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巡る季節と変わり始める関係

天人の居ない学校生活

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 友人とくだらない話をしていたおかげでいつの間にか学校に到着していた。
教室に着いた俺達は、それぞれ自分の席に付きホームルームの準備をする。

 俺の席は窓際なので、降り続いている雨の音が一際良く聞こえてくる。

 何となく窓に視線をやると、窓に映ったこちらをからかうような連の顔と目があった。

(…うぜぇ。)
 




 

 なんやかんやありつつも時間は緩やかに過ぎていく。
 
 




 そして、昼には降り続いていた雨も止んでいた。

(止んじゃったな…雨。)

天人に今日はもう会えそうに無い、それどころか次はいつ会えるのかも分からない…そのことに俺は落ち込むのだ。

(雨が降る日でも居ないときあるんだよな…なんで、会いに来てくれないんだろ。)

授業の終わりを告げる鐘の音が校舎全体に響く

「起立、礼、着席。」
 
 日直の声を聞きながら天人が持たせてくれたお弁当に想いを馳せた。

(今日は何入れてくれてるんだろ…久しぶりに天人の弁当食べられるな。)

久しぶりに誰かが作ってくれた俺へのお弁当に顔が緩む。
 そんな考えに浸ってるとまたもや連の邪魔が入る。
 
「よっ!弁当食おうぜ、雨止んだし中庭行こ」
そんな友人の言葉にイライラしながら

「お前、黒沼さんはどうした。黒沼さんと食え、俺を誘うな。」

「そんな冷たいこと言うなよ、お望み通り雫も一緒だぞ」
 そんな連の言葉に俺は笑顔のまま固まった。

「…毎度毎度お熱いお前らカップルのイチャイチャを目の前で見せられる俺の気持ちは無視か?」

そんなやり取りは教室の扉の前で待ってた連の彼女にも聞かれていたらしい

「ごめんね、御神くん。でも、私も中庭で4人で食べたいな」

 黒沼さんのその言葉に俺は首を傾げた
「いや、こっちこそごめん…4人?3人じゃなくて?」

「うん、ほらほら四月一日ちゃん隠れてないでこっち来て」
 
 教室の扉の前に引っ張り出されたのは愛らしい女子と言われる分類の女の子だった。
 彼女は恥ずかしそうにしながら、

「私もお邪魔させて下さい。」

女の子の言葉を無下にするわけにも行かず

「分かったよ、4人で中庭で食べよ」
と俺は今日もそう折れるしかなかった。






4人でお弁当を持ち中庭の座れそうなベンチに腰掛ける。
 屋根があったお陰でベンチは濡れていない。

空を見たら今朝雨が降っていたなんて思えないくらいに晴天だった。

「ほら、お二人さん、レディファーストですよ。雫、私のお手をどうぞ」

などと連がふざけた事をしてる

四月一日さんはチラッとこちらを伺って恥ずかしそうにした後、普通にベンチに座った。
なぜ、こちらを見たのだろか、まぁ、連達は通常運転だし考えるだけ無駄だろう。

 俺もベンチに腰を降ろし天人から渡されたお弁当を出した。

そして、中を開けて固まった

「おっ、時雨のご飯ハートマークじゃん!まじで恋人出来たのかお前、やるな~。」

「まぁ、御神くん彼女さん出来たの?」

「………」

とまぁ、それぞれ反応を見せてくれた…四月一日さんが無言で固まってしまってるが大丈夫だろうか。

(アイツ、本当に何してくれてんの!)
天人は昔から器用だった、小学校のお弁当もキャラ弁を作ってくれるほどに…つまりハートも可愛いピンクで凄く主張していた。

 昼休みは主に、連と黒沼さんにからかわれ、それに言い訳しつつ過ぎていった。

騒がしい昼休みも終わり午後の授業に戻る途中、四月一日さんが俺の制服の裾を掴んで

「本当に、彼女さんからのお弁当じゃないんですか…」

何故彼女が、俺にそう聞くの分からないけど

「うん、違うけど大切な人から作ってもらったのは本当」

そして、何を思ったのか彼女は

「…そうですか。彼女さんからじゃないなら、私頑張りますから。」

彼女の言葉に何を頑張るんだろ?と思いつつも
「そっか、頑張れ」と言葉を返しとく。

そのやり取りが聞こえてたのか連は慌てて俺を引っ張り

「雫、四月一日ちゃん5時限目移動だから俺等急ぐわ!」

連に肩を押され教室に急ぐ

(なんで連はこんなに急いでるんだ?移動つっても近い教室だから急ぐ理由にはならないのに)

押される最中、連が耳元で

「お前、さっきの良いのかよ?」

「何が?」

「何がじゃないでしょ!お母さん悲しい、時雨が鈍感すぎて悲しい!」

(いつからコイツは俺の母親になったのだろうか…)

俺は連の言うことがよくわからないまま、次の授業に向かった。




 


 天人が居ない時間が静かに過ぎていく


授業を聞き流しながら、また外を見た。


雨は振りそうにない、嫌なぐらい晴れ渡っていた。

(今日も一日が終わる…次はいつ会える?天人)
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