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先生は………

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「残っていただいて、ありがとうございます。」
「い、いえ。大丈夫です…。」

何言われるんだろう…まさか出て行けとか!?いやだぁぁぁぁ!!

「安心して、少しの質問だけだから。」

質問…?ますます不信感が増すんだけど…

「精霊が、あなたの方を見て『姫様』というのだけど…心当たりはあるかしら?」

姫様…?ああ、それか!

「精霊さんたちは、多分母様と勘違いしているんだと思います。」
「ええ、私も最初はそう思ったの。公爵夫人のことと思ったの…だけど精霊は、オルドは『違う』って言うの。」

違う…?

「魂が姫様だって。他の精霊たちも気付いているって。」

なんで…?魂が姫様?

「それで、私は何故精霊があなたのことを姫様と呼ぶか、何故貴方のことをひた隠しにするか、知りたいの。だから…」

そこまで言うと、先生は言葉を切り、頭を下げた。

「せ、先生!?やめて下さい!」

「……ユークレース様、どうか、私と共にこの謎を解くために協力していただけませんか?」

…これは私も知りたい。私には何かあると思う。自意識過剰かもしれないけど。
前世の記憶を持っていることに何か関係があるのかもしれないし。

それにウィーネが言っているように、私が何か忘れていることがあるのなら思い出したい。

きっと、ウィーネがあそこまで言うのだから大切なことなのだろう。

「私からもお願いします。私も知りたいです。」
「それなら交渉成立だね!ユーク、私を見て何か思わない?」

え?え?え?あ、あの、先生、何が起こったの…?

顔…顔なんて…美人ですねとしか…あれ?どこかで見たような…

「じゃあこれでわかるかな?」

そう言って先生は煌びやかな髪飾りを外し、その綺麗な赤髪を結んでいる髪紐をほどいた。
ああぁぁぁぁぁぁ!!

「ミーナさん!!」

「ご名答~!やっと気づいてくれた~。途中、笑って台無しにするところだったんだからな~?」

「なんで?え?ミーナさんがアネモア先生?え?どっち?」

「落ち着け落ち着けー。どっちも私だよ。」

ミーナさんは、元はアネモア・カルム。今はミーナ・スウフェーンとしているらしい。

「話せば長くなるから言わねーけどさ~、まあ、どっちも私だ。今はそのことはどうでもいいんだよ。」

ここでは話せないからと言って、私はミーナさんが創った部屋。昔兄様が創ってくれた部屋の簡易式かな。


「さっき私が持ちかけた話だが、あれについてはほとんど解決している。」

「え!?ミーナさん天才!教えて教えて!」

この二つが分かれば私の疑問は完全に消えるよ~!

「えーと、私、この前………しただろ?その時は………が私の………にいて、………できなかったんだ。だけど…は………たし、…………………」

あ、これはまずい。

「あのさ、ミーナさん、申し訳ないんだけど、全然分かんない。」

「あ?ユークにわからないことがあるなんて珍しいな~。なんかちょっと優越感だわ~。じゃあかみ砕いて教えてやるよ。………で、……………が、あ、………は………な?」

「本当にごめんなさい!」

話の途中?に遮るのは申し訳ないけど…

そして私はその手のことは教えてもらっても聞こえなくなっている、核心に触れようとすると気を失ったりすることを話した。

「まじかよ…じゃあユークは知れないままなのか…」

「多分…でも、私は知りたいの。当事者だけ知らないっていうの、癪じゃん?」

周りだけ知ってて、本人が知らないっていうの嫌いなんだよね。減るもんじゃないし。

「なんか、ユークって昔の伝説の英雄みたいだね。」

「えー、どうせなら皆を幸せにするお菓子屋さんになりたーい。」

「ははははは!!それはもうなってるだろ。」

まだまだ足りないよ~。むしろミーナさんの方が…。

お料理も上手だし、お店のお客さんをいつも笑顔にしてるし、明るいし、優しいし…。

あれ?ミーナさん、完璧じゃない?

えー、なんで私の周りって完璧な人が多いんだろ。

私も完璧になるために努力しないとなのかな…

「じゃあそろそろ戻るか。あ、私のこと、教室では先生って呼べよ?貴族世界で、私は『ミーナ・スウフェーン』じゃなくて『アネモア・カルム』なんだからな。」

「はーい~。あ、贔屓とかは?」

「するわけねーだろ。あ、じゃあ特別に課題出してやる。」

「それはご勘弁~。」

「じゃあ放課後にいろいろ調べるってことで。じゃ、解散。」

ミーナさんはアネモア先生に戻ってから、部屋から出ていった。

「えへへ、ミーナさんが先生か~。」

厳しい先生に当たっちゃったと思ったけど、思わぬラッキーが発生してよかった~。

楽しみだった学園生活がもっと楽しくなるな~!


そして寮に帰ると、

「ユーク、先生や他の貴族に何もされていない?」

「ユーク様!今日は私と一緒に夕食を食べに行きましょう!」

「ああ、ユーク嬢、お帰り。ファール!どうか私と婚約してくれ!」

「お断りさせていただきますわ。」

「お前ら、出て行け。」

帰っても賑やかでした。なんか落ち着くなあ、これ。

最近は殿下ともフランクに話せるようになったし。
話してみればファールが大好きなスト―k…人だし。

ファールとは、クラスは離れちゃったけどいつも遊びに行ったり、遊びに来てくれたりだからいつでも会える。

兄様とは生まれた時から、私が学園に入るまでの三年間以外はずっと一緒。

神様、私に隠し事があるのは分かっているけれど、それとは別でお礼が言いたいです。

もう一度チャンスを与えてくれて、ありがとうございます。
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