18 / 176
哀しみの聖母
(10)
しおりを挟む
「それはこちらの台詞だ、監督生。『哀しみの聖母』の微笑みは健在だな、年齢不詳に年を重ねたものだ。制服を着て校内に戻っても、誰も不審に思わないぞ」
「…褒め言葉に聞こえないよ」
「当然だ、別に褒めている訳ではない」
「確かに。悪戯だけじゃなく舌戦でも並みいる教授方を薙ぎ倒してきた君に褒められた日には、裏に何があるのか真剣に勘ぐらなきゃいけないな」
肩を竦めたレジナルドは、フロント奥の事務室に声を掛け、同僚に一言二言告げるとカウンターから出てきた。
その場を圧する王のように立つジェイムズをまだ暗い喫茶室へ促し、角の照明を一つ点ける。慣れた仕草で椅子を引き、賓客をもてなすようにジェイムズを席に着かせると、記憶にある初夏の日と同じ表情で――取り澄ました微笑よりも断然いいとジェイムズが感心した表情で――片目を瞑った。
「今君はわたしの友人であって、ザ・ジャロルズのお客様じゃない。君が喫茶室の営業時間外に珈琲を飲めるのは、従業員の職権乱用の結果だ。くれぐれも他言無用に頼むよ」
「…褒め言葉に聞こえないよ」
「当然だ、別に褒めている訳ではない」
「確かに。悪戯だけじゃなく舌戦でも並みいる教授方を薙ぎ倒してきた君に褒められた日には、裏に何があるのか真剣に勘ぐらなきゃいけないな」
肩を竦めたレジナルドは、フロント奥の事務室に声を掛け、同僚に一言二言告げるとカウンターから出てきた。
その場を圧する王のように立つジェイムズをまだ暗い喫茶室へ促し、角の照明を一つ点ける。慣れた仕草で椅子を引き、賓客をもてなすようにジェイムズを席に着かせると、記憶にある初夏の日と同じ表情で――取り澄ました微笑よりも断然いいとジェイムズが感心した表情で――片目を瞑った。
「今君はわたしの友人であって、ザ・ジャロルズのお客様じゃない。君が喫茶室の営業時間外に珈琲を飲めるのは、従業員の職権乱用の結果だ。くれぐれも他言無用に頼むよ」
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
121
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる