ)
ルーナストは剣術や体術ばかりをやり魔術をもっと勉強しておかなかったことを後悔した。
術の激しさを優先して派手に多くの敵をなぎ倒せる技ばかりを習得していたのだ。
おまけに今は剣すら持っていない。
(けど、今後悔してたってこの状況は変わらないよね)
ルーナストは心を落ち着かせた。
戦場では焦りや無駄な思考が命取りになるからだ。
会場の入り口で叫んだのは、スカイブルーの髪を肩まで伸ばし夕陽のようなオレンジの瞳をした男性だった。
「私ですが」
手を少しだけ上げてそう答えると、その男性はズンズンとルーナストの元まで歩いて来た。ベビーピンクの髪と瞳の、小柄な女性の腰を抱きながら。
ルーナストはそこではたと気がついた。目の前に迫る男性の見た目の特徴は、この国の第三王子と酷似している。つまり、ルーナストの婚約者と同じ色を持った男性がルーナストの名を呼びルーナストの方に向かって来ているということだ。
ルーナストは急いで立ち上がり膝を折った。
ルーナストに釣られ、呆けていた周りのご婦人やご令嬢も膝を降り頭を下げる。
「顔を上げろ」
「はじめまして。モルガン・ノエル・カンドルニア第三王子殿下」
顔を上げ挨拶をすると、モルガンはルーナストの美しさを見て目を見開いた。けれどすぐに持ち直したようにキッとルーナストを睨みつけた。
「……ふん。俺の顔くらいは知っていたか。俺と結婚したいと思っている奴の顔を見ておこうと思ってな」
ルーナストはモルガンと結婚したいなどと言った覚えはなかったが、静かに微笑むに留めた。
「いつまで膝をついている。もう立ち上がっていいぞ」
「はい。ありがとうございます」
ルーナストが立ち上がり、目の前のモルガンを見下ろす形になると、モルガンは顔を歪めた。
「おい。なんだその身長は……女のくせに可愛げのない。なんとかできないのか。見苦しいぞ」
吐き捨てるようにそう言ったモルガンに、ルーナストは首を傾げた。
身長など現状存在するどの魔術を使っても伸びたり縮めたりはできない。
「そうですか。ですが、申し訳けありませんが身長は縮めることができません」
「俺と結婚したいと言っている奴が、こんな化物なんて恥ずかしいと思わないのか」
「まぁ……はい」
身長が高いことが恥ずかしいと思ったことはない。
身長が高いなら高いなりに、低いなら低いなりに戦う方法があるからだ。
ルーナストには、戦闘を中心で物事を考える癖があった。
それにそもそもルーナストはモルガンと結婚したいなどと思ったことはない。
ルーナストの歯牙にも掛けない態度にモルガンは顔を真っ赤にした。
「お前っ、お前のような田舎者で野蛮族のブラクルトとなぜ俺が結婚しなければならないのだと思っていたが、やっぱり可愛げもくそもない! お前とは婚約破棄だ!! 俺はリンローズと結婚する! どうしても俺と結婚したかったら土下座でもするんだな!!」
「殿下……」
「はっ、できないだろ!? ざまぁみやがれっ」
その時、シュンと矢が飛んできてモルガンの頬をかすめ、ズザッと地面に突き刺さった。
「ひっ……」
モルガンは情けない声を上げその場に倒れ込んだ。
その後も何発か矢が飛んでくる。
さっと周りを確認すると敵が4、5人はいるようだった。
(こんな状況だというのに、なんで護衛の1人もいないんだ)
ルーナストもその時になって初めてそう気がついた。
お茶会に参加すること自体が初めてだったというのもあるが、こう言う場所で令嬢やご夫人もいる場所に1人の護衛も待機していないと言うのは不自然なことだろう。
ルーナストはとっさにモルガンに覆いかぶさった。
「なっ、おい」
「おとなしくしていてください。大体、このような場所に護衛の1人もつけずに来てはいけませんよ」
「お、俺に指図するな!! ひっ……」
ちょうどモルガンの顔の横に矢が突き刺さり、またもや情けない声を上げたモルガンに、ルーナストは小さくため息をついた。
「どいてもらおうか。お嬢さん」
「いっ……」
背後に現れた敵と思われる男に、髪の毛を掴まれモルガンから引き離そうとされ、頭皮に痛みが走る。
(今の私の知ってる魔術じゃ周りを巻き込まない方法がない……っ)
ルーナストは剣術や体術ばかりをやり魔術をもっと勉強しておかなかったことを後悔した。
術の激しさを優先して派手に多くの敵をなぎ倒せる技ばかりを習得していたのだ。
おまけに今は剣すら持っていない。
(けど、今後悔してたってこの状況は変わらないよね)
ルーナストは心を落ち着かせた。
戦場では焦りや無駄な思考が命取りになるからだ。
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