……あの夏のキスのように。

 紫陽花が咲き始める頃、笹井絽薫のクラスにひとりの転校生がやってきた。名前は葵百彩、一目惚れをした。

 嫉妬したり、キュンキュンしたり、切なくなったり、目一杯な片思いをしていた。
 ある日、百彩が同じ部活に入りたいといい、思わぬところでふたりの恋が加速していく。
 大会の合宿だったり、夏祭りに、誕生日会、一緒に過ごす時間が、二人の距離を縮めていく。

 そんな中、絽薫は思い出せないというか、なんだかおかしな感覚があった。フラッシュバックとでも言えばいいのか、毎回、同じような光景が突然目の前に広がる。
 なんだろうと、考えれば考えるほど答えが遠くなっていく。

 夏の終わりも近づいてきたある日の夕方、絽薫と百彩が二人でコンビニで買い物をした帰り道、公園へ寄ろうと入り口を通った瞬間、またフラッシュバックが起きた。
 ただいつもと違うのは、その中に百彩がいた。

 高校二年の夏、たしかにあった恋模様、それは現実だったのか、夢だったのか……。
 
 純白の心に人は何を描けるのだろう?
 
 
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