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【勇者マモルSIDE】 暴力と絶望

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リラはあれから人が変わったように俺に冷たくなった。

それと同時に他の二人も俺を見る目が変わっていった。

可笑しい、ちゃんと魅了は効いている筈だ。

特に三職(聖女 賢者 剣聖)に掛かる魅了は絶対だ。

俺を嫌いになる筈はない。

その証拠に離れて行こうとはしない。

でも、何かが可笑しい...そう思えて仕方がない。



だが、それは勘違いだったようだ。

最近では三人の中で特にマリアと過ごす事が多い。

年下で可愛いし、何より献身的に世話をしてくれる。

今日も献身的に世話をしてくれている。

「あーむカリっはぁはぁ、つぎいくね」

何をしてくれているかと言えば爪を切ってくれている。

しかも爪切りを使うのでなく自分の口で指をくわえながら歯で噛み切ってくれている。

そして切った爪は横の布の上に吐き出す。

なんとも背徳的な光景だ。


しかし、魅了って恐ろしく凄い。

だって、あの性的な事とは無関に見える、マリアがこんな事をしてくれるんだからな。

本当に信じられない。

あそこ迄俺を嫌っていたのに。

多分、ジミナはこんな事して貰ってないだろうな。

そうマモルは思っていた。


「マモルお兄ちゃん...」

「どうしたんだ」

「なんでも無い...なんでもないんだよ」

そう言いながらマリアは部屋を出て行った。



マモルと離れてから、マリアは宝物のコレクションを引っ張り出した。


そして独り言を繰り返していた。

「おかしいなー、おかしなー...マモルお兄ちゃんの宝石のような爪が凄く汚いよ」

「ほんとうにおかしいーな、髪も汚い...少し前まであんなに綺麗だったのに」


独り言を繰り返し違和感を感じていた。

しかも、外でも私たち以外の女を見ているときがある。

「お兄ちゃん..なんで他の女を見ているの?...マリアと一緒の時はマリアを見てよ」


「そうよねマモルはなんでリラや私、マリア以外の女の子を見ているのかな? あんまり他見ていると目を潰しちゃうぞ」

「あはははっごめん」

「解れば良いけどさぁ、ちゃんとマリアや私たちを見てよね」


マモルは違和感を感じていたが、これも魅了のせいだ思っていた。

【よくある女の焼きもち】そう思っていた。


その後もマモルは他の女の子を見ていたが今度は文句を言われなかった。


「マリアちゃん、いつものだから大丈夫だよ」

「そうか、それなら仕方ないよね」


彼女たちの会話の意味がマモルには解らなかった。


その日の夜の順番はマリアだった。

今日の宿屋はちゃんとシャワーがある。

先にシャワーを浴びた。

これで今回は大丈夫だ。

この前の様な事が起きても、これなら大丈夫だ。


「マリア、先にシャワーを浴びたよ、マリアも浴びてきな」

「うん、解ったよ」

何故かマリアは死んだような目をしていた。


マモルはベッドに寝ていた。

小さな胸の可愛らしい穢れを知らないような女の子が、体を舐めまわしてくれる。

なんでこんな事してくれるのかマモルは解らない。

まるで娼館でだってしてくれないようなサービスだ。

マモルはその感触がすきだった。

小さな口で大切そうに、それこそキャンディーを舐めるように舐めてくる。

そんな快感に酔って目を瞑っていた。

だが、この日は少し違っていた。

暫く舐めまわしていたマリアがきょとんとした顔で手が止まった。

「おかしーな、おかしーな何でだろう? お兄ちゃんが美味しくない」

「どうしたんだ、マリア」

様子が可笑しいのに気が付いたマモルが聞き返した。

「おかしーな、お兄ちゃんが優しくないし...意地悪するし...凄く不味い、なんでだろう?」

目が腐った魚の様に見えた。

何時もキラキラしている目がレイプされたような、絶望しかけた目に見えた。


「俺はなにかしたのか? もし体調が悪いなら、リリアンかリラに変わって貰おうかっ、痛ぇーーーーーーーっ何するんだーーーっ」

マリアは小さなナイフでマモルの太ももを切りつけた。


