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第05章 浮遊大陸編

02 やっと訪れた平和

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 蓮太はビルに向かい入り口の扉に【破壊不能】と【衝撃反射】を付与し、さらに世界一硬い希少金属オリハルコンを精製し、そのオリハルコンで扉を被った。

「よし、これで大丈夫だろ」
「何が大丈夫なのですか、主様?」

 強化を完了すると背後にターニアとラフィエルの二人がいた。蓮太は二人にこの大陸で何があったのか話した。

「え? で、ではここは私達魔族のご先祖様がいた地なのですか!?」
「ああ、どうやらそうみたいだな。しっかし……」

 蓮太は改めてラフィエルを見る。ラフィエルの姿は今は人間だがこれは蓮太が作り変えたからであり、元の姿は人間と呼ぶには難しい姿だった。

「魔族の祖先が人間とはとても思えないんだよなぁ……。明らかに化け物じゃん?」
「わ、私を見ながら言わないで下さいませっ。確かに私の姿はちょっとアレでしたが……」

 蓮太はラフィエルに尋ねてみた。

「ラフィエル、魔界にいる魔族の姿は魔王みたいな姿が一般的なのか?」
「いえ、様々な姿をしておりますよ。人間型もいれば魔獣型もおりますし」
「なるほど」
「あ、でも一番旧い魔族の姿は人間に似ていました」
「人間に?」
「はい。あまりに人間に似ていたため魔界では嫌われておりましたが」
「旧いほど人間に近い……か」

 蓮太はここである仮説を立てた。いつの時代から跳躍してきたか知らないが、地球人というのは大概頭がイカれている。もしかすると魔界に行った人間達は魔物と交配したのではなかろうかと。

「人間と魔物が交配して魔族になった。ありえない話じゃないかもな。そこからだんだんと人間の血が薄れていき、今の姿が主流になったのかもしれないな」
「レンタ、なんでレンタはここにある物がわかる? まるで昔から知ってるみたい」

 そう質問するターニアに蓮太はエルフ達にしか話していなかった秘密を打ち明けた。

「俺は……俺はこの世界の人間じゃないからだ」
「……え?」
「身体はこの世界の人間から産まれたが、魂は違う。俺の魂は地球という星で産まれたんだよ。そしてこちらの世界に生身で迷い込み、一度死んだ。そして生まれ変わったんだよ。ここにある品は俺がいた星にあった物と似ていてな。だからわかったんだよ」
「レンタは迷い人だったんだ」
「迷い人?」

 ターニアはこくりと頷き説明した。

「たまにこの世界に違う世界から迷い込んでくる人間がいる。その人間は私達が全く知らない知識をもってて、ありえないスキルを使う。初代勇者も違う世界からきた人間だった」
「なるほどねぇ~……」

 蓮太は空を見上げた。そして心の中で神に向かい叫んだ。

(ちゃんと仕事しろボケ! やらかしまくってんじゃねぇか!)

 すると今度はラフィエルが蓮太を見る。

「あの……ならば主様もそのありえないスキルをお持ちなのでしょうか?」
「……いや、言っただろ。俺は一度死んでこの世界で生まれ変わったって。生まれ変わった俺はこの世界の住人だ。そんなスキルなんて持ってねぇよ」
「怪しいですね……」
「あん?」
「い、いえっ! 申し訳ございませんっ!」

 蓮太はスキルの事を誤魔化した。スキルは力の全てだ。今さら疑ってはいないが、簡単に話すべきではないと、一応警戒している。

「ま、俺が調べてわかった事はこれで全部だな。一応竜がわんさかいる疑似ダンジョンの出入り口は封印した。間違っても開けるんじゃないぞ。世界が滅ぶかもしれないからな」
「はい」
「ん」

