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8章 王都
76. オリヴィエ・アボット①
しおりを挟む「あれ、コレって私知ってる話だわ?」
その日は学園は休みで、大きな書店の店頭で平積みにされてた本が何となく気になってパラパラと捲って見てたら、文字を追う事に頭の中に美しい絵物語が現れることに気がついたのだ――
ホントは御爺様のお店に言って貴族なんか嫌だって言って学園になんかもう行きたくないって打ち明けて、かくまって貰おうって思ってたの。
御爺様のお店は王都の貴族街に近い場所で、平民でも裕福層じゃないと出入り出来ない場所に建っていて、ちょっと足を伸ばしたら貴族の経営する商会なんかもある場所だ。
そのすぐ近くにある本屋での出来事だった――
×××
私は小さい頃から父様とは一緒に暮らしてなくて、王都にある御爺様の別邸で暮らしていた。
母は私の目から見ても美しい人だったけど気位が高くて、いつも自分が綺麗だと褒められていないと機嫌が悪くなるから使用人からは遠巻きにされていた。
それでも私自身は不自由は感じなかったしなんの不満もない暮らしをしてた。
私自身は母の子供の頃と瓜二つで幼い頃から可愛い周りから言われていたし、偶に邸に訪れる父様にも『とても美しい』と褒められていたので自分の容姿には自信があった。
母も私を自分のミニチュアのように思っていたのか、私を人形のように着飾ることを好んでいたが
「でも将来がねえ・・・」
と、着飾った私を見ながら困った顔をよくしていたことを覚えている。
父は真面目を絵に描いたような不器用な人だったが母や私の誕生日には贈り物を欠かさなかったし、邸に訪れる時は必ず母に花束を贈るような人だったからきっと母の事は好きなのだろうと思っていた。
「なぜ一緒に暮らさないの?」
と不思議に思って母に問うといつも
「別にお家があるのよ」
とあっけらかんと答えていたので、小さい頃はいくつも家があって父の家がある位に思っていた。
御爺様もたくさん家を持っていてその一つに自分達も住んでいたから。
でも違っていた。
その事を知ったのは15歳の誕生日が近づいたある日の事。
私が『貴族家の跡継ぎ』になると言われた時だった。
×××
アボット男爵家は王都から馬車に乗って10日以上は離れた場所で、田舎だった。
私自身は王都にずっと住んでいた為、こんな田舎にどうして来なければいけないのかが不満だった。
行けども行けども道沿いに続くのは、緑の木々ばかりで建物一つ見当たらないようなど田舎だ。
だからこそお爺様の蚕事業の手伝いが出来て領地が潤ったと聞いた。ひょっとしてあれが蚕の餌なのだろうか?
隣に座る男爵家の執事という御爺様と同じくらいの年齢のおじさんを見上げ、その事を聞くと
「さようででございます」
「ふうん。初めて見たわ」
何だかつまらなくって邸に着くまでは目を瞑ることにした。
××××
ついたお屋敷は、私が今まで住んでた家とあまり変わらないくらいのサイズだったし、特別きれいだとも思わなかった。私が今まで住んでた屋敷のほうが花壇もあって華やかだと思う。
屋敷のドア前に使用人達が並んでお出迎えってやつなんだろうな、頭を下げてた。
私の住んでる屋敷に時々しかやってこないお父様がグレーの地味なドレスを着た女の人と一緒に使用人達の一番前に立って私を待っていた。
お父様が私に向かって、今日からここが私の家でその地味なドレスの女の人が私のお母さまになるんだって言ったけど私は全然理解が出来なかった――
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