暗殺するため敵国に来たが愚王というのは嘘で溺愛され妃に迎え入れられました

雨宮里玖

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二度めの夜

5. ※

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「はぁ……ん……」

 一度放っただけではカイルの熱は収まらず、何度も身体を重ね合う。
 初めてのときはキツく感じられたものも、回数を重ねるたびに深く繋がるようになった。オメガの身体は柔軟にできているのかもしれない。

 カイルに身体を返され、四つん這いの姿勢にさせられる。背中からカイルに抱かれたあと、カイルはユリスの腰のあたりにキスを落としてきた。何度も何度も、愛おしそうに。

「カイル様、何を……」

 そこはユリスの古傷がある場所だ。
 昔、暗殺者になったばかりのときのことだ。ユリスはある要人の屋敷を訪れた。
 その家は西国ケレンディアとの国境にあり、敵国と精通し、東国ナルカの情報を売っているとの噂が絶えなかった。
 それでレオンハルトの命によりユリスが送り込まれた。
 ユリスは手筈どおりにその家の主をヒートで誘惑し、ふたりきり部屋に閉じこもり、任務を遂行しようとした。
 そのとき部屋から漏れ出る強いアルファとオメガのフェロモンのせいで異変に気がついた妻が逆上し、血迷ったのか屋敷に火を放ったのだ。
 なんとか逃げ仰せたが、背中の傷はそのときに負ったものだ。

「愛しい傷痕だ」

 決して綺麗とは言えない傷痕まで愛そうとするなんて、カイルは優しすぎる。

 傷痕へのキスをやめたカイルはユリスの中に自身を挿入してきた。後ろの体勢で腰をカイルのほうへ突き出すとさっきよりも深く繋ぐことになり、その強い快感で身体が震える。

 繋がりながら、カイルはユリスのうなじを舐める。それだけじゃ飽きたらず、甘噛みのように歯を当ててきた。
 ユリスは発情こそしていないが、アルファと繋がりながらうなじに触れられると身体がこわばった。

 オメガだとわかったときから、決してアルファに噛まれてはいけないと教えられてきた。
 番は悪魔の契約だ。番になったアルファから逃れられなくなる、アルファが上でオメガが下の従属関係。
 アルファに歯向かえば番解除され、苦しみながら一生を終えることになる。
 番になると他の者との性交は苦痛でしかなくなる。それで命を落とすオメガもいるのに、恐ろしいアルファは番解除しないまま、他の男にオメガを抱かせて罰を与えることがあると聞いた。

 ユリスは思わずうなじを手で庇う。そこに刺激を与えられることに怖くなったからだ。

「悪かった。オメガにとってうなじは最も大切な場所だからな」

 カイルは甘噛みをやめた。その代わりに優しくユリスを抱き締めてきた。

「あぁっ……」

 再びカイルに突かれてユリスの身体はそれに反応する。
 尻を掴まれ、最奥へと進むカイルから与えられる快感はもはや凶器だ。

「んっ……はぁん……っ」

 ユリスは何度も白濁を溢しながら、カイルを受け入れたが、あまりの刺激にいつの間にか意識を失っていた。





「ユリス様。おめでとうございます」

 目が覚めて、ユリスに声をかけてきたのは従者のナターシャだった。他にも数名カイルの従者と思われる者もいて、ユリスは驚いてガバッと身体をを起こした。
 だって自分は裸だ。裸のままカイルのベッドで眠っているところを数名の者に見られるなんて……。
 従者たちはテキパキとユリスの身体を清め、服を着せていく。

「そんなことは自分でっ……」
「いいえ。私共の仕事ですから」

 有無を言わさず世話をされる。抵抗もできずにユリスはされるがままだ。

「カイル様と情を交わした御方は全員後宮に入ることになります。カイル様には今お相手は誰もいらっしゃいませんので、ユリス様は第一側室のお立場になりますが、カイル様はユリス様を王妃として迎えることを望んでおられます」

 なんてことになったんだ。感情のままカイルと情交してしまったが、その先がどうなるかまであまり考えてはいなかった。

「ユリス様はケレンディアのかたではございませんので、現法律では平民と同じ位でしたが、今後は王族男性として爵位が与えられ、ユリス様のご親族も倣って位が授けられます。もし今後お子がお生まれになれば、さらに上の位になります」

 もし子供ができたら……。発情期ではなかったため、妊娠の可能性はないと思うが、まさか自分が子供を産むことになるなんて想像もしなかった。

「以上はとりあえずの話で、ユリス様はきっと王妃になられるでしょうからお立場はこの国の最上位になられますね」
「王妃……」

 説明をされてもいまいち実感がない。だが、これが現実なのだろう。
 そしてこんなことがレオンハルトに知れたらどうなるだろう。暗殺の仕事を放棄したとみなされ、妹と母は無事では済まないかもしれない。
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