「あはははっ、お兄ちゃんごめんね、だけどマリアはお兄ちゃんがなんで不味いのか、うぐっ」

マリアは突き飛ばされ、ガンッという音と共にテーブルに頭をぶつけた。

「なんで、こんなひどい事するのーーーーーーっ」

マリアが魔物の様に怒鳴った。

手にはナイフを握りしめている。

「お兄ちゃんは、お兄ちゃんもマリアが嫌いなんだーーーーっ」

「マリア...待て」


「うわーん! お兄ちゃんを殺してマリアも死んでやるんだからーーっ」


その声を聴き、リラとリリアンが飛び込んできた。

「何があったの?」

「マリアちゃん大丈夫」


「うわーん、マモルお兄ちゃんが、お兄ちゃんが不味くなって、意地悪して、ひくっすん、優しくないの」

マモルは意味が解らなかった。


マリアは泣きながら二人に話をしていた。

二人はマリアの話を聞くと、マモルに近づいた。

「ま.も.る、ちょっと良い」

そう言うとリリアンはマモルの頬っぺたを舐めるようにキスをした。

「本当に、マリアちゃんが言うとおりね」


「本当? じゃぁ私には爪を見せてね...これじゃ怒るはずだわね」


「そうだよね、マリアが可笑しいんじゃないよね?」


「そうね、マモルくんが悪いわ...それでマモルくん、スカートは?」

「スカートってなんだ?」

マモルはなんだか意味が解らなかった。


「うわぁ、最低、いつからそんな最低の男になり下がったのかな」

「今回もマモルくんが悪いわ、そうだマリアちゃん何か欲しい物はあるかな?」

「えーと、私まだお兄ちゃんの歯は一本しか持ってないから歯が欲しい」


「そうね、仕方ないわ」


そう言うとリリアンはマモルの頭を押さえつけ顔の口の部分に思いっきりパンチを打ち込んだ。

「いややめろーーーーっうぐぶはっ...痛いうわーーーーううわ」

前歯が二本転がる様に落ちた。


「お姉ちゃんも手が痛いわ、だけど可愛い弟や妹の為ですもん我慢してあ.げ.る、これで良いかなマリア」


「うん、お姉ちゃんありがとう...あっお兄ちゃん酷いよ」


マリアが手にした歯をリラも覗き込んだ。

「本当に最低だよね、この間の事もあるけどさぁ、昔の優しいマモルに戻ってよ、今日のは頂けないからさぁヒールは明日までかけてあげないからね」

「うん、反省してねマモルちゃん」


「ああう、おりゃがわういのかー(俺が悪いのか)」


だが、幾ら考えてもマモルには何が悪いのか解らなかった。


その日マモルは太ももの痛さと口の痛さで眠れなかった。



【時間はかなり遡る】


「お兄ちゃん、マリアまた振られちゃった」

マリアはまだ6歳、恋愛には流石に早すぎる。


「そうか、だけど馬鹿だなマリアみたいな可愛い女の子振るなんて馬鹿みたい」

「お兄ちゃんは本当にそう思う?」

「本当にそう思うよ?兄妹なのが凄く俺は不幸に思うよ?」

「だってマリアみたいな可愛い子と結婚できないんだから」

「(てれっ)本当にそうだよね、お兄ちゃん可哀そう」


ジミナは凄く天然だった。

マリアは実際に凄く可愛い。

ただ、男の子に振られるのは【束縛が強い】からだ。

マリアは可愛いから最初の頃は大抵の男の子は喜ぶ。

だが、その本性が解ってくると...怖くて逃げるしかない。


例えば、最初の彼氏の話だ。

彼はマリアが好きで自分から告白して付き合った。

暫くデートして凄く喜んでいたが...流石に1週間もたつと子供だから他の男の子と遊びたくなる。

だが、マリアは許さない。

「マリアちゃん、今日はルーくんと遊んじゃダメかな?」

「マリアが嫌いなんだ...だから他の子と遊ぶなんて言うんだ...浮気者」

そういうとマリアは相手の男の子をフルボッコした。

運が良いのか悪いのか、マリアには腕力があった。

だから結構な怪我になった。

その日の夜には両親が来て、二度とその子に手を出さない約束をさせられた。



次の彼氏の時は、マリアはその子が可愛がっている犬を川に捨てて殺してしまった。

「僕の僕のタウローーっ」

「何でないているのかな? マリアが好きなんだよね? マリアが一番なんだよね? そんな犬要らないんじゃない?」


勿論振られる。


そんな事が何回もあった。

多分、マリアは頭が可笑しいのかも知れない。

だが、マリアからしたら「自分から愛している」そういったから私も愛したのに...

