【完結】内緒事のある友人との離れ方

本編

惑いのある日(3)

今日だってそう。友達の時は俺が一人でスーパーへ行っても神崎は気にも止めなかったはずだ。一人で家で過ごして俺が作ったカレーを黙々と食べておかわりする。それが今までの神崎ならとる行動だ。

でもこれが神崎の恋人との距離かと思うと少しだけムズムズする。隠すように首に巻いていたマフラーに顔をうめる。


「……手、離さねえ？」
「離さない」
「そうすっか」

隣を歩く自分より僅かに背の高い男を見上げてまた一歩横にズレた。それにムッと唇を尖らせたのは神崎の方だ。

「小鳥遊だから良い」
「ムリすんなって」
「無理じゃない。小鳥遊は親友で恋人だ。だから嫌じゃない」
「……っ」

こういう所が本当にムカつく。こっちの気も知らないで。いや神崎だって前はこんなこと言えなかった筈だ。これもやっぱり恋人効果なのか。そう思うとさらに恥ずかしくなってくる。悔し紛れに脇腹に痛くもないパンチを一発お見舞いした。

「やっぱ、手は離さねぇ？」
「嫌だ」

そういった神崎が指を絡ませる繋ぎ方に変えようとしてくるから、思わず悲鳴をあげながら手を振り解いた。


お前の距離感バグこぇえよ！


【完】