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47 仮面舞踏会のベルガリュード視点

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ベルガリュード視点

貴族令嬢の嗜みと言われるような、刺繍などの細かい作業を苦手にしていることに引け目を感じているらしいと聞いたベルガリュードは、仮面舞踏会に女装して参加することを決めた。
もちろん、それだけでは圧倒的に不自然なので、“女性だと認識する”という認識阻害の一種の魔術を使った。

ベルガリュードは、グランツェに対しても、自分に対しても怒りを感じていたが、それはルーナストに対しても同じだった。
ルーナストにはちゃんと好意を伝えていたはずだし、リンローズとかいう王国の伯爵令嬢に嫉妬した時だって、素直に気持ちを伝えたというのに、グランツェに婚約解消を言い渡されただけで、ベルガリュードのところに確認に来ることもなく、ルーナストはあっさりと身を引いた。

(あの何にも考えてなさそうな飄々とした態度で、実はそれほどまでに拗れていたとは。ルーナストが堂々とした態度で私と結婚するためには多少の荒療治が必要だろうな)

ベルガリュードはルーナストにもう一度、好きになってもらうことに自信があった。
好きな話のジャンルなどもちろん把握しているし、食べ物の趣味だってある程度わかっている。
伊達に、3ヶ月も訓練を共にしていない。

仮面舞踏会ではルーナストはベルガリュードをきっちりとエスコートし、会話も楽しんでいる様子だった。2回目以降の仮面舞踏会からはしっかりと情報収集もしているようで、さすがだと感心した。

(もう少し、もう少し時間をかけて)

ベルガリュードがそう思っていたある日、ロイと話しているところをルーナストに見られてしまった。

「お前……」

声の認識阻害をかけ忘れ、呟いてしまった。
ルーナストは驚いて目を見開いた。

「……閣下、なんですか」

その声は全てを拒否しているかのような硬さを持っていた。
ベルガリュードの中をいろいろな言い訳が駆け巡ったが、結局何も思い浮かばず諦め、頷いた。

「ああ」

ルーナストはただ呆然とベルガリュードを見ていたが、やがて体から力が抜けたように緊張の気配が溶けた。

「はは」

力なく笑うルーナストの瞳からは何も読み取れない。

「そっか。私の好きになった人は、また閣下ですか」

小さな声でそう呟いて、ルーナストは泣きそうな顔をした。
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