暗殺者は王子に溺愛される

竜鳴躍

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父親かケヴィンか

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「さぁ、お前の初めてをもらい受けるとしようか…。」


「………断る!」


ブチッ。関節を外して、後ろ手の紐をほどき、足を振り上げて、蹴とばした。

「うぐぅ!!!」


何にも普段鍛えていない、酔っ払いの小太りの中年なんて、『刷り込み』さえ解けていれば、恐れることはなにもない。


痛みで蹲るゲネスを見て、俺は、ここを脱出することを考える。

武器を持ってきていないことが悔やまれる。



「おやおや、とんだじゃじゃ馬だ。」



ジェネシスーーーーーーーーーー。


こいつ相手に、丸腰はまずい。

こいつに散々、暗殺のいろはや戦う術を仕込まれた。




どうしよう。

こいつに見つかって、逃げられる気がしない。

こちらに近寄る間も、蛇に睨まれた蛙のように、俺の体は動かない。





「わん!わんわんっ!!!グルルルルル!!!!!ギャウワゥ!」


「!!?なにっ?」




ーーーーーーーーパトラッシュ!!?



見覚えのある金色の大型犬が、突然入ってきて、ジェネシスに襲い掛かる。



「このっ、くそ犬が!」

ジェネシスは、武器を取り出すと、パトラッシュの体にナイフを突き刺した。


「パトラッシュ!!ダメっ! やめて!もういい!逃げて!」

血まみれになりながら、ジェネシスの喉元に唸り声をあげながら噛みつくパトラッシュ。

俺は、勇気を出してパトラッシュに駆け寄った。


「よくやった、パトラッシュ!!」



冷えた目のケヴィンが、息を切らしてそこへ、飛び込んできた。


「くそっ……!」

「きゅいいん!!」


パトラッシュを蹴り飛ばして、ジェネシスは距離を取った。

俺は、パトラッシュを受け止めて、抱きしめる。




痛かったね。ごめん。ありがとう、パトラッシュ。


「えらいぞ、パトラッシュ。すぐに終わらせるから、しばらくゆっくりしてくれ…。」

ケヴィンは、腰の剣を抜いて、ジェネシスと対峙する。
俺にも1本、貸してくれた。



「くくくく…。」


「何がおかしい?」




「お前、俺とゲネスだけだと思ってないか?俺たちには、国中に仲間がいる。そして、この屋敷にも、俺以外にもたくさんいるぞ。くくくっ、お前たちは袋の鼠だ。…………ブラッキー。こいつを殺せ。そうすれば、お前の養父の命は助けてやろう。」




ジェネシスは楽しそうに笑った。



「ケヴィンをとって父親を見捨てるか、ケヴィンを殺して父親をとるか、選べ?」

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