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千五十話 怖いものは、ある
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「…………こっちがフローレンスが集めた素材で、こっちがカルロスト公爵が集めた素材、か………………愛されてる証拠、ということか?」
実家に戻って来てから二日目、アラッドは先日の様にガルシアやエリナたちと模擬戦を行う……のではなく、フローレンスのキャバリオンを製作するために、専用の部屋にに籠っていた。
「す、凄いですね。アラッド様」
「俺もそう思うよ」
錬金術を行う為だけの部屋には、孤児院出身の子供たちの中に、将来錬金術師の道に進もうと研鑽を積んでいる子供たちや、その子供たちの教師を務める……アラッドの錬金術の師、ソルバースがいた。
「……これほどの素材を使ってマジックアイテムを造れるなんて、羨ましい限りだよ、アラッド」
「それはそうですが、こう……なんともプレッシャーが掛かると言いますか」
アラッドたちの目の前にあるテーブルには、多数の光属性……加えて、聖光属性の功績や素材が置かれていた。
鉱石の中でも、光属性を含む功績は非常に珍しい。
世界は広く、鉱山系のダンジョンから定期的に採掘が出来る場所もあるのだが、だからこそ買取価格は良い価格になる。
そして、それはモンスターに関しても同じことが言える。
(父さんの赤龍帝を造った時もかなりのレア素材を集めたから、大金を使った覚えがあるけど…………絶対に、目の前にある素材たちの総額の方が、高いな……というか、このインゴットなんて聖剣を溶かしたやつじゃないか!!!???)
もう……驚くなという方が無理であり、アラッドの師であるソルバースも同じような反応を示していた。
「はぁ~~~~~……あれですね。国王陛下のキャバリオンを造った時と、同等のプレッシャーを感じますね」
「そういえばそんな事もあったな。一職人としては、国王陛下に自分が造った物を献上……買い取って貰えるのは光栄という言葉では済まないあれだが…………そうだな。いざ実際にやってくれと言われたら、容易には頷けないな」
「……とはいえ、造ると言ってしまった以上、造らないわけにはいきません」
心を落ち着かせ、アラッドはフローレンスの為のキャバリオンを造り始めた。
集中し始めたら、飯時以外はずっとその集中力を保ち続け、フローレンスの為のキャバリオンを造り続ける。
そんなアラッドが同じ部屋にいるからこそ、将来錬金術師を目指す数人の子供たちは、普段以上に真剣にソルバースの講義に耳を傾け、ポーション造りに勤しんだ。
「アラッド、そろそろ寝た方が良いぞ」
「………………この部分が終わったら、寝ます」
「そうか」
師の言葉に反応してから数十分後、アラッドはようやく手を止め、出来上がった部分や使用する素材を亜空間の中に回収した。
「相変わらず、とんでもない集中力だな」
「ミスは、許されませんからね」
フローレンスの……カルロスト公爵が素材が提供しているからという理由だけではなく、単純に一人の錬金術師として、不出来な物を提供する訳にはいかない。
「それもそうだな。それでも、随分と慎重に造っていたな。仕上がるのは……早くて四日後。長くて六日後といったところか?」
「……そうなりそうですね。一応、始まるまで時間はあるので、たっぷりと時間使って俺が今造れる最大限のキャバリオンを造ります」
「そうか……アラッドも、参加するんだったな」
当然、ソルバースの耳にもゴリディア帝国との戦争の話は入っていた。
「……やっぱり、怖いか」
「どうでしょうか…………怖いかは解りませんけど、良い気はしませんね」
「人とモンスターじゃなく、人と人が戦うからか」
「戦場に出る大半の人間にとって、ただ負けたくない……勝ちたいという正義を持って、相手を倒し、殺すわけですからね」
「…………アラッド。騙されはするなよ」
アラッドの錬金術の師であるソルバースは、ちゃんと解っている。
アラッドが……見た目に反して、基本的には確かな優しさを持っている青年だと。
だからこそ、彼は心配だった。
戦場で敵対したものの言葉に、涙に……騙されはしないかと。
「えぇ、解ってます……さっき、怖いかは解らないとは言いましたが、俺にも怖い事はあります……仲間が、死ぬこと。目の前の敵を殺さなかったことで、他の同士たちの誰かが死ぬことです」
アラッドは……強い。
それこそ、全てを出し切ったアラッドには、クロと共に戦場を変えられるだけの力がある。
それでも、一人だけで戦争を終わらせることは出来ず、全員を守り切る事も出来ない。
どれだけ圧倒的な強さを持っていようとも、一人で出来ることには……限りがある。
「だから……例え本気の命乞いであっても、本気の涙であっても……戦争という場である以上、基本的には殺さなければならない」
「…………俺は、お前とは一緒に戦ってやれない。だから、こんな事しか言えないのは情けないが……戻ってきたら、一緒に酒でも呑もう」
