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カイルの溺愛
2.
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「ナルカに置きながら、俺が守ってみせよう。そのためには一日も早く婚礼の準備を始めなければ。それでよいか? ユリス」
「婚礼、ですか?!」
「ああそうだ。ユリスの妹の状況はわからないが、あまり時間はかけないほうが良さそうだ。そちらも密偵に調べさせ、報告させる。納得いかないことがあるからな。ユリスは一日も早く正式な王妃となれ。それが妹を救うことになるぞ」
カイルはニヤリと笑う。アルファの考えていることはオメガのユリスには到底理解できない。頭の出来が違いすぎるのだろう。
「ユリスの母君はこちらに呼ぶか? 王妃の母だ。決して立場は悪くはあるまい」
カイルは当たり前のようにユリスを王妃に迎えようとするが、そんなことは許されるのだろうか。
ヒイラがそれを快く思っていなかったように、オメガを嫌う者は多くいるだろう。
「それと婚礼を急ぐ理由はもうひとつある」
カイルは席を立ち、ユリスの耳元に顔を寄せる。
「早くユリスとの子ができることを望んでいるのだ。ユリスにはたくさんの子供を産んでもらいたい」
「な……っ!」
ユリスは赤面する。こんな爽やかな朝から囁く言葉じゃない。
「国王の義務だ。ユリス、それだけは覚悟してもらいたい」
カイルはユリスの頬にそっとキスをした。
アルファの精力はすごいと聞いたことがある。実際にアルファは何人もの妻を娶っても全員を満足させられるとか。
その寵愛をユリスひとりで受けることになったらどうなってしまうのだろう。
「ユリスはオメガの抑制薬は飲んでいるのか?」
「はい」
ヒートの抑制薬を毎日飲むのはオメガとしては当然のことだ。服用せずに三ヶ月に一度ヒートを迎えてしまったら地獄の7日間を過ごさねばならなくなるのだから。
それにヒート中は命の危険がある。アルファに番にさせられてしまったら恐ろしい末路が待っている。
「もう飲むのはやめろ。ユリスにヒートが来ないと子ができないだろう?」
「しかしまだ私は王妃ではありませんし——」
カイルは首を横に振ってユリスを制する。
「子を孕む機会を一度でも失いたくないのだよ。婚前でも構わない。ヒートが来たら俺のもとに来い。辛くはないぞ。必ずユリスにいい思いをさせてやる」
カイルはユリスの首に腕を回して抱きついてきた。
「カイル様、もうおやめください……」
ユリスは羞恥の限界だ。性事情を赤裸々に話されることにものすごく抵抗を感じる。
「照れてるユリスは最高に可愛いな」
あろうことかカイルはユリスの唇に口づけをした。
「んっ……あぁ……」
皆が見ている前で、カイルはユリスに深いキスを仕掛けてきた。周りの者たちがザワついている空気を感じて余計に恥ずかしい。
ピチャピチャといやらしい音を立てて、ふたりは口づけを交わす。
「とても甘い。ユリスはハチミツの味がする。ユリスは甘いものが好きか?」
ユリスはついさっきまでハチミツをたっぷりふわふわのパンにつけて食べていた。そんなことまで指摘されてユリスはさらに恥ずかしくなる。
「ユリスのこと、もっと知りたい。好きなもの、思っていること、嫌な目に遭ったときのこともだ。なんでも話して欲しい。俺もユリスに信用してもらえるよう、ユリスを精一杯愛するから」
困ったことになった。人目も憚らずこんな調子では日常生活はどうやってしまうのだろう。
でも最も困っているのは、オメガの自分はアルファに愛されて心地よさを感じてしまっていることだ。恥ずかしいからカイルを拒絶したいのに、オメガの身体はアルファを常に求めていて、カイルからされることをつい受け入れてしまう。
情けない。バース性に流されるままなんて駄目だ。
風が吹き抜けて、カイルからふわっとアルファのいい匂いがした。ユリスは思わずカイルのほうを見る。
カイルは自席にもどり、食事を続けている。
さすがは国王だ。帝王学を学んでいるのだろうが、その綺麗な所作に見惚れてしまう。
日差しを浴びて輝く、サラサラとしたシルバーブロンドの髪。伏せた目のまつ毛まで綺麗に整列していて、アルファの国王の姿には非の打ち所がない。
そのままじっとカイルを見ていると、カイルはユリスの視線に気がつき、顔を上げた。
