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13 閑話 ルミア・フォルセット公爵令嬢

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 彼女の名はルミア・フォルセット。この国の三大公爵家の1つであるフォルセット家の次女である。

 波打つような美しい髪の毛はプラチナブロンド。薄い紫水晶の様な瞳と抜けるような白い肌をした超絶美少女である。

 年齢は16歳になったばかりで貴族の責務である貴族学園に通っているが、ほぼ欠席か早退していて、あまり見かけることはない幻の? 御令嬢で、見かけた時は貴族の子息達に常にエスコートされ傅かれ、称賛を浴びているという、他の貴族子女から見ると目の上のタンコブ若しくは鼻の先の疣贅イボの様な御令嬢だ。


 「もうすぐ卒業式だわ」


 豪華な私室のベッドの上で自慢のプラチナブロンドを指で弄りながら、クッションを抱きしめる。

 彼女の言う通り来月には1学年上の生徒達は卒業を迎え、その後専門分野の学問所に進む者や王城や辺境伯等力のある大貴族の元へと見習い就業する者、各貴族家の領地の経営の為に当主補佐になる者等様々な人生を送る事になる。
 三大公爵家も広大な領地を管理している大貴族なので文官見習いや騎士見習いとして就業する者も多い。

 この国の貴族の成人は18歳で、成人後にすぐに婚姻を結ぶものも多いがこの場合は17歳の時点で婚約をしている者同士であることが大前提である。

 面倒な決まりと思われがちだが、卒業後婚姻できる年齢までの1年間以上の婚約期間を過ごさなければ王家から貴族の結婚としては認められない。これは貴族家に生まれた以上は無視できない約束事である。

 言い換えれば学園にいる間に異性との交流を元に良い伴侶として認められるように男女とも自分をアピールする期間でもあるが、勿論学業も社交も疎かには出来ない。
 これは貴族間の暗黙のルールであり、全てに置いて合格点を貰うにはかなりの努力を要するのが貴族社会であり上流階級の嗜みでもある。

 誤解を生みやすいが、学園は決してお見合いの為の場所ではなくどちらかというと振り落としの場である。

 が。

 人間という生き物は必ず一定数独自の法則で生きて問題ないと考える者が発生する。

 俗に言う働きアリの法則のようなものが人にも当てはまるのだ。
 ――2割が良く働き、6割が適当に働き、2割がサボるというやつだ。

 残念ながら美しさだけなら天使もかくやのルミア嬢は最後の2割グループに属す貴族子女であり、全く勤勉では無かった為に勉学は地を這う勢い、社交は女性からは嫌われ、男性からは秋波だけを贈られるという貴族子女としてはあり得ない状況だった。
 社交の肝であるダンスは相手次第で踊り方が変化し、社交的な会話とマナーは講師が何度か匙を投げかけたが両親が頼み込んで及第点スレスレで何とか最終学年に進級。

 両親の心配と苦労を他所に、笑顔を作り愛嬌を振りまけば世の中なんとかなるモノだと誤解したまま迎えた16歳。
 
 気がつけば同じ派閥の爵位の取り巻き達に囲まれてチヤホヤされてはいるものの、皆さん似た者同士でオツムの出来はどんぐりの背比べ。
 恋愛ロマンス小説をこよなく愛する会を発足して、ヒロインの生き様に浸るというこれまでの学生生活をこの辺りで切り替えなければヤバいと気が付く事なく、憧れていた同じ派閥内に生息する王子様のような侯爵家嫡男にラストスパートの如く猛攻をかけるのだった・・・


 だって、17歳の時点で婚約者としての地位を確保しておかないと18歳で結婚できないのだから。

 彼女にはあと1年しか猶予がない!


 教育とはではなく、本人が理解と深い見識を得る事。
 それこそが最重要事項なのだという事をフォルセット公爵家夫妻は失念していたようだ。


 合掌。

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