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別館…亜耶
しおりを挟む実家…祖父の家に付くと直ぐに荷物を持って玄関に向かう。
遥さんとの時間が欲しいと思って……。
玄関先では、母が待っていた。
「ただいま?」
何故語尾が疑問符になってしまったのか自分でもわからないが……。
「お帰り。」
母も苦笑しながら返してくれた。
「遥さんも前と違って慣れないでしょうけど、ゆっくりして下さいね。」
母が、笑みを浮かべながら遥さんに言う。
「ありがとうございます。それから、亜耶が持っているのと此方が食材です。」
遥さんがそう言うと母が受け取って、後ろに控えているお手伝いさんに。
「これを仕舞っておいて頂戴。」
と言葉にして渡している。
そんな姿を始めてみた私は、驚かずには居られなかった。
今まで自分で運んでいた姿しか見ていなかったから、余計に違和感が沸く。
「あっ、亜耶と遥さんの部屋は同じ部屋だから安心してね。先に荷物を部屋に置いて来ると良いわ。」
母はそう言うと家の中に入って行く。
私たちも後を追う様に中に入った。
同じ部屋にしてくれた事が信じられ無かったが、何処と無く意図的な要素もありそうな気がしてならない。
母の行動を気にしながら、玄関口を上がる。
「部屋は、何時も亜耶が泊まる時に使ってる部屋にしたから、遥さんの案内よろしくね。」
そう言うと母は居間の方に歩いて行った。
何時も泊まる部屋と言えば、母屋の裏に有る別館の事だろう。
「遥さん、こっち。」
私は、遥さんの袖を左手で掴んで歩き出す。
玄関口から真っ直ぐ歩いて行き、突き当たりを左に向くと別館との繋ぐ渡り廊下がある。そこを進んだ行き、別館の入り口を入って直ぐの階段を上る。
二階は二部屋しかなく、私たち兄妹が何時来ても泊まれる様に祖父が建てたのだ。
表から見れば、裏にこんな立派な別館が在るとは思わないだろう。
一緒に来た遥さんも。
「裏手に別館があるとは……。」
と驚いていたのだから。
「右側が私の部屋だよ。」
私は、右側のドアを開けて遥さんを先に通す(荷物を持っているからね)。
中に入った途端周囲を見渡し。
「結構広いんだな。ベッドもダブル…セミダブルか……」
遥さんが口にする。
「朝食と夕食は母屋で食べるって言うルールさえ守れば、昼間は何していても良い事になってるの。」
これは、祖母が決めたルールで、朝と夕だけは顔を会わせて各々の予定や報告を聞く場を設けたと言えるのだろう。
「そうなんだ。だけど、一つだけ足りない物があるな。」
何て遥さんが言い出す。
足りない物?
はて、何だろう?
私は直ぐには思い至らず、首を傾げる。
「着替える為の障立と言うか、区切り?仕切りが居るだろう?」
遥さんの疑問に少し考えてから、思い当たり。
「えっとですね、この部屋、ここがをウォークインクローゼットとなっていまして、その奥に着替えが出きるスペースも有るので、そこまで気を遣わなくても良いんですよ。」
そう言いながら左側に有るドアを開けて、中に案内する。
中に入ると自動的に電気が点灯する。
奥に進むと遥さんが聞いてきた、着替えが出きるスペースが現れる。
姿鏡もその側に配置されている。
この場所は、限られた人しか入れないようになっている。
「凄いな。」
感嘆の声を上げる遥さん。
祖父が誠意を尽くして建てたものだ。
「さて、荷物も運んだし、退院祝いの食事に行きますかね、奥さま。」
遥さんが、ちょっとおどけた口調で良いながら右腕を私の方に差し出してきた。
「そうですね、旦那様。」
私はそれに答える様に遥さんの腕にそっと左手を添えたのだった。
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