好きだから傍に居たい

麻沙綺

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驚愕…遥

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 御大…鞠山家の本家に着いたわけだが、御大本人は居ない事判っているのだが、緊張する。
 車から荷物を取り出して玄関に向かう。
 玄関先で、お義母さんが出迎えてくれた。
「只今。」
 亜耶が気まずそうに声を出す。
「お帰り。遥さんも前と違ってなれないでしょうけど、ゆっくりしてくださいね。」
 って苦笑気味に言われて、お義母さんにはお見通しみたいだ。
「ありがとうございます。それから、これと亜耶が持っている物が食材です。」
 俺がそう言うとお義母さんがそれを受け取って。
「これを仕舞っておいて頂戴。」
 と後ろに控えていたお手伝いさんに言い渡す。
 後ろの二人は慣れたようで、お義母さんから受け取ると下がって行った。
 横に居る亜耶は驚いた顔をして、その様子を見ていた。
 驚くよな。
 普段のお義母さんなら自らの手で運んでいたのだ。使用人に指図してるところ何て、はじめて見るんじゃないかな。
「あっ、亜耶と遥さんの部屋は同じ部屋だから安心してね。先に荷物を置いて来ると良いわ。」
 そう言ってお義母さんは中に入って行く。
 同じ部屋……。
 良かった。
 ホッとしながら、お義母さんの後を追う様に中に入る。

 玄関から上がると。
「亜耶が泊る時に使う場所にしたから、遥さんの案内宜しくね。」
 お義母さんはそれだけ言うと行ってしまった。

 どういう事だ?
 泊る時の場所とは?

 疑問符を浮かべていると。
「遥さん、こっち。」
 そう言って亜耶が俺の服の裾を掴んで真っ直ぐ進み出した。
 おいおい、その先は行き止まりでは…。
 と思っていたが、ダミーだったらしく、亜耶はその壁を押し開けて進んでいく。
 突き当たりを左に曲がれば、母屋とは別の建物が目に入る。
 何だこれは……。
 立派な洋館が目の前に在る。
 表からじゃ分からないようになっているのか。
「裏手に別館があるとは……。」
 俺は驚愕の末、そう言葉を漏らした。
 亜耶に促されて歩を進め中に入る。
 亜耶は迷わず二階へと続く階段を上る。
 上がってビックリ、二部屋分のドアしかないのだ。
「右側が私の部屋だよ。」
 そう言うと亜耶がドアを開けてくれた。
 俺はそのまま部屋に入り、入り口に荷物を置き部屋を見渡す。
「結構広いんだな。ベッドもダブル、セミダブルか……。」
 と口にする俺。
 これだけの広さがあるのに、肝心な物が無いなって思ってると。
「朝食と夕食は母屋で食べるっていうルールさえ守れば、昼間は何しても良いようになってるの。」
 亜耶が言ってきた。
「そうなんだ。だけど一つだけ足りない物があるな。」
 俺がそう口にするとキョトンとした顔で俺を見てくる亜耶。
 その顔も可愛いけども……。
 分かって無い様で。
 俺の言葉に暫し考え込んだ亜耶が。
「えっとですね。この部屋、ここがウォークインクローゼットになってまして、その奥に着替えが出きるスペースもあるので、そこまで気を使わなくても良いんですよ。」
 と左側にあるドアを開けて中に入って行く亜耶。
 俺も続いて中に入るとこれまた広々とした空間があって、綺麗に整頓された衣装の間を抜けるとカーテンで仕切られた着替えが出きるスペースが現れた。
 これはもう脱帽するしかないだろう。
 流石御大だ。
 しかも姿鏡も配置されてる。
「居たせり尽くせりだな。」 
 思わずそう口にした。
「さて、荷物も運んだ事だし、退院祝いの食事に行きますかね。奥様。」
 俺がおどけた様に右腕を差し出せば。
「そうですね、旦那様。」
 同じ様に亜耶が左手で俺の腕に添えてきた。
 
 本当、御大の事を尊敬しまくりだ。
 自分が同じこと出来るかと思うと不安になるが、亜耶に笑顔を傍で守るのは、自分だと新たに決意するのだった。
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