暗殺するため敵国に来たが愚王というのは嘘で溺愛され妃に迎え入れられました

雨宮里玖

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王妃の資質

13. ※

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「ユリス」

 立ち上がったところで目の前に現れたのはカイルだった。

「カイル様っ!」

 ローランは慌ててユリスから手を離し、深々と頭を下げた。

「今度はローランとふたりで逢引か? 本当に節操のないオメガだな」

 カイルの言葉も、冷たい視線も、耐えきれないくらいユリスの心に突き刺さる。

「違います! 陛下、誤解をなさらないでくださいっ! 私はただユリス様を探しに来ただけで誓ってやましいことはしておりません!」

 ローランは必死でカイルに訴える。

「所詮番ってもないオメガは、アルファなら誰でも構わないのだろう? たまたま俺がユリスにしつこくしただけで、ユリスにとっては俺はアルファのひとりに過ぎない。そういうことなんだな?」
「そんなことありませんっ! 私はちゃんとカイル様だけを……」
「……本当か?」
「はい」

 ユリスは懇願するような目でカイルをじっと見つめる。

「じゃあ今すぐ俺の部屋に来い!」

 カイルに強く腕を引っ張られる。
 掴まれた腕が痛い。なにもこうまでして引っ張らずともカイルについて行くに決まっているのに、カイルは手を放そうとしない。

「カイル様! どうかユリス様を責めないでくださいっ! ユリス様は悪いことは何もなさってません!」

 ローランが追いかけてきてカイルに訴えるが、カイルはローランをひと睨みしただけだ。
 カイルに連行されていくユリスがローランを振り返ると、ローランは酷く不安そうな顔をしてこちらを見ていた。




 カイルの部屋に着くなり、ユリスの身体はベッドに放り投げられた。カイルの態度に優しさはない。その視線は冷たいし、まるで奴隷を扱うみたいに乱雑だった。

「どうしたユリス。俺が怖いのか?」

 カイルが乱暴に寝室の扉を閉め、ついにふたりきりになる。

「俺が好きなら当然俺を受け入れてくれるな?」

 カイルが近づいてきた。ギシリとベッドが軋む音を立てる。
 カイルは怒りのままにユリスを抱こうとしている。
 それでもいい。相手がカイルならば、めちゃくちゃにされても構わない。

「はい。私を好きにしてください」

 ユリスは頷き、覚悟を決めてぎゅっと目を閉じた。


 乱暴に衣服を剥ぎ取られる。上着を取られ、その下に着ていたシャツも無理に引っ張られたから、ボタンがどこかへ弾け飛んだ。
 ユリスが恥ずかしがる間もないくらいに下の服も呆気なく取り去られ、全裸にされる。

「他のアルファの匂いをさせやがって……!」
「んぅ……っ!」

 カイルに激しく唇を奪われる。同時にカイルはユリスの下半身に手を伸ばしてくるが、ユリスのそれが何も反応を示していないことに気がついて、カイルはキスをやめ、ユリスを睨みつけてきた。

「お前も楽しめ。やっぱり俺が嫌いなのか?」

 ユリスは必死でふるふると首を横に振る。まだ何も始まってもいないのに勃つはずもない。それに本音を言うと、愛しのカイルが相手だというのにどうしても身体が萎縮してしまっている。


 そのとき、ブワッと強い風のようなものを感じた。
 カイルがアルファのフェロモンを放ったのだ。
 強烈なフェロモンを浴びせられ、頭がクラクラする。身体中が急激に熱くなり、はぁはぁと息が切れる。

「あっ……んんっ……」

 カイルにつーっと身体の線を指でなぞられただけで、ビクビクと身体は震え、ユリスは身体を弓なりにしならせる。アルファのフェロモンに当てられ、ユリスのフェロモンが強制的に引き出され、身体がすごく敏感になっているようだ。

「いい反応だ」

 カイルはユリスの身体をむさぼり始めた。手荒に性感帯に触れられるが、それでも熱を帯びたユリスの身体はしっかりと反応を示していく。

 カイルに身体を返された。うつ伏せの姿勢で腰を持たれ、尻を突き出すような格好にさせられる。


「あぁぁぁぁ……っ!」

 フェロモンのせいで濡れそぼったユリスの後孔に、遠慮なしにカイルが穿つ。いきなり最奥まで責められてユリスはその刺激に思わず背中を反らした。

「あぁ……っ! やぁ……」

 嫌だと言いそうになって、ユリスは言葉をのみ込んだ。今、そんなことをカイルに言ったら駄目だ。本当に嫌がっていると思われて、行為を止められてしまうかもしれない。

「す……すごくいいです……カイル様……」

 本当はいきなりの激しい突きに身体が揺さぶられ、頭が余計にクラクラし、全身に力が入らない。それでもカイルを受け止めなければきっと嫌われてしまう。

「カイル様、好きです……」

 視界も虚ろになってきて、自分が何を言っているのかもわからなくなってきた。

「もっと欲しいか?」

 カイルが身体を重ね、耳元で囁いてきた。

「あっ……あっ……あん……っ!」

 ユリスとしては頷いたつもりだが、身体が揺さぶられているのでカイルに伝わったかどうか……。

「いい子だ」

 急にうなじにズキンと痛みがはしる。カイルだ。カイルの歯がそこに突き立てられたのだ。
 ヒートを起こしていなければ番にはなれないというのに、カイルは強く歯を立ててユリスのうなじを噛んだ。
 うなじはオメガの弱点だ。そんなところに刺激を与えられてはたまったものじゃない。


「……あぁぁっ……!」

 ユリスは我慢できずに精を放ってしまった。
 ユリスをイかせたことでカイルの機嫌が良くなったようだ。やっと優しくユリスの身体を抱き締めてくれた。

 が、それも束の間、カイルはユリスを再び最奥まで攻め立てた。カイルの容赦ない攻めにユリスは何度も絶頂へと導かれていく。


「カイル様っ、もっと……もっと良くしてください……」

 フェロモンのせいで頭がおかしくなってきた。カイルに強く揺さぶられ、何度も中に放たれて、身体は限界のはずなのにそれでもカイルを求めてしまう。

「あっ、あっ、あぁん……っ!」

 このままじゃ身体が壊れる、そう思ったときにはユリスは意識を手放していた。
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