「ふふ、良いですね。死ねない理由が増えるのは、嬉しいことですよ、師匠」
師の願いをしかと刻みながらも、アラッドは翌朝から再びキャバリオンの製作に取り掛かかった。
実家に戻って来てから二日目、アラッドは先日の様にガルシアやエリナたちと模擬戦を行う……のではなく、フローレンスのキャバリオンを製作するために、専用の部屋にに籠っていた。
「す、凄いですね。アラッド様」
「俺もそう思うよ」
錬金術を行う為だけの部屋には、孤児院出身の子供たちの中に、将来錬金術師の道に進もうと研鑽を積んでいる子供たちや、その子供たちの教師を務める……アラッドの錬金術の師、ソルバースがいた。
「……これほどの素材を使ってマジックアイテムを造れるなんて、羨ましい限りだよ、アラッド」
「それはそうですが、こう……なんともプレッシャーが掛かると言いますか」
アラッドたちの目の前にあるテーブルには、多数の光属性……加えて、聖光属性の功績や素材が置かれていた。
鉱石の中でも、光属性を含む功績は非常に珍しい。
世界は広く、鉱山系のダンジョンから定期的に採掘が出来る場所もあるのだが、だからこそ買取価格は良い価格になる。
そして、それはモンスターに関しても同じことが言える。
(父さんの赤龍帝を造った時もかなりのレア素材を集めたから、大金を使った覚えがあるけど…………絶対に、目の前にある素材たちの総額の方が、高いな……というか、このインゴットなんて聖剣を溶かしたやつじゃないか!!!???)
もう……驚くなという方が無理であり、アラッドの師であるソルバースも同じような反応を示していた。
「はぁ~~~~~……あれですね。国王陛下のキャバリオンを造った時と、同等のプレッシャーを感じますね」
「そういえばそんな事もあったな。一職人としては、国王陛下に自分が造った物を献上……買い取って貰えるのは光栄という言葉では済まないあれだが…………そうだな。いざ実際にやってくれと言われたら、容易には頷けないな」
「……とはいえ、造ると言ってしまった以上、造らないわけにはいきません」
心を落ち着かせ、アラッドはフローレンスの為のキャバリオンを造り始めた。
集中し始めたら、飯時以外はずっとその集中力を保ち続け、フローレンスの為のキャバリオンを造り続ける。
そんなアラッドが同じ部屋にいるからこそ、将来錬金術師を目指す数人の子供たちは、普段以上に真剣にソルバースの講義に耳を傾け、ポーション造りに勤しんだ。
「アラッド、そろそろ寝た方が良いぞ」
「………………この部分が終わったら、寝ます」
「そうか」
師の言葉に反応してから数十分後、アラッドはようやく手を止め、出来上がった部分や使用する素材を亜空間の中に回収した。
「相変わらず、とんでもない集中力だな」
「ミスは、許されませんからね」
フローレンスの……カルロスト公爵が素材が提供しているからという理由だけではなく、単純に一人の錬金術師として、不出来な物を提供する訳にはいかない。
「それもそうだな。それでも、随分と慎重に造っていたな。仕上がるのは……早くて四日後。長くて六日後といったところか?」
「……そうなりそうですね。一応、始まるまで時間はあるので、たっぷりと時間使って俺が今造れる最大限のキャバリオンを造ります」
「そうか……アラッドも、参加するんだったな」
当然、ソルバースの耳にもゴリディア帝国との戦争の話は入っていた。
「……やっぱり、怖いか」
「どうでしょうか…………怖いかは解りませんけど、良い気はしませんね」
「人とモンスターじゃなく、人と人が戦うからか」
「戦場に出る大半の人間にとって、ただ負けたくない……勝ちたいという正義を持って、相手を倒し、殺すわけですからね」
「…………アラッド。騙されはするなよ」
アラッドの錬金術の師であるソルバースは、ちゃんと解っている。
アラッドが……見た目に反して、基本的には確かな優しさを持っている青年だと。
だからこそ、彼は心配だった。
戦場で敵対したものの言葉に、涙に……騙されはしないかと。
「えぇ、解ってます……さっき、怖いかは解らないとは言いましたが、俺にも怖い事はあります……仲間が、死ぬこと。目の前の敵を殺さなかったことで、他の同士たちの誰かが死ぬことです」
アラッドは……強い。
それこそ、全てを出し切ったアラッドには、クロと共に戦場を変えられるだけの力がある。
それでも、一人だけで戦争を終わらせることは出来ず、全員を守り切る事も出来ない。
どれだけ圧倒的な強さを持っていようとも、一人で出来ることには……限りがある。
「だから……例え本気の命乞いであっても、本気の涙であっても……戦争という場である以上、基本的には殺さなければならない」
「…………俺は、お前とは一緒に戦ってやれない。だから、こんな事しか言えないのは情けないが……戻ってきたら、一緒に酒でも呑もう」
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