ヒロインは他に任せて

オウラ

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1つ目の宝玉と

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 アネルが顔を真っ赤して、部屋を出て行ってしまってから、はや数十分。未だに帰ってこない彼を放っておいて(何気に酷いな)、残された私達は現在壮絶な言い争いをしていた。



「だから、それは危険だって行ってるでしょ!!もう数日経ってからでも遅くないよ。」
「セシル、何度言えばわかるのですか。今回の事は仕方ない事ですが、時間が押しているのですよ。一刻も早く行動しなくては」
「全く、ディー君はせっかちだよねぇ。勇者ちゃんに何かあってからじゃ遅いんだよ?」
「いや、あの。私は大丈夫なんで、ね?早く行った方がこの村のためだし、ひいては国のためになると思うんですけど」
「……ルーナ、君はもっと自分を大切にしたほうがいい。それに、君に何か起きたらそれこそ、何もかもが遅いんだから。」

 ……いや、殿下、それだけはあなたに言われたくない。貴方が、私を一番危険な目に合わせているんですけど!!







 さて、この言い争いの事の発端はついさっき。私が気を失っている間に、セシルちゃん達が行った情報収集の結果を聞いていた時に起きた。


 なんでも、情報収集の結果精霊達が凶暴化したのは今から1ヶ月前までに遡るらしい。そして、今現在、その凶暴化した精霊達は村はずれの洞窟に潜んでおり、近づく村人を襲うらしいとのこと。

 宝玉がある場所は厄災の拠点。という事実と照らし合わせると、その洞窟に宝玉があるもしくは、凶暴化した精霊達が持っているという事になる。自体は一刻を争う。さっさと洞窟に入って、宝玉を手にするべきである。が、そうは問屋がおろさなかった。


「ルーナ、ダメだよ。まだ完全に治ってないんだから完治してからじゃないと!」

 セシルちゃんを筆頭に、私の身を心配して、完治するまでは安静にしていないとダメ派が、出てきてしまったのだ。
 心配してくれるのは嬉しいし、ありがたい。でも、それとこれとは別。国を救うためには一刻も早く宝玉を手に入れる必要があるのだ。そりゃぁ、もっと休んでいたいが、少しでも手に入れるのが遅れたら破滅エンドになってしまい、私を含めてみんな死ぬのだ。嫌だよ、そんなの!!
 だから、ここはなんとか説得して、一刻も早く行動しなくてはいけないのだ。完治してないのに大丈夫かって?んなもんどうにかする。



「あー、でも、私は大丈夫なんで「ダメなんだからね!絶対安静!!」

 わたしのことばを遮り、ピシリと指を突き出すセシルちゃん。うん、可愛い。可愛くてついつい承諾してしまいそうだが、そう言うわけにもいかない。なんとかして、行く方向に持っていかなくてはならない。



「心配してくれて、ありがとうございます。確かに、このまま行くのは不安要素があるけど、でも、それでも、私は勇者ですから。国を救うって使命があって、それは私にしか出来なくて、少しでも早く救う必要があるから。私は、もう勇者で、私の命は既に国に捧げたものだから」

 だから、行かなくてはならないのだ。心にも思ってないが、そんな様な事を言えば、案外納得してくれるだろう。……と思ったが

「ダメ!」

 残念、そう一喝された。何故だ、普通ならそこで感動されて、オッケーが出るのに!そんなもんでしょ!?世の中って

「なにを言おうがダメなものはダメ。確かにルーナは勇者で、この国を救うって大きな使命があるよ?でも、ルーナに何かあったらそれこそ意味がないんだからね。既に、ルーナの命は、ルーナだけのものじゃないなら、なおさらだよ」

 まごうことなきお言葉。納得せざるおえない状況。


「いや、でも」
「でもじゃない!!」

 絶対にダメなんだからね。と頑なに許そうとしないセシルちゃん。まさかここまで頑固な子とは思わなかった。でも、そこもかわいい!!流石私が見込んだ娘。

「だいたい、なんでそんなにルーナは死に急ぐの。その怪我だって、私たちを守る為に、犠牲になったのが、原因みたいなもんじゃん。いくら勇者だからって、自分の身まで投げ打って全てを助けようとしなくたっていいんだよ!?なんで?本当になんで、そこまでしようとするの?」
「それは……」

