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8章 王都

78. オリヴィエ・アボット③〜出会い

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 後期の始業日。

 講堂の壇上に上がって来た人は驚いたことにこの国の第1王子のウィリアム様だった。

 燃える火のような赤い髪とサファイアブルーの瞳の素敵な方でカートレット王国の国民なら誰でも知ってるって人だ。

 婚約者は公爵令嬢だけど冴えないっていう噂を周りの御令嬢が小声でしてた。

 まあ、どうせ政略的な婚約者同士だから容姿なんか関係無いじゃん。

 こないだ再婚約しそこなった子爵家の時にお祖父様が言ってたもんね。

 政略的な婚約は、容姿は関係ないって。

 それなのに私や死んだ姉の容姿を口にするあの子息は信用出来ないから白紙になったって。


『商会を経営してる様な平民だって似たようなもんだ』


 お祖父様が不機嫌な顔でそう言ってた。

 でも周りの貴族のご令嬢は盛んに王子の婚約者を馬鹿にするような口振りで話してる・・・自分たちの方が綺麗だから相応しくないって。


 ――やっぱり貴族の子供って頭が悪いのかな? 


 だけど私はそんな事を口にはしない。


『思った事を正直に口にして、周りに敵を作るな』


 お祖父様に入学前滾々と言い聞かされてたからだ。



×××



 寮でルームメイトになった子爵家の令嬢が模擬試合を見に行こうって突然言い出した。

 彼女の婚約者が騎士科に在学してて今日の模擬試合に出場するんだって言うから、じゃあ一緒に見学しようって事になったの。


 そしたら、競技場にウィリアム王子様がいたのよね・・・


 黒い服にシルバーラインの入った騎士服みたいな服を着ていて競技場の入り口の横にあるベンチに座ったまま腕組みして騎士科の生徒の模擬試合をジッと見てた。

 なんてカッコいいんだろうって思ってボーッと見てたら隣りにいたはずのルームメイトは殿下に気が付かなかったらしく観覧席に行くための階段に進もうとして、後ろにいた私に声をかけてきた。

 慌ててついて行こうとしたら、偶々ハイヒールの踵が細い溝にはまり込み、地面に顔から着地する直前に腕を掴まれて間一髪で前に宙で止まって、驚いていると


「おいおい、大丈夫か? 女性のヒールがハマるような溝は修理するように学園に伝えておけよ」


 片手で私の腕を掴んだまま、その助けてくれた人が偉そうに周りの人に指示しているのが聞こえた。

 ギョッとして顔を向けたら第1王子殿下だった。ひええぇ!!


「怪我はなかったか?」


 呆然としてた私の顔を覗き込んできて、驚きすぎてお礼も言えなかったわ。


 コクコクと必死で頷いたら


「気を付けなさい」


 そう言ってそっと腕を離してくれて、そのまま御付きの人達と一緒にロッカールームの方へ去って行ったの。


 ――凄い! なんてカッコイイの!? 


 とにかくその後の授業は上の空になっちゃって、全然先生の授業が頭に入って来なかった。


    
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