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ルーナスト視点

『そっか。私の好きになった人は、また閣下ですか』

その言葉に、ベルガリュードは静かにルーナストに近づいてきた。


「また、私を好きになってくれたのか」
「……そうですよ」

ルーナストは投げやりに応えた。
カツカツとベルガリュードが近づく軍靴の音が響く。

「ルーナスト、私も今でもずっとルーナストを愛している」

ベルガリュードの言葉に、ルーナストは思わずピクリと動いてしまった。

「閣下には本命の女性ができたと聞きました」
「ああ。それが、ルーナストだろう」

ベルガリュードはうなずいてそう答えたけれど、ルーナストはその言葉を信じることはできなかった。
そんなルーナストをベルガリュードは腕の中に囲い込んだ。

「ちょ」

ルーナストはわずかに抵抗するものの、本気の抵抗はできなかった。
ただ身を硬らせ、されるがままに腕の中に収まったまま、ベルガリュードの久々の温もりを感じた。

「私のことを女性だと思っていたはずだが、私を好きになってくれたと言ったな」

ベルガリュードの低い声が密着した体から振動して伝わって、そんな場合ではないのに、何故だか落ち着く。

「はい」
「つまり、私が男だろうが女だろうが、ルーナストは私を好きになってくれたということだろう」
「まぁ、はい」
「私はそれが嬉しい。だが、騙してしまっていたことはすまなかった……」
「……いえ」
「ルーナストは細かい作業を苦手にしていることを気にしているようだが、そんなことが出来なくても、なんの問題もない。それが出来るルーナストでも、できないルーナストでも、私はルーナストが好きなのだから」
「言ってることがよくわかりません」
「つまり、ルーナストが男女どちらの私でも惚れてくれたように、私も、ルーナストが男女どちらだとしても惚れているというこどだ」

それはルーナストがもっとも欲しかった言葉なのかもしれない。
自分でも自覚していなかったルーナストだったが、ベルガリュードの言葉を聞いて、じんわり心が満たされていく気がした。

「そ……れは、嬉しいです」
「兄が、勝手をして婚約解消などしてしまって申し訳なかった。私は、この先ルーナスト以外を愛せることはないだろうと思う。私にはルーナストしかいない。だから、私と結婚してくれないか」
「……私も、閣下に確認しろとショーンに言われたのに、しなかった。閣下の口から婚約解消だと聞くのが怖かったから。だから私の方こそ、すみませんでした。私だって、こんなに好きになる相手は、閣下しかいません。こんな私でも、隣にいて良いのでしたら、嬉しいです」
「居て良いんじゃない。居て欲しいんだ……。良かった。本当に」

「あの、俺は帰って良いですか」

ロイが横から呆れたような声を上げるまで、ベルガリュードとルーナストは熱い抱擁を解かなかった。
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