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〈Another Story〉story of duke and wife
30 野放し♡
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「辺境伯領には今、アンドリューが向かっているから君が行く必要はないと思うんだけど・・・」
許可証にサインをしながら呟く王太子を半目で睨むオフィーリア。
「偵察隊の報告ではボーフォートが廃教会に向かっているそうです」
「行方不明だと聞いてるが?」
「手出しはしませんが、確実に見張らせてますからね。間違いないです」
彼女は王太子のサイン入りの許可証を受け取り、素早く確認してから丁寧に畳むとエボニーブラックの軍服の胸ポケットに仕舞った。
「ヴァルティーノ王国の内乱なんか知ったこっちゃないですけど、我がアガスティヤ家が狙われるのも、そのせいでアンディが巻き込まれるのも気に入りません」
「どうするの?」
「潰しますわ。勿論」
にっこりと笑うオフィーリア。
オースティンは背中に冷たい汗が流れた様な気がした。
×××
「ねえ、リアちゃんが居ないのよオースティン。どこ行っちゃったのかしら?」
王太子の執務室に妻のイザベラがやってきた。
「折角侍女にケーキを買ってきて貰ったから、一緒に食べようと思ったのに」
首を傾げる妻を見て
「人畜無害・・・」
思わず呟いたオースティンだったが、
「え? なぁに?」
キョトンとした顔の妻に
「何でも無いよ。私と共にそのケーキと一緒にお茶はどうだい?」
と、返すと笑顔で妻を部屋に招いた。
×××
「ねぇ、俺どうしてたらいい?」
東の離宮に一度帰るとソファーの上に座って座禅を組んでいたヒューイ(本物)が目を開けて、こっちを向く。
「そうね、私の代わりに学園にでも行ってみる? それとも一緒に辺境伯領に行く? どっちでもいいわよ」
肩を竦めるオフィーリア。
「ウ~ン。例のお花畑ちゃんも見てみたいけどなぁ」
斜め上方向に視線を向けて考えるヒューイに向かって
「学園に行くんなら影を一人つけとくわよ?」
と、声をかけると
「ん~~ やっぱ着いてく! 久々に動きてえわ。ついでに実験もしたいしさぁ」
へへへッと笑うヒューイ。
「・・・ あんまり派手に壊さないでよ?」
思わず疑いの目でハトコを睨むと、
「だーい丈夫ッ、最近威力を小さくしたのちゃんと開発したんだってば」
ソファーからピョンと飛び降りると明るい笑顔で自分の荷物を取りに行くヒューイ。
「大伯父様が、アンタのせいで別荘の壁が崩れたって手紙に書いてあったわよ?」
「もっと威力は落としたってばぁ。大丈夫だって。最新のは壁に穴が開く程度だからなッ!」
フフンと胸を張るヒューイ。
「ハイハイ、じゃあ行くわよ」
「オッケー♡」
アバルティーダ王国の最凶女公爵と共にトリアステル帝国の爆弾魔を野放しにしてしまった事に、王太子オースティンは未だに気づいていない・・・
許可証にサインをしながら呟く王太子を半目で睨むオフィーリア。
「偵察隊の報告ではボーフォートが廃教会に向かっているそうです」
「行方不明だと聞いてるが?」
「手出しはしませんが、確実に見張らせてますからね。間違いないです」
彼女は王太子のサイン入りの許可証を受け取り、素早く確認してから丁寧に畳むとエボニーブラックの軍服の胸ポケットに仕舞った。
「ヴァルティーノ王国の内乱なんか知ったこっちゃないですけど、我がアガスティヤ家が狙われるのも、そのせいでアンディが巻き込まれるのも気に入りません」
「どうするの?」
「潰しますわ。勿論」
にっこりと笑うオフィーリア。
オースティンは背中に冷たい汗が流れた様な気がした。
×××
「ねえ、リアちゃんが居ないのよオースティン。どこ行っちゃったのかしら?」
王太子の執務室に妻のイザベラがやってきた。
「折角侍女にケーキを買ってきて貰ったから、一緒に食べようと思ったのに」
首を傾げる妻を見て
「人畜無害・・・」
思わず呟いたオースティンだったが、
「え? なぁに?」
キョトンとした顔の妻に
「何でも無いよ。私と共にそのケーキと一緒にお茶はどうだい?」
と、返すと笑顔で妻を部屋に招いた。
×××
「ねぇ、俺どうしてたらいい?」
東の離宮に一度帰るとソファーの上に座って座禅を組んでいたヒューイ(本物)が目を開けて、こっちを向く。
「そうね、私の代わりに学園にでも行ってみる? それとも一緒に辺境伯領に行く? どっちでもいいわよ」
肩を竦めるオフィーリア。
「ウ~ン。例のお花畑ちゃんも見てみたいけどなぁ」
斜め上方向に視線を向けて考えるヒューイに向かって
「学園に行くんなら影を一人つけとくわよ?」
と、声をかけると
「ん~~ やっぱ着いてく! 久々に動きてえわ。ついでに実験もしたいしさぁ」
へへへッと笑うヒューイ。
「・・・ あんまり派手に壊さないでよ?」
思わず疑いの目でハトコを睨むと、
「だーい丈夫ッ、最近威力を小さくしたのちゃんと開発したんだってば」
ソファーからピョンと飛び降りると明るい笑顔で自分の荷物を取りに行くヒューイ。
「大伯父様が、アンタのせいで別荘の壁が崩れたって手紙に書いてあったわよ?」
「もっと威力は落としたってばぁ。大丈夫だって。最新のは壁に穴が開く程度だからなッ!」
フフンと胸を張るヒューイ。
「ハイハイ、じゃあ行くわよ」
「オッケー♡」
アバルティーダ王国の最凶女公爵と共にトリアステル帝国の爆弾魔を野放しにしてしまった事に、王太子オースティンは未だに気づいていない・・・
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