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契約の時

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え?

『おーい、聞いてる~?もしもーし』

魔王ってローゼルク女王を殺した…?

『あ、よく知ってるね~。そのせいでウィーネに殺されそうになってるから、君たちに契約してるんだけどね。』

契約?

『適齢になったらアリュール、つまり僕の血を引いている人間は僕にここに呼ばれる。そして契約するんだ。死なないために。』

父様や兄様も契約、したの?

『ああ、クレマナイトとオブシディアンねー。勿論。僕の愛し子達はみーんな、ここに来てくれるからね~。オブシディアンの反応は面白くなかったけど、あいつの才能は凄いと思うよー。あ、話逸れちゃったね。』

うん。で、契約っていうのは?

『うーん、君もあんまり面白くないなー。まあいーや、まずは契約の話だ。』

!?!?何?この火は!?

『これは僕の力の1部を君に分け与えてそこから君の力と混ぜ合わせていく。精神的に辛いからちびっ子な君の身体も辛くなるけど。さあ、行っておいで。』

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「う、ううーん…はぁ…はぁ……」

「ユーク様…」

「サーシャ、ユークを心配するのは私としても嬉しいが、このままだと君まで体を壊してしまう。」

「そうよ。大丈夫。これは試練なのだから。」

「試練…ですか?ですがディアン様の時とは時期が余りにも…」

「確かにね。ディアンに来たのは1年前だしユークに気付かれないくらい短い時間だった。しかし今回は長すぎる…。全く、あの人は何を考えているのだか。」

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『へえ、結構吸い取られた。意外と精神力が強いんだね。これはディアンに匹敵する強さだよ。やっぱりウィーネの力も入ってるからかな?あ、魔法の発動条件はクレマナイト達に聞いてね。』

うう…頭がガンガンする…。

『まだ話せるだけの力があるんだ。この分だと身体の方は大丈夫だろうね。面白くないと思ったけど楽しいね。もっと見たくなったよ。』

やめて…これ以上何をするの…?

『へえ、魂が三つも共存するなんて…しかも今と最初の二つか。間の一つが気になるけどこれ、開けてもいい?』

いいわけないでしょ…?これ以上私になにもしないで…

『おっと、警戒心マックスじゃん。怖ーい。』

え…?何で…

『ん?なにが?』

なんで英語を知ってるの?ローゼルクではほとんど英語は使われていないはず。何故か少しだけ使われているけど。マックスなんて言葉、ローゼルクで一度も聞いていない。

『…なぜお前が知っている。』

それはこっちの台詞なんだけど。

『…今から君を還す。もう僕は使命を果たしたからね。じゃあね。』

待って…

『ああ、まだ僕を責めるのかい?ローゼルク。』

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「……待って!ってあれ?ここ…」
「ユーク様!!お目覚めになられたのですね!?ああ、本当に良かった…」

見慣れた天蓋。見慣れたサーシャの顔。私の家だ。

「すぐに公爵様と奥方様に知らせてまいります。それまでお休みなさってください。」

さっきまでふわふわしている所にいたのに…。まもなくして父様と母様、兄様が来た。

「ユーク。あの方と会ったんだよね?本当によかった。通常より遅いから心配したよ。」
「ユークちゃん、大丈夫?どこも痛くない?」
「…よかった。」

兄様にぎゅうぎゅうに抱きしめられて苦しいの以外は大丈夫だよ~。逆に言えばそれが苦しいんだけど。

「で、父様、あのおにいさんは何?」
「…我が家に代々伝わる人物だよ。」

我が家と王家は対立していた。
理由はサーシャから聞いただろう?

まあ対立と言っても表立って戦争をしたりということはしていなかった。睨み合い、くらいかな。

そして王家には精霊王様が着いている。

我らは魔王様の血を引いているからアリュール家の誰かが邪な気持ちを持って精霊王様の住む領域に入ってしまった瞬間死んでしまう。

だからまだ無垢な時期にこうして魔王様の力を混ぜてもらい、私たちは生きているんだ。

「じゃああの人はいい人なの?」
「いいとも言えないし悪い人とも言えない。誰もあの人のことは掴めないんだよ。」
「魔王様ね、最後泣きそうな顔してたの。なんて言ってるか分からなかったけど。」

英語のことに触れた瞬間あの人の雰囲気は変わった。何故だろう?

「そうか…。」

あれ?父様の雰囲気もなんだか…

「父様?」
「さあ!今から魔法を発動してみるよ!」

良かった。いつもの暑苦しくてうざい父様です。

「ユークにはちょっと痛いかもしれないけれど我慢してね。」

そう言って父様は首にぶら下げているものを取り出した。ケースから出すと中には綺麗な黒い石の装飾が施されている小さなナイフだった。

「これでちょこっとの皮を切ってみて。」

まさかの魔法発動の条件は自傷行為でした。

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『それで娘は起きたのか?』

「ええ。ユークちゃんも、契約が完了したわ。」

『…サファイア。我はアリュール家と和解することを承認したがアリュールのことは許しておらぬ。それにお前がここに嫁ぐこともなかったんだぞ?』

「ウィーネ、何を言っているの?」

『ん?』

「私はコールを愛して、結婚したのよ。だから家の為、なんて思わないで頂戴。」

『あははははっ!!そうだったな。』

「もう、笑わないでよ。こんな精霊にうちの可愛い子のどちらかに契約させるなんて反対だわ!」

『すまぬすまぬ。さあ、契約の兆しが出てきたな。』

「もうどちらかの姿は見えてる?」

『いや、まだだ。まだ我はお前とお前の父しか見えぬ。』

「良かった。じゃあまだなのね。」

『何故良かったなのだ?我と契約すれば愛し子達を守ってやれるぞ?』

「でも貴方を見るだけで相当精神が削れるもの。まだ小さいあの子たちにするのは酷だわ。」

『それもそうだな。では、我は帰る。』

「あら。また明日。いい夢を。」
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