 ひとまずこれで当面の危険は去った。それから蓮太は二人にこれからどうしたいか尋ねてみた。

「私は主様に従うまでなので」
「ん、オセロ!」
「……役立たずどもめ」

 ターニアは遊戯に夢中でラフィエルは自分の意見をもっていない。そして二人には働く気など全くないようだ。蓮太は二人を放置し、中央ビルの前に移動した。

「三人で暮らすにはこの浮遊大陸は広すぎなんだよなぁ。試しに木を一本植えてみたけど……」

 蓮太は空を見上げる。

「あの外郭シールド中々優秀だな。出入りは自由だが中に入るまで雲の塊にしか見えないし、スキルで中の様子を知る事もできない仕組みになってんだもんなぁ」

 ではなぜ蓮太がこの浮遊大陸に気付けたのか。

「まさか本当に雲の中にあるなんてなぁ……。滅びの呪文で崩壊したりしないよな?」

 地球での知識が役に立ったようだ。

《……見つけた!》
「あん? な、なんだ!?」

 これからどうしようか迷っていた時だった。突然植えた木が光り始め、知っている声が聞こえた。やがて光りは少女の姿に変わる。

「あ、お前! ユグドラシルか!」
《ん。久しぶり、マスター》
「そうだった、お前は木があればどこにでも飛べるんだったな」

 木を植えた瞬間、これまでエルフ達を前にも姿を見せていなかったユグドラシルが現れた。

《マスターはなぜ空に?》
「決まってるだろ、戦いやら労働から逃げるためだ。お前、俺が生きてる事わかってたんだな」
《ん。私を召喚したのはマスター。私が消えていないからマスターは生きているとわかってた。そして世界中探してた》
「そこは諦めろよな」
《やだ》

 そう言い、ユグドラシルは蓮太に抱きついてきた。そこにターニア達がやってきた。

「レンタ! それ誰!」
「あん?」
《マスター、あれ誰?》
「……お前ら……何か似てない?」

 二人は背丈も話し方もそっくりだった。違いといえば髪の色だけだ。ターニアは赤、ユグドラシルは緑。

「ターニア、こいつは世界樹だ。ユグドラシル、あいつはターニア、俺の仲間だ。その隣はラフィエル、魔族で俺の奴隷だ」
《ん。私ユグドラシル、よろしく》
「私はターニアだ」
「ラフィエルです。まさか世界樹が地上にも存在していたなんて……」
「……は? ラフィエル、今なんて?」

 ラフィエルは蓮太の問い掛けにこう答えた。

「魔界にも古来から世界樹がありまして」
「はぁ? 魔界って地下だろ? なんで地下……あ、そうか。地下っていっても本当に地下にあるわけじゃないもんな。次元が違うだけで」
「はい。魔界にもちゃんと太陽がありますし、川も海もありますよ」

 そこで蓮太は思った。もしかすると世界樹は突然消えたのではなく、浮遊大陸にいた人物が持ち去ったのではないかと。ここにいるユグドラシルは本来別の世界にいたユグドラシルだ。

《魔界……マスター、私魔界にもいる?》
「さあなぁ……。ラフィエル、そこんとこどうなん?」
「世界樹はありますが……ただの大木でした」
「なるほどなぁ。なんで浮遊大陸人は世界樹を魔界に持っていったんだろうな。何考えてんのかサッパリだ」

 するとターニアがユグドラシルに向けスッと遊戯盤を向けた。それを見たユグドラシルは無言のまま蓮太から離れターニアと対峙した。

「私負けない」
《私強いよ?》

 結果、九手でユグドラシルが圧勝した。ターニアは真っ白に燃え尽きていた。

《修行が足りない》
「なぜ……勝てない……うっうっ……」
《これはただ多く駒をとるゲームだと思っていると負ける》
「容赦ねぇなぁ~……」

 さすがにターニアが可哀想になってきた。

「ユグドラシル、お前何しにきたんだよ?」
《ん。約束が違うから探しにきた》
「は?」

 ユグドラシルは再び勝負を挑んできたターニアを圧倒しながら蓮太に言った。

《世界はまだ変わってない。確かに平和になった。けど、まだ世界は苦しんでる》
「……俺何か約束したっけ?」
《人間、まだ生きてる。エルフをいじめた人間》
「は? いや、エルフは全員エルフィリアにいるだろ。もう解決したはずだ」
《全員じゃない。世界にはまだまだ自分じゃ逃げ出せないエルフがいっぱいいる》
「自分じゃ……あ、奴隷にされてるエルフか!」
《ん。勝ち》
「ぐぬぬぬぬぬ……!」

 真面目な話の途中なので、蓮太はターニアを抱え遊戯盤を片付けるのだった。
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