 それは何故だろうか。と考えてみれば答えは1つしかない。死にたくないからだ。国を救う為、世のため人のため、苦しんでる人間を増やしたくない。とかいう大それた理由ではなく、死にたくないから、死なないように生きている。まぁ、それが、死なないように動いている結果が、死を導いているという、なんとも矛盾するものになっているわけだが………それでも、私は死にたくないから、こんな行動を取ってきたのだ。ぶっちゃけいって、全ては自分のため。でも、そんな事言えるわけない。それは、なんとも勇者らしくない答えだ。答えたら、このパーティーの士気を下げる結果になる。今後のため、それは避けたい。


「……特に理由がないのにそこまでするの?」

 いや、理由はあるんだよ、理由は。ただ、その理由があんまりだから言えないだけで

「………ねぇ、ルーナ。やっぱりこうも無理をする必要はないと思うよ。少しぐらい休んでも、誰も責めたりしないよ。それに、私たちもいるから。少しぐらいは頼ってよ。………勇者だからってすべて1人で抱え込まなくてもいいんだよ?」

 セシルちゃんの甘い誘惑。あぁ、ちょっとくらいはこのまま休んでもいいかなと思えてしまった。危ない、危ない。
 にしてもだ。今の発言からすると。もしかして、セシルちゃんから見ると、私は「全てを抱え込む勇者」的な感じで、見えてたのだろうか。なんと言う誤解。私そんないい人じゃない。正義感もない、ただの一般人だというのに。なんと言う罪悪であろうか。くっ、心が痛む!!まぁ、あえてとかないけれど!






「…………あははははは、は。お気遣いありがとうございます。セシルちゃん。でも、それでも私は勇者なので、いかなくてはいけないんです」

 たとえ、セシルちゃんにヒロインを任せたとしても、面倒ごとを丸投げしたとしても、それでも私が、勇者であることには変わらない。結局、世界を救うか救わないか、自分が助かるか助からないかは、自分の選択肢次第なのだ。


「でも!それじゃあ、いつか無理のしすぎでルーナが死んじゃうかもしれないんだよ!? 」

「……だったら、見守っていて、守ってくださいよ。ね?私が死なないように、仲間なら」

にこりと、そう微笑めばセシルちゃんは、それ以上何も言わなくなった。

 そして、その後、なんとか皆んなを説得し、結局明日、例の洞窟へと向かうという事となった。いやぁ、一時はどうなるかと思ったがなんとかなった。多分私の熱意が通じたのだろう。それがどんな風に通じたにせよ、良かった。多分皆んな、私が勇者という多大な使命を背負う~的なこと勘違いしていそうだが……まぁ、よしとしよう、罪悪感はあるが。






「以外だな。君があそこまでするなんて」

 そして、ここにそんな勘違いをした男が1人。あの話し合いの後、皆んな部屋を出て行ったというのになぜか殿下だけがここに残ったのだ。一緒に出て行ってくれればいいものの。

