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21話

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 魔法王立学園でも他国の歴史を詳しくは教えてはくれなかった。それどころか、ディオース王国の歴史も教科書には記載されていたが、授業では詳しく教えられなかった。
 授業は魔法中心のため、魔法が関係ない場所は飛ばされてしまうのだ。それなのにテストには出題される。教科書を読んでいなかった人にとっては、意味の分からない問題だ。
 教科書を読まない人の多くは分からない問題だったが、教科担当の先生が教科書を読んでおくようにと言っていたため、ルージュは読んでいたので覚えていた。
 普通に生活をしていれば、歴史なんてどうでもいいことなのかもしれないが、しっかりと学ぶことが大事だろう。
 きっと今日のことは関わった人たちしか知らないだろう。愚かな王子がいたことも、やってしまったことも歴史には残らない。
 国が滅びるような出来事ではなかったため、歴史に残す必要がないのだ。ただ、王族内では語り継がれるかもしれない。
 今後ルーカスがソレイユ王国との関係をよくしていけば歴史に残ることにはなるだろう。

「何か欲しいものはないか?」
「どうして?」

 突然のノワールの言葉に、ルージュは首を傾げた。その質問にノワールは、「しばらく来れないから」とだけ答えた。ルージュが今欲しいと思っているものはない。
 だからそれを素直に伝えた。

「ないわよ。ただ、貴方と一緒にいる未来が欲しいわ」
「それは俺も同じだ」

 そう言うと、ノワールはルージュに右手を差し出してきた。ルージュは躊躇わずにその手を取る。そして、ディオース王国から出るために歩き出した。
 ここでやることは何もないが、まだやらなくてはいけないことが残っている。手を繋いだまま、二人はディオース王国を出発した。
 新たな未来のために。
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