王子様の白百合

伏見うづら

文字の大きさ
8 / 10

8※

しおりを挟む
マックスの手を取り、自分の小屋へ二人で走り出す。

深く積もった雪のせいで、足が取られ、ふらつきながら。

偶にバランスを崩して、二人して、雪に転がるように倒れると、くすくすと笑い合い、見つめ合い、また、貪るようにキスをする。

そうやって、雪まみれのまま小屋になだれ込むと、小屋の中にはマックスの香りが充満して、エリオットは腰が砕け、床にへたりと座り込んだ。



もうその香りだけで、たまらない。

自分の体を思わず掻き抱くと、その腕をマックスが半ば強引に解いて抱き寄せた。



「…っエリオット…。いいね…?」



耳元でマックスが囁く。

いつも落ち着いた柔らかなマックスの声が、上擦っている。

吐息交じりのその囁きは、今のエリオットにとって、もはや耳朶への愛撫だった。

耳から頬へ、頬から首へと下降していくマックスの唇が、エリオットの熱をどんどん高めていく。

エリオットは儘ならない返事の代わりに、マックスの頭を抱え、きゅ、と抱きしめた。

マックスが顔を上げると、熱でうるんだエリオットの目が、全てを物語っていた。

もう一度深く口づけ、エリオットの粗末な衣服を剝いでいく。



骨がうっすらと浮いている貧相な自分の体が恥ずかしくて、俯いて顔を逸らすが、マックスはそれも赦さない。

エリオットが逸らした顔を両手で包み込み、こちらを向けさせると、額に、ちゅ、とキスを落とした。



「…きれいだ。こんなに綺麗なものは、今まで見たことが無い。」



黄金の瞳は今にも蕩けそうだ。

本当に蜂蜜みたい。

エリオットもマックスにキスがしたいのに、熱に浮かされた体は言うことをきかない。

上体を自分で起こすことも儘ならないので、近くにあったマックスの腕に、ちゅ、ちゅと必死に唇を寄せた。

まるで小鳥が啄むような、拙いキスは、マックスをさらに昂らせた。



「っ、エリオット、君という人は…!」



マックスは自分の衣服も脱ぎ捨てると、エリオットの薄い胸に顔を埋めた。

乳首に唇を寄せると、エリオットが小さく声をあげた。



「うっ、ひっうっ、」



「エリオットは、胸が好き?」



「そ、な、こと、きかない、でぇ、」



「唇を寄せただけでこれでは、この先が、心配になるよ、」



マックスはそのままパクリと桃色の飾りを口に含んだ。もう片方は長い指で弄びながら、エリオットの表情を窺っている。



「ひっ、ああ、まっくす、やだ、」



口に含んだ方は舌で丹念に愛撫し、指でつつくように弄られているもう片方は、時折わざと爪を立てられる。

「いじわる、しない、でぇ、」



エリオットが涙ながらに訴えると、マックスは胸にちゅ、とキスを落として、エリオットに向き合った。



「…ごめんね、エリオットのこと、すごく大切で、可愛がりたいのに、どうしようもなく、辱めてしまいたくなるんだ、」



乳首を虐めるのを止めたマックスは、エリオットの唇に深いキスを落とした。

口内を貪るようなキスに、エリオットが必死に応えていると、マックスの意地悪な指先は、するするとエリオットの下腹部まで下りてきて、へそを擽る。



ごめん、なんて謝っていたくせに、マックスはまるで遠慮がなく、今度は指だけでなく、唇で、先ほどと同じようにキスをしながらどんどん下降していく。

そうして行きついた先での胸への愛撫を思い出し、エリオットは恥ずかしさと、確かにそこにある期待で、おかしくなってしまいそうだった。



「あ、あ、まっ、くす、」



エリオットは、目をぎゅ、と瞑り、マックスの名を呼ぶのが精一杯だった。

とうとう足の付け根まで到達したキスは、そこではたりと下降を止めた。

期待していた感触が無くて、エリオットが恐る恐る目を開け、そこを見ると、ふるふると立ち上がる自分自身をマックスが見つめている。



「や、やだぁ、みない、で、」



「うれしいよ、エリオット。すごく、可愛い。」



Ωのくせに、浅ましくも主張するそれが、マックスに観察されている事実が直視できず、エリオットは思わず顔を逸らす。

すると今度は、自身の先端に、暖かいなにかが触れて、弾かれるように上体を起こした。



「な、なに、して、る、の…!ま、っくす、やだ、やめてぇ、ひぁ、あ、」



あろうことかマックスは、震えるエリオットのそれに舌を這わせ、ぺろりと先端を舐めたのだ。



「ん、ふ… エリオットは、どこも、本当に良い匂いがする…」



この国で国王の次に尊い身分の皇太子が、こんな粗末な小屋の固いベッドで、自分の中心を舐めている。エリオットは羞恥心で脳が焼き切れそうだった。



「やぁ、そん、なとこ、きたない、やめてぇ、まっくす、や、あ」



「エリオットに、汚いところなんて、ないよ。どこもかしこも、百合の香りがする…」



ちゅ、ちゅ、とエリオットの花芯に絶えず唇を寄せながら、マックスは愛おしそうに目を細めた。



「ゆ、り…?」



「そうだよ、エリオット。君は子供の頃から、ずっと、白百合のような香りがするんだ。だからあの頃から私は、君はきっとΩだと分かっていたよ。」



そこを可愛がるのを一旦やめたマックスが起き上がり、エリオットの首筋に顔を埋める。



「清廉で、凛としていて。この香りを嗅ぐと、僕は癒されて、でも、同時に…」



首の後ろの柔らかい皮膚にマックスの唇が触れ、ぴり、としたわずかな痛みを感じる。

強く皮膚を吸われ、それが執拗に何度も繰り返される。

Ωにとって、他人から一番守らなければならない、最も脆弱な急所を、目の前のαに晒し、いいようにされている。

その事実にエリオットは小さな震えを止めることができない。

恐ろしいのに、どうしようもなくそれが、



「 とても、昂って、抑えられない…」



首の皮膚に、尖った鋭利なものが当てられる。マックスの白く、美しい配列で並んだ歯を思い出す。

上品に整列した歯の中で、異質な尖った犬歯。

あの鋭い歯が、皮膚を突き破る瞬間を想像し、エリオットは目を細めた。

恐ろしい。とても怖い。でも、どうしようもなく嬉しい。



ぐ、と、当てられた歯に圧を感じる。

いよいよ、噛まれるのだ。

ぎゅ、と目を閉じる。体の奥から何かがどんどん湧き上がってくる。



だが、当てられた犬歯がエリオットの皮膚に食い込むことは無かった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

鳥籠の夢

hina
BL
広大な帝国の属国になった小国の第七王子は帝国の若き皇帝に輿入れすることになる。

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定 (pixivにて同じ設定のちょっと違う話を公開中です「不憫受けがとことん愛される話」)

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

普通のβだった俺は

りん
BL
普通の大学生として過ごす白瀬凪が、αの先輩に絡まれる話

【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—

水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。 幼い日、高校、そして大学。 高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。 運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...