拒むなんて酷いそういう理屈だった。


泣いているマリアに兄妹の関係にありながら、あんな天然なセリフで慰めていたから、ジミナはマリアの恋愛対象になってしまった。


「だってマリアみたいな可愛い子と結婚できないんだから」←

「(てれっ)本当にそうだよね、お兄ちゃん可哀そう」


ある時、マリアの頭で鐘が鳴り響いた。

こんなに優しいお兄ちゃんを不幸になんて出来ない。

だからマリアが幸せにしてあげなくちゃ。

そう思うようになった。

此処までならまだ兄妹とはいえギリまともな話だ。

だが、マリアの暴走は止まらない、お兄ちゃん大好きヤンデレ娘はお兄ちゃんの全てをやがて欲しがるようになった。

髪の毛から爪、場合によっては涎まで...

最初は爪切りで

「お兄ちゃん爪切ってあげる」

そう言っていたのが進化して自分の口を使って切る様になった。

普通ならドン引きだが、ジミナはとんでもなく妹に甘かった。


ジミナにとって姉弟の関係はリリアンによって形成された。

恐ろしいまでにブラコンの姉と生活していたジミナは姉が自分にしていたことが真面だと思っていた。


ゆえにそれに負けない位、妹コンになっていた。

妹が口をつけた時に不衛生でない様に暇があれば手を洗っていた。

さらにマリアが爪をコレクションしているのを知ってからは磨き始めた。


髪の毛も同じで、ことこまめにに髪を洗うように心がけた。

更にマリアの闇は深まり、とうとうマリアはジミナの涎や汗にすら手を出すようになった。


此処でもジミナは恐ろしい事に、妹コンを発動した。

マリアが美味しく汗を舐められるように、薔薇の花びらから調合したお茶にいくつかのハーブを混ぜたお茶を飲むように心がけた。

これはジミナに聞かれオリオンが教えた物だ。

此処までするとどうなるか...うんこまで薔薇の匂いやハーブの匂いがして臭く感じなくなる。


ちなみにマリアはうんこも収集しようとしたがオリオンに【多分それをしたらジミナに嫌われるぞ】と言われこれだけは諦めた。


マリアの宝箱には爪やら髪が大量に集められている。


だが、マモルはそんな事を知らない。


マリアからしたら至高のお兄ちゃんコレクションが急に質が落ちた。

宝石の様に綺麗だった爪が垢がつまったゴミになり。

キラキラした髪が、輝きが無い髪にかわった。


何時からか、コレクションの質がさがった。


マリアは汗を舐めるのが好きなのにシャワーを浴びるし...

しかも汗の味は凄く不味い。

これで怒らないわけが無い。


更に運が悪い事に、ジミナだって偶に他の女の子を見てしまう時があった。

そんな時の言い訳は【女の子でなく他の物を見ていた】+【マリアに】でごまかしていた。


例えば


「お兄ちゃん、今他の女の子見ていたでしょう?」

「違うってスカート見ていたんだ」

「ふーん、本当かな?」

此処までなら普通だが、ジミナはその後に似たようなスカートを買ってくる。


「はい、これ」

「お兄ちゃん、このスカート」

「うん、さっき見ていた奴、マリアは足が綺麗だから似合うと思うよ」

「(てれっ)お兄ちゃんありがとう」




自分を過小評価して女の子を過剰評価する男ジミナは、こんな事ばかりしている。

こんな人間と入れ替わって大丈夫なのだろうか...

ジミナの愛し方を理解しない限り、そこには絶望しかないのかも知れない。

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