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20 完
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「まいったな。桜介が怖がんねぇように隠してたのに」
蓮が桜介の耳元で小さくささやいた。
「怖がる……?」
「ああ。安藤洋子って覚えてるか?」
「あ、うん。蓮さんのストーカーだった人?」
蓮は大きく息を吸って、そして決意を固めたように吐き出した。
「だったってか、最近もストーカーされてたんだよ。ピンポンダッシュはするわ、ポストに気色悪いもん入れるわ。んで、危なくておちおちお前とデートにも行けねぇし、今日はあいつをおびき寄せて逮捕するために計画立ててたんだ」
「そんな。最近様子がおかしかったのって、それで……?」
「ああ」
「お、俺、ごめん。蓮さんがそんな嫌な目にあってたのに、俺知らなくて」
「あいつは、桜介を怖がらせて俺と別れさせるのが目的なんだと思ったからな。だから桜介に気づかれねぇようにしてた」
「蓮さん」
「俺はこの通り警察だしガタイもいいからいいんだが、桜介を襲われたらと思ったら気が気じゃなかった……だからその。怒らないで聞いてほしいんだが」
桜介は蓮の歯切れの悪い言葉に不安になりながら先を促すように黙って待った。
「俺が仕事の間、お前のこと、守れねぇだろ? だからその……知り合いの武闘派の探偵をやってる友人に依頼して見張らせてた。桜介のプライベートを侵害する行為だ。悪かった。だが誓って言うが報告は聞いてないぞ。守ってもらってただけだ」
「え……」
「反省はするが後悔はしてない。お前とも別れない」
蓮はキッパリと言い切った。
「で、でも、俺」
「なぁ、俺のこと嫌いになったのか? 頼む。俺に犯罪を犯させねぇでほしい」
蓮のその切実な声に桜介はびっくりした。
「は、犯罪?」
「桜介がこのまま俺と別れて、その新しくできた彼氏のところに行こうとするなら、俺は犯罪を犯さざる追えない」
「な、な何言ってんの……?」
「お前も自由に外を歩き回りたいだろ? ならその新しくできた男とやらの連絡先を俺に渡して、それからそいつの連絡先は消せ。な? それでこの旅行から帰っても俺と一緒に住み続けろ」
「ぅぁ…でも」
「俺のこと、嫌いか?」
「す、好きだよ。嫌いになんかなれるわけない」
桜介が慌てて答えると、蓮は嬉しそうに笑った。
「俺も桜介のことが好きだ。愛してる。だから別れる必要はないよな?」
「……ぅ、うん。その、ごめん。疑って」
桜介がそう謝ると蓮はにっこりと笑った。
「いいんだ。桜介が分かってくれたなら」
「ありがとう、蓮さん。あ、そろそろ夕飯が来る時間かな」
若干のぎこちなさを感じながら桜介がそう言って話題を変えようとしても、蓮は桜介の体を抱きしめたまま動かなかった。
「蓮さん?」
「連絡先、今すぐここで消してくれ」
「え?」
「男の」
「あ、ああ。あれは嘘だよ。騙してごめん。俺に新しい彼氏がいるなら、蓮さんが何も気負わずに俺と別れられると思ってそう言っただけなんだ」
「本当か?」
「もちろん、俺には蓮さんだけだよ」
「そうか」
桜介は蓮のきつめのハグからやっと解放されて、ホッとしつつも少し寂しく感じた。
付き合って1年も経つというのに、まだまだ蓮に触れたくてたまらない。
けれどこれからも桜介は蓮と触れ合えるのだ。
部屋には夕飯が運ばれてきて、机の上に豪華な懐石料理が並ぶ。
桜介は、ここ最近の憂鬱が嘘のように晴れ渡った気持ちで、夕飯を済ませた。
ヒュ~~~ドォォン!