「で?どういう意図があるんだい?」


 ドスンとベッドの淵に座り、こちらに微笑みかける殿下。気のせいだろうか、顔が近い気がする。


「……はぁ、意図もなにも、ただ単に早く宝玉を見つけた方がいいかと思っただけですよ。国を救うために……」


 と、言った瞬間やってしまったと思った。よくよく考えたら、この人この国を滅ぼそうとしていたんだった。

「ふーん。俺のやろうとしていることを知って、そんな事を言うんだ。」

 冷たい、絶対零度な視線で見つめてくる殿下。いやはや、恐ろしい。

「……この俺に殺されるかもしれないのに、この国を救おうとする君のその意欲はどこからくるんだい?」

 いや、別に救おうと思ってやってるわけじゃないんですけどね。自分のためですけどね。あと、家族とかそこら辺の人達のため。それ以外は実はどうでも良かったり……

「前から気になってたんだよね。命を危険にさらしてまでして、救う価値って本当にあるのかい?」


「 ………ありますよ、あるに決まってるじゃないてますか」

 だって自分のためだから、命をかけるよ、そりゃ。


「逆に聞きますけど、殿下にとって滅ぼすほどの価値があるんですか?リスクだって大きいですよね?そこまでして滅ぼしたいんですか?この国を」

 ぶっちゃけ、滅ぼすくらいなら手のひらでコロコロと転がした方が、いいような気もするよ。みているこっちからしたら、その方が何十倍も良い気がする。


「そんなの……あるに決まってるだろ。俺を蔑ろにした、奴らの苦しみもがく姿が見たい。そのためには俺はなんだってするさ。」
「だったら、私もそれと同じです。自分が死にたくないから、家族やアネルとか大切な人が苦しむ姿が見たくないから国を救うんです。ぶっちゃけその他大勢はどうでもいいですけど、私の大切な人が苦しむのは見たくありませんから」

 似ているようで、似ていない。全く正反対の理由の上で、私と殿下は動いていると言うわけだ。
 まぁ、どっちも自分本位って事にはかわりないか。だって、私は最悪、自分と家族とその周りさえ救えれば良いから。まぁ、ついでに国を救って英雄になるのも悪くないかなレベルだから。



「………成る程。でも、ルーナ、君がいくら国を救いたいと言っても、家族を救いたいと言っても、俺がかけた呪いがある限り君がこの国を救う未来なんてないと思うけれど。」

 確かにそうだ。そんな未来もなくはない。ゲームでは、殿下以外のルートならば、特に彼の本性もバレることなく、彼が自国を滅ぼすこともなく終わるが、実際はどうなのかわからない。どう転ぶのかわからない。セシルちゃんが見事、ディルクルートあたりを引き当ててくれればいいが、なんかこのままだと、色々とやばい気がするんだよね。ゲームごとく、御都合主義で動いてくれた方個人的には嬉しいが、最悪なのこともそろそろ私は考えた方がいいのだろうか。仮にそんな未来が来たら、まぁ、やる事は、できることは1つだけだろうけど。

 殿下を殺して、私も死ぬ。

 ゲームでは一種のバットエンドだったそれを実行に移すしかないだろう。でもこれは、私が望まないもの。死にたくない私にとってそれは、最悪の手である。その手を使う前までもなく、事が済むようにすればいいだけの話。






「……国を救う未来なんてない。確かにそうかもしれません。ですが、国が滅びる未来が絶対というわけではありませんから。」


 そのままじっと殿下の顔を見つめる。……にしてもやっぱり近いな。この距離。

「ふっ……成る程ね。まぁ、そこまで言うなら君なりに頑張って見なよ。呪いかけられてなお、そんな事を言うなんて、愚かとしか言いようがないが」

 思い切りバカにしたその言い方。なんとも癪にさわる。くっ、こいつが王子でさえなければ、呪いさえかかってなければ、3回ぐらい殴ってたのに!!

「まぁ、いいよ。君がその気なら俺も考えがある。いい子にしてれば助けてやらなくもないが………ルーナにその気はないようだしね。」

 ベットから立ち上がりこちらを見下ろしす殿下。恐、目が、目が恐いよこの人!!………やっぱりさっきの3回ぐらい殴ってたのには無しにしよう。この人殴ったら、多分立場とか呪いとか、関係無しに死ぬ。







「……まぁ、ルーナ。君はまだ死ぬときじゃないからね。………だから、これは、返しておくよ。ルーナ」

 ポンと手の平に何かを乗せられたかと思えば、
 じゃあ、そろそろ、ここら辺で
 と行って殿下はそのまま部屋を出て行ってしまった。


 果たして何を返してくれたのやら、殿下が出て行き、誰もいなくなった部屋で、それに目を向ければそこにあったのはいつぞや殿下にとられたネックレス。母さんから預かったお守りだった。
 返してもらったのはとてもありがたいが、何というか今更過ぎないだろうか。
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