「ユリス」
カイルはこちらを見て目を細めて微笑んだ。その垣間に見える翡翠色の瞳がとても綺麗だった。
「婚礼、ですか?!」
「ああそうだ。ユリスの妹の状況はわからないが、あまり時間はかけないほうが良さそうだ。そちらも密偵に調べさせ、報告させる。納得いかないことがあるからな。ユリスは一日も早く正式な王妃となれ。それが妹を救うことになるぞ」
カイルはニヤリと笑う。アルファの考えていることはオメガのユリスには到底理解できない。頭の出来が違いすぎるのだろう。
「ユリスの母君はこちらに呼ぶか? 王妃の母だ。決して立場は悪くはあるまい」
カイルは当たり前のようにユリスを王妃に迎えようとするが、そんなことは許されるのだろうか。
ヒイラがそれを快く思っていなかったように、オメガを嫌う者は多くいるだろう。
「それと婚礼を急ぐ理由はもうひとつある」
カイルは席を立ち、ユリスの耳元に顔を寄せる。
「早くユリスとの子ができることを望んでいるのだ。ユリスにはたくさんの子供を産んでもらいたい」
「な……っ!」
ユリスは赤面する。こんな爽やかな朝から囁く言葉じゃない。
「国王の義務だ。ユリス、それだけは覚悟してもらいたい」
カイルはユリスの頬にそっとキスをした。
アルファの精力はすごいと聞いたことがある。実際にアルファは何人もの妻を娶っても全員を満足させられるとか。
その寵愛をユリスひとりで受けることになったらどうなってしまうのだろう。
「ユリスはオメガの抑制薬は飲んでいるのか?」
「はい」
ヒートの抑制薬を毎日飲むのはオメガとしては当然のことだ。服用せずに三ヶ月に一度ヒートを迎えてしまったら地獄の7日間を過ごさねばならなくなるのだから。
それにヒート中は命の危険がある。アルファに番にさせられてしまったら恐ろしい末路が待っている。
「もう飲むのはやめろ。ユリスにヒートが来ないと子ができないだろう?」
「しかしまだ私は王妃ではありませんし——」
カイルは首を横に振ってユリスを制する。
「子を孕む機会を一度でも失いたくないのだよ。婚前でも構わない。ヒートが来たら俺のもとに来い。辛くはないぞ。必ずユリスにいい思いをさせてやる」
カイルはユリスの首に腕を回して抱きついてきた。
「カイル様、もうおやめください……」
ユリスは羞恥の限界だ。性事情を赤裸々に話されることにものすごく抵抗を感じる。
「照れてるユリスは最高に可愛いな」
あろうことかカイルはユリスの唇に口づけをした。
「んっ……あぁ……」
皆が見ている前で、カイルはユリスに深いキスを仕掛けてきた。周りの者たちがザワついている空気を感じて余計に恥ずかしい。
ピチャピチャといやらしい音を立てて、ふたりは口づけを交わす。
「とても甘い。ユリスはハチミツの味がする。ユリスは甘いものが好きか?」
ユリスはついさっきまでハチミツをたっぷりふわふわのパンにつけて食べていた。そんなことまで指摘されてユリスはさらに恥ずかしくなる。
「ユリスのこと、もっと知りたい。好きなもの、思っていること、嫌な目に遭ったときのこともだ。なんでも話して欲しい。俺もユリスに信用してもらえるよう、ユリスを精一杯愛するから」
困ったことになった。人目も憚らずこんな調子では日常生活はどうやってしまうのだろう。
でも最も困っているのは、オメガの自分はアルファに愛されて心地よさを感じてしまっていることだ。恥ずかしいからカイルを拒絶したいのに、オメガの身体はアルファを常に求めていて、カイルからされることをつい受け入れてしまう。
情けない。バース性に流されるままなんて駄目だ。
風が吹き抜けて、カイルからふわっとアルファのいい匂いがした。ユリスは思わずカイルのほうを見る。
カイルは自席にもどり、食事を続けている。
さすがは国王だ。帝王学を学んでいるのだろうが、その綺麗な所作に見惚れてしまう。
日差しを浴びて輝く、サラサラとしたシルバーブロンドの髪。伏せた目のまつ毛まで綺麗に整列していて、アルファの国王の姿には非の打ち所がない。
そのままじっとカイルを見ていると、カイルはユリスの視線に気がつき、顔を上げた。
「ユリス」
カイルはこちらを見て目を細めて微笑んだ。その垣間に見える翡翠色の瞳がとても綺麗だった。
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