外から響いた音で、桜介はびっくりして窓の近くの襖を開けた。
「蓮さん! 花火だよ!」
「ああ」
桜介が喜ぶのを見て、蓮はうっすらと微笑んだ。
「もしかして蓮さん、今日花火が上がること知ってた?」
「ああ。だからここを選んだんだ。桜介に渡したいものがあるんだが受け取ってくれるか」
「え……。な、何?」
蓮は、ポケットから掌サイズの箱を取り出した。
その形状はまさに指輪が入っているのだと誰が見ても分かる代物だ。
蓮がぱかりと開けたその箱の中には、当然のように指輪が鎮座していた。
「なぁ、桜介。受け取ってくれるだろ?」
そう言って、蓮は桜介の左手を手に取り、スルスルと指輪を嵌めてしまった。
「これって、だって」
「日本じゃ入籍は無理だが、挙式はあげよう。お揃いのスーツを着て、教会で。桜介、俺と結婚してくれ」
ぶわりと色んな感情が溢れてきた。
「はい、よ、よろしくおねがいします」
完
蓮が桜介の耳元で小さくささやいた。
「怖がる……?」
「ああ。安藤洋子って覚えてるか?」
「あ、うん。蓮さんのストーカーだった人?」
蓮は大きく息を吸って、そして決意を固めたように吐き出した。
「だったってか、最近もストーカーされてたんだよ。ピンポンダッシュはするわ、ポストに気色悪いもん入れるわ。んで、危なくておちおちお前とデートにも行けねぇし、今日はあいつをおびき寄せて逮捕するために計画立ててたんだ」
「そんな。最近様子がおかしかったのって、それで……?」
「ああ」
「お、俺、ごめん。蓮さんがそんな嫌な目にあってたのに、俺知らなくて」
「あいつは、桜介を怖がらせて俺と別れさせるのが目的なんだと思ったからな。だから桜介に気づかれねぇようにしてた」
「蓮さん」
「俺はこの通り警察だしガタイもいいからいいんだが、桜介を襲われたらと思ったら気が気じゃなかった……だからその。怒らないで聞いてほしいんだが」
桜介は蓮の歯切れの悪い言葉に不安になりながら先を促すように黙って待った。
「俺が仕事の間、お前のこと、守れねぇだろ? だからその……知り合いの武闘派の探偵をやってる友人に依頼して見張らせてた。桜介のプライベートを侵害する行為だ。悪かった。だが誓って言うが報告は聞いてないぞ。守ってもらってただけだ」
「え……」
「反省はするが後悔はしてない。お前とも別れない」
蓮はキッパリと言い切った。
「で、でも、俺」
「なぁ、俺のこと嫌いになったのか? 頼む。俺に犯罪を犯させねぇでほしい」
蓮のその切実な声に桜介はびっくりした。
「は、犯罪?」
「桜介がこのまま俺と別れて、その新しくできた彼氏のところに行こうとするなら、俺は犯罪を犯さざる追えない」
「な、な何言ってんの……?」
「お前も自由に外を歩き回りたいだろ? ならその新しくできた男とやらの連絡先を俺に渡して、それからそいつの連絡先は消せ。な? それでこの旅行から帰っても俺と一緒に住み続けろ」
「ぅぁ…でも」
「俺のこと、嫌いか?」
「す、好きだよ。嫌いになんかなれるわけない」
桜介が慌てて答えると、蓮は嬉しそうに笑った。
「俺も桜介のことが好きだ。愛してる。だから別れる必要はないよな?」
「……ぅ、うん。その、ごめん。疑って」
桜介がそう謝ると蓮はにっこりと笑った。
「いいんだ。桜介が分かってくれたなら」
「ありがとう、蓮さん。あ、そろそろ夕飯が来る時間かな」
若干のぎこちなさを感じながら桜介がそう言って話題を変えようとしても、蓮は桜介の体を抱きしめたまま動かなかった。
「蓮さん?」
「連絡先、今すぐここで消してくれ」
「え?」
「男の」
「あ、ああ。あれは嘘だよ。騙してごめん。俺に新しい彼氏がいるなら、蓮さんが何も気負わずに俺と別れられると思ってそう言っただけなんだ」
「本当か?」
「もちろん、俺には蓮さんだけだよ」
「そうか」
桜介は蓮のきつめのハグからやっと解放されて、ホッとしつつも少し寂しく感じた。
付き合って1年も経つというのに、まだまだ蓮に触れたくてたまらない。
けれどこれからも桜介は蓮と触れ合えるのだ。
部屋には夕飯が運ばれてきて、机の上に豪華な懐石料理が並ぶ。
桜介は、ここ最近の憂鬱が嘘のように晴れ渡った気持ちで、夕飯を済ませた。
ヒュ~~~ドォォン!
外から響いた音で、桜介はびっくりして窓の近くの襖を開けた。
「蓮さん! 花火だよ!」
「ああ」
桜介が喜ぶのを見て、蓮はうっすらと微笑んだ。
「もしかして蓮さん、今日花火が上がること知ってた?」
「ああ。だからここを選んだんだ。桜介に渡したいものがあるんだが受け取ってくれるか」
「え……。な、何?」
蓮は、ポケットから掌サイズの箱を取り出した。
その形状はまさに指輪が入っているのだと誰が見ても分かる代物だ。
蓮がぱかりと開けたその箱の中には、当然のように指輪が鎮座していた。
「なぁ、桜介。受け取ってくれるだろ?」
そう言って、蓮は桜介の左手を手に取り、スルスルと指輪を嵌めてしまった。
「これって、だって」
「日本じゃ入籍は無理だが、挙式はあげよう。お揃いのスーツを着て、教会で。桜介、俺と結婚してくれ」
ぶわりと色んな感情が溢れてきた。
「はい、よ、よろしくおねがいします」
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鈴様
コメントありがとうございます^^
いろいろな作品を読んでいただき嬉しいです☺️
泣いていただけたなんて嬉しくて、また切ない話を書きたくなりました😆